災害時の性暴力を防ぐために 困窮女性や子どもが狙われる「対価型」 避難所は女性リーダーが不可欠です
避難所リーダーに性行為を強要され
「夫が震災で亡くなり、娘と避難所に身を寄せた。避難所のリーダーから性行為を強要され『断ったらここにいられなくなる』『娘に被害が及ぶ』とやむなく応じた」
「避難所のリーダー格の男性を含め複数の男性から暴行された。騒いで殺されても、海に流されて津波のせいにされる恐怖があり、誰にも言えなかった」
東日本大震災で女性たちが受けた性暴力の被害の一端だ。正井さんと国内外の専門家らで発足させた「東日本大震災女性支援ネットワーク」が、直接被害を目撃した人や相談を受けた人たちを対象に2011年秋からアンケートを実施。寄せられた82件のうち、夫や交際相手による暴力(DV)が45件、それ以外の暴力(主に性被害)は37件だった。被害者の年代は5歳未満から60代以上まで。男児もいた。
物資の見返り 立場の弱い人が標的
特徴的なのは、被災して困窮している女性に対し、必要な物資や生活の世話の見返りとして、男性が性的な関係を要求するといった「対価型」の性暴力であること。正井さんは「いずれも加害者は被害者よりも力を持ち、立場を利用している。特に、一人暮らしや母子家庭の女性など後ろ盾のない人が標的とされやすい」と言う。
暴力の根底にあるのは、相手をおとしめ、思い通りに操ることで優位に立ちたいという「支配欲」。日本福祉大教授で性暴力被害者支援看護師(SANE=Sexual Assault Nurse Examiner)の長江美代子さん(65)は「災害でストレスがかかり、弱い者に支配欲を向ける。普段からその傾向がある人は拍車がかかる。中高年女性なら恥ずかしくて言わないだろう、子どもが言っても信用されないだろうと、見過ごされる状況を知った上で加害に及ぶ」と話す。ボランティアの女性が被害に遭うこともあるという。
「災害時にそんなことをするはずがない、という社会の認識がある」とも指摘。実際に1995年の阪神大震災時には、被害を訴える声に「デマだ」といった批判が起き、長らく被害が語られなかったという。
トイレの位置、注意喚起のポスター…
性暴力を防ぐにはどうすればよいか。「まず、避難所に女性のリーダーを配置することが不可欠」と正井さん。例えばトイレの設営では、東日本大震災時も他人から見えない校庭の隅や鍵のないトイレがあり、怖い思いをした女性は多かった。「女性が運営に関われば、明るく安全な場所につくろうという発想になる」。そのためには普段から、組織運営ができる女性を地域で育てることが必要だ。
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「性暴力は許さない」という意識を、住民全員が共有することも重要。2016年の熊本地震では発生後すぐ、東日本大震災の調査を基に、避難所などに性暴力について注意喚起するポスターが掲示された。
内閣府も2020年、女性の視点を盛り込んだ防災・復興ガイドラインを作成。トイレや更衣室などを適切な場所へ設置することや性暴力防止・相談窓口の周知を促した。正井さんは「防災は日常から始まる。今後予測される災害に向けて、平常時から女性や子どもが暴力に苦しまない社会をつくる必要がある」と話す。
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集団レイプは本当に信じがたい悪行。
強いストレスのはけ口として、自分より弱い存在を暴行するなんて、どんな言い訳も許されるものではない。
やってはいけないことは、やってはいけないのだから、そんなことをする人は即刻避難所から追放し、警察に引き渡してほしい。
自治会会長をしています。1200世帯の公営住宅で主に活動の担い手は高齢女性。防災は主要な問題なので強く関心を持って取り組んでいます。単身高齢者が住民の6割。すべてに行政の支援が思うように届いてこない中で、課題は多くあるが、防災には根気よく取り組んでいる。避難所について今後の課題。高齢者、障害者が多いのもちではない餅ではない避難プランを考えねばと思っている。