全国最年少!9歳の防災士が誕生 東日本大震災の再現ドラマを見て「人の役に立ちたい」
つくばみらい市の母娘がW合格
茨城県つくばみらい市立富士見ケ丘小学校3年の安藤希子(きこ)さん(9つ)が昨年末、全国最年少の防災士になった。東日本大震災発生時の再現ドラマをテレビで見て、資格取得を志した。娘を支えながらともに勉強してきた母純子さん(42)も同時に合格し、「親子で学べてうれしい」と笑みをこぼす。今後は市の防災出前講座などに協力し、災害時の「自助」「共助」「協働」の大切さを市民に伝えていく。
幼稚園の頃、防災絵本に夢中に
防災士は民間資格で、災害時の「自助」や、地域や職場での「共助」「協働」で主導的な役割を担う人材確保が目的。取得するのに年齢制限はなく、最年少の9歳で合格したのは希子さんで6人目となる。
希子さんが最初に防災に関心を持ったのは幼稚園児の頃。子ども向けの学習絵本「こども ぼうさい・あんぜん・絵じてん」(三省堂)に夢中になった。小学生になると専門的な本にも手を伸ばすようになり、「生き延びるための地震学入門」(幻冬舎)は表紙の一部がぼろぼろになるまで繰り返し読んだ。
昨年3月に見た民放のテレビ番組が行動に移すきっかけになった。12年前の震災で、岩手県釜石市の小中学生が自主的に高台へと避難することを決断、全員が大震災による津波から難を逃れるまでを描いた再現ドラマ。「人の役に立ちたい。テレビで解説していた防災士ってすごい。私もなりたい」と口にした希子さんを応援したいと思った純子さんは、娘と二人三脚で挑戦しようと決意した。
300ページの教本から筆記試験
防災士になるには、各自治体などで研修講座を受けた上で、筆記試験をパスする必要がある。その後、地域の消防署などで救急救命を学び、登録申請すれば資格取得者となる。
最大の関門は筆記試験。300ページにも及ぶ分厚い教本から30問が出題され、8割の正答で合格となる。実施主体の認定NPO法人「日本防災士機構」(東京都千代田区)によると、2021度の合格率は約91%。比較的合格しやすい試験とはいえ、出題範囲は広く、専門的な知識が問われる。例えば、海外や日本の海底プレート(岩盤)の構造、原子力防災対策、損害保険の適用範囲などだ。
希子さんは3回にわたる研修講座を経て、昨年9月から、1カ月後の試験に向けて純子さんと一緒に自宅学習を始めた。小学校で習っていない漢字が使われている教本に純子さんがルビを振り、要点を書き込んだノートを作成。毎日1時間ほど、隣り合わせに座って猛勉強した。
「自分の身を守るにはどうすればいいのかと、強く思いながら受験した」と希子さん。純子さんは、娘の真剣に取り組む姿に胸を打たれたという。10月中旬、2人そろって合格。12月末に救急救命講習を受け、晴れて親子の防災士が誕生した。
志願者が増加 自治体の補助も
防災士の資格制度は1995年の阪神大震災を受けて制定。その8年後、日本防災士機構が初めて試験を実施した。全国の防災士は今年2月末に25万人を突破。現在、茨城県内に5312人、つくばみらい市には114人いる。
日本防災士機構によると、防災士資格試験の教本代や受験料を補助する制度を設ける自治体があり、志願者は右肩上がりで伸びている。つくばみらい市でも2019年度に補助制度を導入し、人材育成に力を入れている。
同市の東日本大震災での被害は重軽傷者5人、住宅の全壊11戸、半壊55戸。2015年9月の関東・東北豪雨では、住宅の半壊13戸、床上浸水1戸、床下浸水21戸だった。
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