家族3人では一度も祝えなかった誕生日を〈清水健さんの子育て日記〉69

いつものように手を合わせる。そっくりな後ろ姿で
登校前の息子に小言を言って
いつも通りの朝なのに、息子が学校に行くまでの間、どうでもいいようなことで小言を言った。今となっては、なぜイライラしていたのかさえ、はっきりと覚えていない。「勉強しよう」「ちょっとゲームの時間が長いな」。今、言うことじゃない。いつもなら一緒に家を出るのに、その日は先に息子を送り出す。
「行ってきます!」。いつもと変わらない息子の声に返す「いってらっしゃい」の僕の声のトーンは、明らかにいつもとは違うのが自分でもわかる。自分の気持ちの不安定さをどうして息子にむけてしまうのか。
これじゃいけない。息子の姿が見えなくなってから反省する。閉めたドアを開ける。エレベーターを待っている息子。機嫌の悪い父から解放され、「そんなに言わんでもええやん」と小さな声でぶつぶつと言っている。ドアを開けた僕に気がついてこちらを振り向く。「今なんて言った?」「何にも言ってないよ」
聞かれてしまった気まずさに顔を真っ赤にして言い返す息子と目が合う。その状況がなんだかおかしくて、それまで不穏な空気が流れていたけれど、親子2人、思わず笑い出した。春からは小学5年生。少しずつ強く言い返すようにもなってきたし、父親の見ていないところでは、きっともっと羽目を外しているんだろう。
いろんな「あの時」の中でも
3月、息子の母親の誕生日。夫婦では1度しか一緒にお祝いできなかった。息子と家族3人では1度もお祝いできなかった。妻がいなくなって1カ月後にやってきた初めてのこの日は、「いない」という現実を突きつけられ、とてつもない悲しみの中にいたのを思い出す。お祝いの日にお祝いできない。たまったものじゃない。
10年がたち、決して寂しくないわけじゃないけれど、あの時のことをこうやって冷静に振り返ることができています。何歳になるんだろう。数えることもなくなってきた。そのことが意味することはまだわからない。でも、これでいいんだと思う。乳がんと告知された日、手術した日、がんが全身に転移しているとわかってしまった日、命日。いろんな「あの時」の中でも、お祝いの日をこうして思い出したいなと思う。
父の言葉に反抗する息子。ご飯を僕以上におかわりする息子。6話まで進んでいたドラマを、サブスクで1話から一気に2人で見てしまい、「これを見ちゃうと続きが見られるまでの1週間が長いね」と当たり前のことに悩む親子。どうでもいいことで笑い合って、どうでもいいことでけんかしていきたい。
清水健(しみず・けん)
フリーアナウンサー。10歳の長男誕生後に妻を乳がんで亡くし、シングルファーザーに。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい
天国でお二人に有り難うと笑って、手を振っていると思います🤗
お父さん、息子さんと一緒に、泣いたり笑ったり、お母さんの分も頑張ってあげて下さいね‼️これからもお二人が幸せでありますように🤗
息子さん、大きくなられましたね。Facebookのコメントを拝見するたび、番組を降りられる時のご挨拶を思い出します。
あれから10年なのですね…忘れていたわけではなくても時の流れは…
大切なひと、大切な想い、大切な笑顔、みんなみんな心に身体に居てくれているのだと思っています。
今回の最後の一文「どうでもいいことで…」大切になさってくださいね。
涙が出ました。振り返ってみれば子育ては自分を成長させてもらえたので感謝ですがその時は無我夢中、今を大切に前のみみつめて一歩ずつ。
忘れたくないのに忘れていく
忘れていくのに忘れたくない
こどもはどんどん成長して、それはそれで嬉しいのに、成長した喜びや、反抗的になっていくイライラや、いろんなことを分かち合えない寂しさといつもぐちゃぐちゃになって、泣けてしまう。
けんさんのブログでシンママの子育て これでいいんだなっていつも安心もらってます。