必死に生きた3年の命を感じてほしい 池袋暴走事故 妻と娘を亡くした夫のコメント全文

福岡範行、奥村圭吾 (2019年4月25日付 東京新聞朝刊)
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亡くなった松永真菜さんと長女・莉子ちゃんの遺影を前に事故への思いを語る男性=24日午後、東京都千代田区で

 東京・池袋で旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(87)の乗用車が暴走し、松永真菜(まな)さん(31)と長女莉子(りこ)ちゃん(3つ)が死亡した事故で、松永さんの会社員の夫(32)が24日、都内で記者会見し、「少しでも運転に不安がある人は運転しないという選択肢を考えてほしい」と声を震わせた。

七五三の晴れ姿の写真とともに会見

「たった一瞬で、私たちの未来は奪われてしまいました」

 夫はうつむいたまま沈痛な面持ちで冒頭4分間、事故への思いを語った。その後、質問に答えた。

 目の前の机には、妻と娘が晴れ着姿でほほ笑む写真が置かれていた。今年2月ごろ、七五三のお祝いで撮影したという。

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今年4月6日、よく遊びに行った公園で過ごす松永真菜さん(左)と莉子ちゃん(遺族提供)

 莉子ちゃんは人見知りだったが、最近、友達が数人できた。「これからどんどん友達ができればいいな」と成長を喜んでいた。今年に入ると、1~10まで数えられるようになった。「本当に宝物で、何にも代えられない存在でした」

「定時で帰るよ」と電話した20分後に…

 沖縄県出身の真菜さんとは、遠距離恋愛を実らせて結婚した。「笑顔がすてきで優しくて、子ども思いで、素晴らしい女性でした」。腎臓の具合が悪い夫のために健康的な料理を作ってくれたという。

 最後の会話は事故が起きた19日の昼休み。日課のテレビ電話で「定時で帰るよ。待っててね」と伝えた。惨事は、その約20分後のことだった。

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乗用車が暴走し、歩行者らが巻き込まれた事故現場=4月19日午後1時31分、東京都豊島区東池袋で、本社ヘリ「あさづる」から

 事故直後は、妻と娘の名前や写真が報じられることを望まなかった。しかし、「たった数秒で命が奪われてしまったことを少しでも頭に残してほしい」と考えるようになり、写真の公開を決めた。

 24日午前、豊島区の斎場で告別式が開かれた。夫は、最愛の妻と娘との最後の別れで「心からありがとう。幸せだったよ」と伝えたという。

危険な運転しそうな時、2人を思い出して 遺族コメント全文

 松永真菜さんの夫が記者会見冒頭で読み上げたコメント全文は次の通り。

 最愛の妻と娘を突然失い、ただただ涙することしかできず、絶望しています。娘がこの先、どんどん成長し大人になり、妻と私のもとを離れ、妻と寿命尽きるまで一緒にいる、そう信じていましたが、たった一瞬で、私たちの未来は奪われてしまいました。悔しくて、悔しくて、仕方がありません。この悔しさは、どれだけ時間がたっても消えないでしょう。

 妻と娘は本当に優しく、人を恨むような性格ではありませんでした。私も二人を尊重し、本来ならばそうしたいです。ですが、私の最愛の二人の命を奪ったという罪を償ってほしいです。この数日間、何度も、この先生きていく意味があるのかと自問自答しました。しかし同時に、今回の事故での妻と娘のような被害者と、私のような悲しむ遺族を今後、絶対に出してはいけないとも思いました。

 そのために、私は妻と娘の画像を公開することを決断いたしました。妻はとても恥ずかしがり屋で、フェイスブックなどで顔を公開することもないような、控えめな性格でした。そのため、本当に苦渋の決断でした。この画像を見ていただき、必死に生きていた若い女性とたった三年しか生きられなかった命があったんだということを現実的に感じていただきたいです。

 現実的に感じていただければ、運転に不安があることを自覚した上での運転や飲酒運転、あおり運転、運転中の携帯電話の使用などの危険運転をしそうになった時、亡くなった二人を思い出し、思いとどまってくれるかもしれない。そうすれば、亡くならなくていい人が亡くならずに済むかもしれない。そう思ったのです。

 それぞれのご家庭で事情があることは、重々承知しておりますが、少しでも運転に不安がある人は車を運転しないという選択肢を考えてほしい。また、周囲の方々も本人に働き掛けてほしい。家族の中に運転に不安のある方がいるならば、いま一度、家族内で考えてほしい。それが世の中に広がれば、交通事故による犠牲者を減らせるかもしれない。そうすれば、妻と娘も少しはうかばれるのではないかと思います。

 今回の事件をきっかけに、さまざまな議論がなされ、少しでも交通事故による犠牲者がいなくなる未来になってほしいです。

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