子どもがコロナ感染した記者の体験記 親は1カ月も自宅待機…陰性のほうが長期になるなんて
保育所で感染 検査はなかなか受けられず
「先生に感染者が出ました」。保育園から連絡がきたのは8月6日、金曜日の午後2時ごろでした。保育園と学童保育を利用している息子たちも濃厚接触の疑いがあり、その時点で親である私も夫も出社できなくなり、私は、取材や会社での当番の仕事もすべてキャンセル。9日からの予定だった夏休みも吹っ飛びました。
保育所から正式に、子どもたちが濃厚接触者になると告げられたのは2日後の8日、日曜日でした。PCR検査を受けられたのはさらに2日後の10日。時間がかかったのには、事情があります。検査を受けるにはまず、住んでいる区の窓口に電話で相談し、検査できる医療機関を教えてもらう必要がありました。しかし、この電話がつながらないのです。10回ほど断続的にかけ続け、ようやくつながりましたが、日曜や祝日に検査が受けられる医療機関は限られ、平日を待つことにしました。
10日に電話をかけ直し、あらためて自宅近くの医療機関3カ所を教えてもらいました。近い順に電話をかけていきましたが、それもなかなかつながらず、自転車で30分の距離にあるクリニックで検査の予約が取れました。住宅街にある小さな診療所で、検査待ちの人は中に入れず、呼ばれるまで10人ほどが炎天下で待機していました。40分ほど待って、やっと検査を受けられました。
「大変でしたね」 保健所からの電話にホッ
検査結果が分かったのは、次男が11日、長男が12日。病院からの電話では、「陽性でした」とだけ告げられました。私と夫は濃厚接触者となることが明らかでしたが、保健所からはなかなか連絡がありませんでした。区の相談窓口に問い合わせ、近くの医療機関で12日にはPCR検査を受けました。
子どもたちの陽性が検査した病院から保健所に伝えられ、保健所から初めて確認の電話がきたのは12日夜でした。保育所で最初に感染者が確認されてからすでに6日たっていました。電話口の職員は「大変でしたね」「(遅い時間に)ごめんなさいね」と声をかけてくれて、親身になってくれたため、それまで張り詰めていた緊張は少し解けた気がしました。「お盆中も対応してもらい、ありがとうございます。電話がきてほっとしました」と返事をしたと思います。日々、感染者の急増が伝えられ、保健所がパンクしていることもニュースで見聞きしていました。対応が追いついていないのだろうなと痛感しました。子どもたちの体調を伝えるとともに、濃厚接触者として何に気をつけるべきかといった質問もしました。
「濃厚接触者」のままなら、さらに2週間
驚いたのは、いつになったら外出できるのかを確認したときです。発症から10日間は人に感染させる可能性があるそうで、長男は発熱した日から11日目の19日、症状がなかった次男は検査から11日目の21日に外出できるようになるとの説明でした。私と夫も12日に受けた検査結果が陽性だった場合は同様に23日から外出可能とのこと。しかし、感染しておらず「濃厚接触者」のままだった場合には、子どもの自宅待機が終わる日からさらに2週間、健康観察のための外出自粛が求められるのです。そして、結果的に親の私たちは陰性でしたので、9月3日まで約1カ月、自宅を出られない生活を余儀なくされました。「感染していた方が、自宅待機期間が短くて済むのか…」と複雑な気持ちでした。大切な取材も諦めなくてはならず、気持ちが落ち込みました。
感染者が急増し、入院しにくくなっているニュースを見聞きする度に身震いしました。子どもたちは幸いほとんど症状がなく過ぎていきましたが、もしも悪化していたら、保健所からの連絡がない間どうしていいか分からず、心細かったでしょう。きっと同じように子どもを抱える家庭で、不安な思いをしている人もいるだろうと胸が痛みました。
感染防止は困難…陰性はワクチンの効果?
東京都から自宅療養者向けの食料品も配送してもらいました。水やレトルト食品、カップラーメンなどが陽性者1人につき段ボール3箱分送られてきて、これはとても助かりました。ネット通販もかなり利用しました。子どもたちが外出できるようになってからは、徒歩5分ほどの距離にあるスーパーまで買い物に行ってもらうこともありました。
子ども2人の感染が発覚してからの感染防止対策は、ほとんど不可能でした。まだ小さく、夜は添い寝をしますし、風呂も一緒に入ります。3LDKのアパート住まいでは、看病部屋を用意できるわけでもありませんでした。消毒や掃除、換気はしましたが、気休めでした。だから、私と夫が検査で陰性だったことには驚きました。ワクチンの効果があったのかな、と思っています。
閉塞感、孤独…医療以外の支えも必要です
わが家のように子どもが感染した場合、長ければ1カ月もの間、自宅生活を余儀なくされます。私はテレワークしながら何とか乗り切ってきましたが、そうできない職種の人もたくさんいます。家族がずっと同じ場所で一緒に過ごすことはストレスもありますし、大きな負担です。社会から切り離されたような閉塞感から気持ちの落ち込みや、孤独を感じる人もたくさんいるだろうと感じました。
東京都からは、心の健康に関する相談窓口の案内文が食料品と一緒に届きました。医療的なこと以外にも自宅待機中の人を支える仕組みが必要だと、自分自身の体験から感じました。例えば、就労できなくなった期間の賃金保障やその相談先、子どもの学習支援なども課題としてあげられると思います。少しでも安心して過ごせるよう、多方面からの情報提供や支援が必要だと感じました。
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