家の中でもドリブル練習ができる! モルテンがリアルさを追求しミニバス用「ルームバスケットボール」を開発

石井紀代美 (2025年5月11日付 東京新聞朝刊)
モルテンのバスケットボール

「ルームバスケットボール」の開発経緯を話すモルテンの小林由明さん=墨田区で

 家の中で思う存分バスケットボールのドリブル練習ができる商品をスポーツ用品メーカーの「モルテン」が開発した。床についてもあまり音がしないボールは、以前から他社も作ってはいたが、バスケ好きの人には質感などがいまいちだった。そんな中、五輪にも公式試合球を提供する同社がリアルさを追い求めた。開発を手がけたのは、長年営業を担当する小林由明さん(49)。きっかけは現場に埋もれていた切実な声だったという。
モルテンのバスケットボール

モルテンが開発した「ルームバスケットボール」。跳ね返りも手触りも本物並み

ドリブル音が階下ではささやき声レベルに

 パスッ、パスッ、パスッ、パスッ―。目いっぱい腕を上下に振ってドリブルしても、そんな音しか聞こえてこない。「使用時に階下で聞こえる音を、人のささやき声レベルに抑えることができました」と小林さんは胸を張る。

 始まりは社内の研修だった。課題に取り組む中、これまで、実際にスポーツをする人ばかりに意識を向けてきたことに気が付いた。発想の転換で、「その人たちを支える周囲の人」の意見も聞いてみることになった。

 同社の東京本社がある墨田区や江東区で活動する、小学生のミニバスケットボールクラブに足を運んだ。そこで聞いた保護者らの声は切実だったという。

外で練習してもドリブルは「うるさい」

 ミニバスの練習がない日は、子どもらが自主練習をする。ただ、自宅周辺にはバスケのゴールがなく、シュートを打ちたくても打てない。

 結局、外でドリブル練習をすることになるのだが、ボールをついていると近所の人から「うるさい」と怒られてしまう―。多くの親が同じ悩みで困っていた。

 「環境がないために、このままでは競技から離れてしまう人がどんどん出てくるのではないかと危機感を抱きました」と小林さんは振り返る。

モルテンのバスケットボール

高額ながら1週間で完売した

現状はミニバス用のみ 1週間で完売

 そんな背景から生まれてきたのが室内用のドリブルセット、その名も「roombasketball(ルームバスケットボール)」だ。

 ボールは本物より90g軽く、指で押してぐにゃっとへこむくらい軟らかい。しかし、高反発性のマットのおかげで跳ね返りは十分。1.8mの高さから落下させた時に約1mの高さまで弾むという公式ルールの規定を満たす。ボールの表面は人工皮革で覆われ、手触り感も遜色ない。

 3月上旬にオンライン予約を開始すると、マットが広めの「Pro(プロ)セット」が1週間で完売した。現状はミニバス用の5号球のみ。

 小林さんは「家の中のすぐ手に届く場所に置いてもらえるよう、デザインにも気を使った。家族で一緒にやってみて、そこからコミュニケーションが生まれるようなアイテムになってほしい」と願う。

 予約注文は、「モルテン」の公式オンラインショップで受け付けている。

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