選挙に出たいのに、預け先が見つからない 統一地方選に立候補する2児の母の訴え「平等に挑める社会に」
「子どもがいることがハンディに」
「子どもがいることがハンディになってしまっている」。この春に予定される東京都内の議会選に立候補予定の40代の女性は、活動を始めて実感した。7歳と1歳の2児の母。小学校教員だった経験を生かし、教育問題に取り組もうと議員を目指すことを決めた。
反対する夫ら家族を説得し、3月から本格準備に入った。だが、選挙のため1歳児を保育所に入所させたいと役所に問い合わせると「返事に時間がかかる」と言われ、その後に届いた返答は「最短でも2カ月後」。金銭的な理由もあり、シッターは利用していない。家族の協力を得ながら毎朝駅頭に立つが、思うように準備は進まない。
名刺やたすき、のぼり旗にホームページ。さまざまな作業は子どもが寝ている間にこなすが、昼夜を問わず授乳しなければならず、限界を感じる。「その日にやりたかったことの8割が終わらない」と焦りは募るばかりだ。街角でのポスター張りなど多くの場面は子連れを余儀なくされている。
入所可のはずが…自治体任せの実情
岸田文雄首相は今月、「選挙活動や政治活動は一般的に保育所の入所要件に該当する」との見解を表明した。だが、可否は自治体任せで、優先度が低いと判断されれば入所は難しいのが実態だ。女性議員・候補者のサポート団体代表の浜田真里氏らの調査では、自治体から「立候補のため仕事を辞めると『就労』などの保育所利用の要件に該当しなくなるので、退所しないといけない」と通告された人もいた。
政府は少子化対策で、保育所利用の要件緩和を検討中だが、実現時期は不明。都市部では施設や保育士が不足しており、週1、2回しか利用できないなら選挙活動は困難だ。学童保育も保護者の立候補を理由とした受け入れは難しいと答える自治体は少なくないという。
お茶の水女子大の申琪栄(シン・キヨン)教授(政治学)の話
従来の政治活動は、育児や介護の責任を負わない男性を前提として成り立ってきた。選挙関連のルールや法律の目に見えない障壁を正していくべきだ。
東北大大学院の河村和徳准教授(政治学)の話
退路を断って仕事を辞めた人や専業主婦が、子どもを預けて選挙に挑めるような環境整備、シッター費などを選挙費として公費負担する法整備を検討すべきだ。
女性の政治参画
内閣府は2020年度、女性の政治参画への障壁に関する調査を実施。選挙の立候補へ具体的な行動を起こしながら、断念した女性に理由を聞いたところ「資金不足」が68.0%で最も多く、次いで「仕事や家事・育児・介護などのため、選挙運動とその準備にかける時間がない」の61.7%だった。「当選した場合、家庭生活との両立が難しい」も47.8%に上った。
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