〈ペアレント・トレーニング〉6・子どもがなかなか宿題をしないなら…「CCQ」で指示を出そう

(2019年3月1日付 東京新聞朝刊)

笑顔が増える ペアレント・トレーニング

 「ペアレント・トレーニング」の第6回は、子どもの協力を増やすための「効果的な指示の出し方」を紹介します。これまで、「ほめる練習」と「怒らずに待つ練習」をしてきました。次のステップは、「子どもがスムーズに動けるような声かけの練習」です。子どもに向かって何度も「起きなさーい!」「宿題しなさーい!」「ゲーム終わりにしなさーい!」と、大きな声を出していませんか? 今回は、「小学4年生の娘が、声をかけてもなかなか動かない」という記者の悩みを、臨床心理士の三間直子さんに相談しました。(過去の記事一覧はこちら

悩み「漫画に夢中の小4娘。なかなか動きません」

 小学4年生の娘は、漫画や本、録画した番組などに夢中になると、生活のことが後回しに。声をかけてもなかなか動きません。

解決のヒント「CCQで指示を出そう」

<臨床心理士・三間直子さんから>

 子どもは待っているだけでは動かないこともあります。そんな時は、大人が指示や合図を出してあげましょう。肝心なのは、声のかけ方です。

 離れた場所から大声で「ほら、早く○○しなさーい!」と呼びかけていませんか? 遠くからだと声はどんどん大きくなり、いら立ちもあらわになっていきます。大人が大声になると、子どもも反抗的な態度を示し、大人の側もさらに腹立たしくなってしまいます。

 今回は、子どもの協力を増やすための「効果的な指示の出し方」を紹介します。子どもがスムーズに動けるようにするための声かけの仕方が指示です。注意や説教にならないよう「伝え方」を意識してください。

 ポイントは「CCQ」。「Calm(カーム/穏やかに)、Close(クロース/近くで)、Quiet(クワイエット/静かに)」の略で、「親自身が穏やかに、子どもに近づいて、静かな声で」指示を出すことが大事です。

 まず、子どもの注意を引くために、そばに行き、視線を合わせましょう。そばに行けないときは、子どもの名前を呼び、子どもが振り向いたり、返事をしてくれるようなら、指示は伝わりやすくなります。指示は短く、具体的な行動の形で伝えてください。「やらなきゃいけないことを終わらせてね」ではなく、「宿題を始めてね」と明確に伝えます。きっぱりと落ち着いた口調で「〇〇してね」「○○しなさい」と言い切りましょう。

 「いつになったら○○するの?/終わりにするの?」と問いかけ調にすると、交渉が始まったり、言い返されたりしてしまいがちです。ただ、問いかけ調の内容でも、「いつになったら終わりにするの?」と聞いて、子どもが「〇時になったら」と答えてくれるようであれば、答えたことをほめて、協力を引き出すきっかけとしてもよいでしょう。

 子どもは1回の指示で従わないかもしれません。すぐに応じないようなら、視線を外して一度その場から離れましょう。前回前々回で紹介した「気付かないふりで待つ」を、ここでも実践してください。数十秒から数分、時間をおいてから指示を繰り返します。常にCCQを心がけ、同じ言葉で指示しましょう。

CG

 同じ言葉を繰り返すのもポイントです。理由が分かると指示を受け入れやすくなる子もいますが、説得しようと言い方をいろいろ変えていると、考えすぎて大人の方がいら立ってくることもありますし、子どもが一つ一つの説明に言い返してくることもあります。考えすぎずに、してほしい行動をシンプルに繰り返すだけでよいのです。また、一度に多くのことを言われるのが苦手な子にとっては、うるさいと思って反抗的になったり、長い説明を全て聞ききれなかったりすることもあります。

 子どもが指示に従ったり、従おうとしたら、ほめることも忘れないようにします。子どもに出した指示と、それに対して子どもがしたことや言ったことを書き出してみるとよいでしょう。

「CCQであなたが出した指示」と「それに対する子どもの言動」を書き出すためのPDFファイルを、こちらからダウンロードできます

表

担当記者がやってみると…

 夕食後、漫画を読み始めた娘。お風呂の時間になったので、そばに行って肩に手を置き、「お風呂入っちゃってね」と静かに言いました。「えー、もう少し」と言うので、穏やかな声で「お風呂入っちゃってね」と繰り返しました。「いいとこだったのに」と言いながら立ち上がった娘に「冷めないうちに入ってくれると助かるよ。お風呂の後、続き読んだら?」と言いました。台所から「いいかげんにお風呂入りなさーい」と何度も大声を出すより、はるかに省エネでした。

 1カ月しないうちに、娘に関しては「お風呂だよ」と言えばスッとお風呂に向かうようになりました。今は、2年生と4歳の息子2人に実践中ですが、こちらはもう少し時間がかかりそうです。

「ペアレント・トレーニング」は発達障害児の親向けに採り入れられることが多い手法で、子育てのさまざまな場面で有効です。「お母さん、いつも怒ってるよね」と言われてしまった4歳、小学2年、4年の3児を子育て中の記者が、実際にペアレント・トレーニング講座を受講。実施経験が豊富な、心身障害児総合医療療育センター(東京都板橋区)の小児科医・長瀬美香さん(50)と臨床心理士・三間直子さん(47)に、声掛けや振る舞い方のヒントをいただきながら進みます。
※「笑顔が増える ペアレント・トレーニング」は毎月第1金曜に掲載します。次回の掲載は4月5日です。
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  • 匿名 says:

    この記事のシリーズ、すごくよく考えられてて、すばらしいと思います。

    うまく行かない、苦労してる人の残念なコメントのほうが多いけど、このシリーズ使って勉強会してます。ありがとうございます。

     50代
  • 匿名 says:

    この例のような反応をしてくれる子は発達障害はないのではないでしょうか?もしくは極軽度の場合ではないかと思います。
    毎日何度も繰り返して、待って、待って、それでも嫌なことには切り替えができません。
    私の頭がおかしくなりそう…というか既におかしくなってます。

  • 匿名 says:

    他の方のコメントにまったく同感です。
    一生1から3の繰り返し、そのうち親の精神が限界を迎えて怒鳴りちらし、子供が泣き叫ぶことにしかなりません。

      
  • 匿名 says:

    指示3から4には行かない。
    ずっと1~3の繰り返しで親の心が折れて、子供もイライラして結局やるべきことは出来ずに就寝時間が遅くなるだけ。
    これが現実。

      
  • 匿名 says:

    親の忍耐が必要ですね。言っても言っても言っても言っても毎日毎日毎日毎日宿題しないことに腹が立ち、将来を否定してなじりまくりました。言い過ぎたと反省していますが、誤学習に繋がったか自己肯定感の低下に繋がったことだろうと思います。

      

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