もうひと部屋、なんかできそうな気もする〈加瀬健太郎 お父ちゃんやってます!〉
子どもたちは、よく僕の膝の上に座る。さすがに長男はもうないけど、あとの3人が、かわるがわるに来て、取り合ってケンカもする。「おれもここでは人気者だな」と、うれしい。
うれしいが、みんな決まって僕の上で屁(へ)をこく。しかも、悪びれもせず「こいちゃった」と申告もせず、さも当たり前のことのようにこく。理由を聞くと、次男は「おならガスで温めてあげてるんだよ」と得意げ。三男は「だって、いいじゃん」と笑った。四男は「だいじょうぶだよ」と言った。大丈夫かどうかは、こちらで決めさせていただきたい。
家にスペースが足りなくなってきた。1階がLDKで、2階の2部屋が、寝室と僕の仕事部屋。夏の寝室は、人口密度でムンムンしていて、二酸化炭素中毒にならないか心配なほど。いつの間にか大きくなった長男の体も、子ども用2段ベッドからあふれ出そうとしてる。
それがある日、妻が「吹き抜けのところに、もう一部屋作れるんじゃない?」と言ったので、家族6人玄関に集まって、吹き抜けを見上げた。
「なんかできそうな気もする」「あの壁をぶち抜いて、アコーディオンカーテンにして」「自分たちで工事できるんじゃない?」「落ちたらどうすんだよ」「あそこはおれの部屋ね」「おめえ、ずりーんだよ」「けんとは2段ベッドな」「ママのよこがいい」
楽しかった。何もない吹き抜けに、みんなで新しい生活を思い描く。大航海時代の冒険家が、世界地図に新大陸を夢見たように。「工事いつからすんの?」と興奮した子どもらに聞かれ、言葉に詰まる。「もう面倒くさくなったんでしょ」と妻が言った。
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。13歳、11歳、6歳、3歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい