東京すくすくは3歳になりました 読者の皆さまへのお礼と編集長交代のお知らせ
コロナ禍という厳しい環境の中で、子育ての悩みや迷いはますます濃くなっています。コロナ後の社会も見据え、今後も子どもに伴走する皆さんに役立つ情報を発信していきたいと気持ちを新たにしています。
3年の節目に、編集長が小林由比から今川綾音に交代します。皆さまへのお礼とこれからについてお伝えします。
すくすくと歩いた3年間 編集長・小林由比
私が新聞社で仕事を始めたのは、20年以上前。企画記事やコラムなどを除いて、今ほど記者の署名記事というのは多くありませんでした。その後、徐々に署名記事は増え、記者一人一人の問題意識が浮かんだり、人となりがにじんだりするような記事は今、当たり前になりつつあります。「当事者性」を生かした取材や発信も目につくようになりました。
編集長として東京すくすくを担当したことは、私にとってそのギアがまた一段上がるような体験でした。今は高校生と小学校高学年になった息子たちの子育てが一番ハードだった時期には、自分の経験を大切にする、という感覚よりも、次々とぶつかる壁をなんとか切り抜け、仕事に支障をきたさないようにすることが目的化しているような日々でした。 でも、すくすくを編集する中で、そんな私のつたない子育て体験や思いも、役立てることができるのかも、と感じることができました。一人の親として、そしてこの社会を構成する大人の一人として、子どもと生きていくことの楽しさも、しんどさも読者の皆さんと共有できるようなメディアをつくりたい―。編集チームのメンバーとは、日々の子育てや子どもをめぐる社会環境について雑談も議論もたくさんするようになり、その中から記事のアイデアが生まれたり、方向性が見えてくることが多くありました。
児童文学作家の松岡享子さんに取材した際、「よく、昔の子どもと今の子はどう変わりましたか、と聞かれるけれど、子どもっていつの時代も大きく変わってなどいないのですよ」と言われたことが心に残っています。ですが、今の、とりわけ東京を中心とする首都圏での子育ては、「変化の大きい時代に乗り遅れない」「こんな力もあんな力も必要」と、親も子も追い立てられるような気持ちになりがちです。すくすくに寄せられるコメントからも、思うように子どもと向き合えない自分を責めたり、失敗できないと思い詰めたりする親の皆さんの息苦しさが伝わってきます。コロナ禍が、子育てを苦しくしてしまっている面もあるでしょう。だからこそ、確実な情報を得られたり、同じように感じている人がいるんだな、と思えたり、ちょっと肩の力を抜いたりできるような記事を届けていくことはますます重要になるのでは、と考えています。
子育ては家庭だけではできません。生きていくための根っこの部分をつくる子ども時代をしっかり包み込み、支え合う社会をつくりたい。その思いで、これからも編集チームのメンバーとしてたずさわっていきたいと思います。
2代目編集長には現在副編集長を務める今川綾音が着任します。今川は、最初にすくすくのようなメディアをつくることを提案した記者です。彼女もまた、こんな情報があったら子育てが楽になるはず、という思いを持って記事を書き、必要とする人に伝えたいという熱い思いを持っています。すくすくがますます読者の皆さんとの距離を縮めることができますように。これからもどうぞよろしくお願いします。
子育て期のスタートを支えたい 新編集長・今川綾音
新編集長に就くことになりました今川綾音です。これからどうぞよろしくお願いいたします。
「東京すくすく」の原点には、私自身が第1子を産んだ直後の苦い思い出があります。
東京に転勤した4カ月後、気軽に話せる地域の知り合いもまだいない中、出産しました。入社以来、仕事に精いっぱいで、子育てに関する知識ゼロの状態で赤ちゃんとの生活に突入。産むのがゴールだと思っていましたが、大変なのは産んでからでした。
赤ちゃんが寝ない。自分も眠れない。夫は長時間勤務で、ほぼワンオペ育児。自分のごはんを食べようと思ったところで赤ちゃんが泣いた。今日会話したのはスーパーのレジのスタッフだけ。夫に対する気持ちの変化への戸惑い。深夜の発熱。離乳食を食べない。保育園入れなかったらどうしよう。とりあえず都の認証に半年通わせて、4月入園で認可を狙うしかないのかな。なんで赤ちゃんの隣でこんな計算ばかりしてるんだろう…。
今振り返ると、知っていれば違ったのに、もっと楽な気持ちで子どもとの時間を過ごせたのに、と思うことばかりです。新聞社に勤める人間として、子育てのスタート期を支える記事発信の仕組みをつくりたい。その思いに共感してくれた仲間と始めたのが、このサイト「東京すくすく」です。
3年前にすくすくがスタートするとき、脳研究者の池谷裕二さんが「人間の脳を生物学的に見ると、親は子どもを育てるようにはできていないし、子どもも親の言うことを聞くようにはデザインされていない」という話をしてくれました。人間の子どもは長い間、祖母や年長の子どもに育てられてきたこと。何かあるとすぐに「親の顔が見てみたい」と言われるが、そもそもの前提が間違っていること。親だけで頑張らなくていいんだ、と思わせてくれる応援メッセージでした。
「親が責任を持って子どもを育てる」というのは、家庭内で全てを引き受けることではなく、必要に応じて支えてくれる人や制度と上手につながって、親自身が子どもを包み込む余裕を保ちながら育てていくことなんだ。このとき抱いた確信は、すくすくと歩んできた3年間で強くなるばかりです。
日々子どもと向き合う方たちの声を受け止め、ほっとできるような話題や役に立つ情報を発信していくとともに、子育てにまつわる制度や社会の考え方を、温かい方向へ変えていくこと。3歳になったすくすくも、変わらず大事にしていきたいと思います。
東京すくすくではサイト開設3周年を記念してオンライン講座を開始します。第1回目のテーマは「性教育」です。産婦人科医の「サッコ先生」こと高橋幸子さんが、みなさんの質問に答えます。日頃、子どもと向き合う中で思う疑問や不安をお寄せください。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい
3歳のお誕生日、おめでとうございます!!東京すくすくの記事は、親や保護者と近い目線の高さで取材されていている気がして、知りたいことや参考になることが多いです。ドキッとするような話も‥。これからもよろしくお願いします。
今川編集長、就任おめでとうございます。これからも「ワンオペ育児」などという悲しい言葉が消えていくように、辛いながらも楽しい育児を多くの方々が実感するように、寄り添った紙面作りを期待しています。「子育て日記」で僕も担当いただき僕らも長年親身に寄り添っていただきました。そんな娘も中学生活を謳歌しています。月日が経つのは早いです。どうぞ楽しんで。田中健
池谷裕二さんの「人間の脳を生物学的に見ると、親は子どもを育てるようにはできていないし、子どもも親の言うことを聞くようにはデザインされていない」は目から鱗でした。だから難しいんですね。そして、素敵な記事をたくさん発信しておられる今川さんに、そんな「苦い思い出」があったと知り、心を動かされました‥。今後も東京すくすくの記事が読めることを嬉しく思います。