小金井市立保育園 「財政を考えると直営は限界」 保護者の訴えは届かず2園を廃止へ 全国でも廃園・民営化の波

岡本太 (2025年9月27日付 東京新聞朝刊)
 小金井市の市立保育園廃園を巡る問題で、5園のうち2園を廃止する新たな保育園条例案が、市議会定例会で審議されている。この問題をめぐっては、前市長の辞職など約4年に渡って混乱が続いており、市は今定例会で結論を得たい考え。ただ廃園対象園の保護者らからは根強い反発の声が上がる。
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新たな方針でも廃園対象となった「さくら保育園」

小金井市の保育園廃園問題

 財政負担の大きさなどを理由に、西岡真一郎前市長が2021年7月に3園廃止案を表明。22年9月、うち2園を先行して廃止するための条例案を市議会が継続審議としたため、西岡前市長が専決処分で条例を改正した。廃園対象の2園は、すでに23年から段階的に園児の募集を停止。東京地裁は24年2月、入園を希望した子どもの母親を原告とする訴訟の判決で、専決処分を「違法」と判断。ただ市は「(判決の)効力が及ぶのは原告に対してのみ」として、2園での園児の募集停止を継続している。

現市長は廃園撤回を掲げ当選

 「市民の声をよく聞いて、廃園を撤回してほしい」「結論ありきのやり方ではないか」。11日の市議会厚生文教委員会では、条例案に反対する市民が相次いで陳述した。この日の委員会での陳述は37件。計約8時間に及んだ。

 白井亨市長はその後の質疑で「(2園廃止は)保育現場の状況改善、市全体の保育の仕組みづくりのために必要」と述べ、条例案の内容に理解を求めた。条例案は22日の委員会で再び審議され、25日の本会議で採決される可能性がある。

 白井市長の「公約」を巡る認識の違いも対立を激化させている。白井市長が市議時代だった2022年9月、前任の西岡真一郎市長が2園を廃止する条例改正を議会の議決を経ない専決処分で強行。その後、辞職した。白井市長は同年11月の市長選で、西岡市長の手法を批判。専決処分された条例を元に戻し、廃園方針を撤回すると訴えて当選した。

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保育園廃園問題で市民の陳述を聞く市議会厚生文教委員会の委員ら=いずれも小金井市で

「改めて議論」も結果は同じ

 ところが今回の定例会の直前、白井市長が新たな方針で明らかにした廃園対象園は、専決処分の時と同じ2園。そのため、反対の保護者らは公約違反だと批判を強めている。11日の委員会でも「納得できない」などと声を上げた。

 こうした声に対し、白井市長は、当選後に条例を元に戻す改正案を市議会にいったん提出したが、否決された経緯などを説明。「公約に基づいた行動はしたが実現できなかった」とした。その上で、廃園方針撤回の公約は「いったん戻して改めて議論し直すという趣旨だった」と釈明した。新たな2園廃止の方針は、専門家らでつくる検討委員会での議論やパブリックコメント(意見公募)などを経た結果だとして「私自身がイメージしてきたプロセスを踏んできた」と強調している。

 新たな方針では、公立保育園に期待される機能として、地域の保育の質向上、要配慮児や在宅で子育てをする家庭の支援など四つの役割に言及。保育士の確保や施設の老朽化への対応などを踏まえながら役割を果たすためには、3園体制が「最も現実的かつ持続可能」とした。これに伴い、すでに募集を停止している「さくら保育園」は28年度末で、「くりのみ保育園」は27年度末で廃止。存続する3園の定員についても現行の計366人から、30年4月までに210人に減らすとしている。

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全国的にも廃園・民営化の方向 

 公立保育園の廃止や民営化は各地で相次いでいる。厚生労働省の調査によると、公立の保育園(保育所型認定こども園を含む)は2015~23年の間に約1600園減少。全体で7400園ほどになり、私立を含めた保育園全体に占める割合は4割から3割に低下している。

 背景には、財政的な事情があるとみられる。私立の保育園の場合、運営費の公費負担のうち4分の3を国や都道府県が出す仕組みとなっており、市などにとって支出が少ない。

 そのため公共施設の再整備など多額の事業を抱えている地方自治体では、公立保育園の老朽化などをきっかけに、廃止や民営化の議論が進みやすい。待機児童対策で私立の保育園が急ピッチでつくられたことで一部では保育園余りも生じており、公立保育園廃止の後押しになっているとみられる。

 ただ公立の保育園は、医療的ケアなど特別な配慮を必要とする園児の受け入れなどを担ってきた側面もあり、減少が続くことには懸念の声もある。私立が中心となることで、採算性の判断から、保育園の地域的な偏在を招くとの指摘もある。

元記事:東京新聞デジタル 2025年9月19日

写真 地面に落書きする子ども

写真はイメージです

 小金井市の市立保育園廃園を巡る問題で、市議会は25日、2028年度末までに「さくら保育園」と「くりのみ保育園」の2園を廃止し、市立保育園を3園体制とする新たな保育園条例案を賛成多数で可決した。

2園を廃止する条例案が可決

 2園は2022年9月に西岡真一郎前市長が行った専決処分により、すでに段階的な園児募集の停止を始めており、このまま規模を縮小しながら廃園へと向かうことになる。新条例では残る3園の定数削減も定めており、現行の計366人から30年4月までに210人に減ることになる。

 25日の市議会で、市議らが条例に対して賛否を表明する討論を実施。賛成の会派の市議らは「廃園は不足している保育士や十分なスペースを確保するもので、単純な廃止ではない。市全体の保育の質の向上につながる」と評価。「民間園が公立に劣るという考えはなく、市の財政を考えると直営は限界」などと述べた。

 一方、反対の会派の市議らは「2園廃園に加えて、定員減少という今回の条例はより悪質」と批判。「医療的ケア児への対応もこれからで、市内の保育の質は大きく下がる」などと語った。採決は賛成14、反対9だった。

 この問題を巡っては西岡前市長が専決処分後に辞職。東京地裁が同処分を「違法」と判断したものの、市は「2園廃園の決定は有効」として、園児募集停止を続けてきた。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2025年9月27日

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