コロナで気になるわが家のエンゲル係数 食費から家計を見直すポイントは「基準の月」と「満足度」
収入が低いほど高くなるエンゲル係数
エンゲル係数は、ドイツの統計学者エルンスト・エンゲルが1857年に発表した論文に基づく指標で、食費を生活費(消費支出)で割ったもの。数値が高いほど貧しいとされ、日本では戦後間もない頃は60%台だった。経済成長とともに低下し、総務省の家計調査によると、2019年は2人以上の世帯で25.7%、単身世帯で24.6%だ。
生命維持に欠かせない食費は、ぜいたく品などへの支出と違い、極端に減らすことが難しい。家計調査の年収別の比較を見ると、収入が低いほど係数が高くなる傾向がうかがえる。「現代でも、豊かさを測る指標の一つと言える」。生活経済学が専門の岐阜大教授、大藪千穂さん(58)は話す。
平均値より高いから悪いわけではない
エンゲル係数の食費には、スーパーなどで買う野菜や肉だけでなく、外食や弁当、総菜などを購入する「中食」も含まれる。例えば、34歳以下の単身世帯では、女性が21.8%なのに対し、男性は28.4%と6ポイント以上高い。総務省の担当者は「男性の方が外食が多く、係数を押し上げる要因の一つになっている」と説明。一方、友人らへのプレゼントなど、自分の世帯以外の人のために買った食品は対象にならない。
自分の家庭の値が平均値よりも高いと「節約しなければ」と焦ってしまうかもしれない。「平均値は自分の立ち位置を知る上では参考になるが、そこから外れているから悪い、というわけではない」と大藪さん。エンゲル係数は食費そのものの金額だけでなく、ほかの支出の状況によっても変動し、世帯の収入や人数によっても違う。食にどれほどお金をかけたいかといった価値観にも左右される。「大切なのは家計簿を付け、支出の状況をきちんと把握することだ」と説く。
見直しポイント 外食費に「◎/△」
例えば、やりくりがうまくできて、黒字が出た月のエンゲル係数を基準として、毎月の係数の動きを見ていけば、使い過ぎを防ぐことにつながる。食費の中でも、外食や中食は自炊に比べて金額が高くなりがちで、係数を押し上げやすい。家計簿を付けるとき、外食や中食の金額や割合も細かく把握すれば、より正確に状況をつかめる。
金額だけでなく、その買い物によって自分が満足できたかどうかを記録することも、家計の見直しの参考になる。例えば、外食費の項目に満足度に応じて「◎」や「△」を書き添える。結果として「◎」が多ければ、少しぐらい出費がかさんでも許容範囲かもしれない。逆に「△」ばかりなら、お金を賢く使えていないとも言えるだろう。
外食を控えても、自炊をせずに出来合いの食品ばかりを食べていれば支出は多くなりがちだ。エンゲル係数には、それぞれの世帯の生活力も表れる。大藪さんは「食事は人間をつくる基本となるもの。単に食費を減らすというよりは、その中身を考えてほしい」と話す。
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