最年少14歳でテニスプロの西村選手 母になってコート復帰「やるからには四大大会に」
へとへとの体で1歳の息子を寝かしつけ
バックハンドから放たれた強烈なショットが、深く、際どいコースに決まる。出産からまもなく丸2年。20キロの減量を終え、試合勘も戻ってきた。
6月の地区大会で優勝、国内最高峰の全日本選手権出場を決めた。「もっと精度を上げなければ」と課題克服に余念がない。
長男佳悟(けいご)ちゃん(1つ)を保育園に預け、葛飾区を拠点に練習に励む。へとへとの体で息子を寝かしつけ、家事をこなす日々。「1日が短すぎる」と本音が漏れた。
父とのすれ違い 一度は競技を離れた
2010年、ジュニア世界一を決める大会で日本人初の優勝を果たした。歴代優勝者にはマルチナ・ヒンギス選手(スイス)ら、後に四大大会を制する選手が多数いる。同年、14歳でプロに転向。15歳でプロになった大坂なおみ選手より早い最年少記録は、今も破られていない。
将来を期待されたが、15年に表舞台から突然姿を消した。テニスは素人ながら全力で支援してくれた父と、意見が食い違うようになり、「あれこれ考えて自分らしさを見失ってしまった」。気持ちを立て直せず、競技から離れた。
コーチもスポンサーも…ゼロから再出発
結婚、出産を経てテニスと無縁の生活を送る中、疎遠のままの父が気がかりだった。夫大悟さん(43)に「テニスで壊れた関係はテニスで修復するしかない」と促され、2年半ぶりの再起を決めた。
18年、コーチもスポンサーもいないゼロからリスタートし、父にも伝えた。知人を頼って練習相手を探し、見つからない日は1人で壁打ちをする。「やるからには四大大会に出たい」と語る。
テニス特有の事情 海外遠征がママ選手に高いハードル
西村佳奈美さんのような世界を目指すママ選手には今後、テニス特有の事情が待ち受ける。
最高峰の四大大会に出るには、海外で実績を積んで世界ランキングを上げる必要がある。出場経験がある元プロ選手の森上亜希子さん(39)=ミキハウス=は「テニスで上を目指す場合は海外を飛び回らなければならない。子どもを連れていくにはハードルが高い」と指摘する。日本テニス協会によると、過去に四大大会に出たママ選手の統計はなく、1975年の全豪に飯田藍さんが出産後に出場したのを把握しているくらいだという。
一方、海外では四大大会でママ選手が活躍し始めている。昨年の全米決勝で大坂なおみ選手に敗れたセリーナ・ウィリアムズ選手(米国)は長女を出産後に復帰した。森上さんによると、ウィンブルドン選手権(全英)会場に託児所が設けられるなど、子育てと両立する環境が整備されつつあるという。西村さんが国内外に遠征する際は、そば店を切り盛りする夫の大悟さんが子守を引き受けてきた。遠征費などの工面も今後の課題。今は、競技を離れている間にアルバイトでためた貯金を崩しながらスポンサー探しを続けている。
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