年間2500人が発症するとされる小児がん 「遺伝子パネル検査」で副作用の少ない治療法の選択肢が広がる

国立成育医療研究センターなど発表
東京都の女性(37)は2022年、医師に勧められて当時生後2カ月だった長女のパネル検査に同意した。長女は大脳にできた神経膠腫(こうしゅ)(グリオーマ)の影響で脳出血があり、手術を受けたばかりだった。
その後のパネル検査で、グリオーマの原因となる遺伝子異常が分かり、副作用が少ない治療法を選択できた。4歳になった長女は今、保育園に通い、普通の生活が送れている。女性は「どの治療法が有効か明確に分かり、安心して治療を受けることができた。パネル検査が世の中に浸透すれば」と期待する。
国立成育医療研究センターなどの研究によると、2022~2023年に50の医療機関から204人の検体を集めてパネル検査をした。検査結果の分析に詳しい専門家集団「エキスパートパネル」の所見が、その7割にあたる147人の患者の診断や予後の予測、治療法の選択に役立った=上の図参照。
年間2500人が発症するとされる小児がん。医療の進歩で小児がん患者の8割が回復するようになったが、病気や治療による後遺症「晩期合併症」の課題も残る。パネル検査の結果から、晩期合併症を抑える治療法を選ぶことも可能になった。
そもそも小児がんは種類が多く、診断が難しい。遺伝子の異常とがん細胞の相関が強いため、診断にはパネル検査が有効と考えられ、今回の研究が行われる前から、小児がん患者にはパネル検査を実施してきた経緯がある。
詳細な検査結果を生かす診療体制を
国内で2019年に公的医療保険が適用されたパネル検査は主に成人のがんを想定。2023年には小児がんも想定して、従来より多い1000以上の遺伝物質を調べるパネル検査が保険適用になり、検査で分かる情報が格段に増えた。保険が使える場合の総額は56万円。一方、検査結果を分析して報告書にまとめるには高い専門性が必要で、研究に際し各地の医師がオンラインで集まって知恵を出し合った。
国立成育医療研究センター小児がんゲノム診療科の加藤元博診療部長は「研究では小児がん治療に対する理想的な組織をつくれた。実際の診療ではそこまで到達していないので、全国の専門家が力を合わせるオールジャパンの体制を整えることが重要だ」と話す。
細胞が分裂して増える過程で、まれに遺伝情報が誤ってコピーされる。こうした複製のエラーが積み重なり、正常だった細胞ががん細胞になる。このような特性を踏まえ、遺伝情報全体に着目した「がんゲノム医療」が進んでいる。
ゲノム医療の手掛かりをつかむために行われるのが、がん遺伝子パネル検査だ。医師は患者からがん細胞の組織や血液を採取し、専用の装置で100以上の遺伝子を調べ、その特徴に合う抗がん剤を検討する。パネル検査の情報は、国立がん研究センター内に2018年に開設された「がんゲノム情報管理センター(C-CAT(シーキャット))」に蓄積されている。
国立がん研究センターは1月、5万4000人のデータを解析した研究成果を発表。治療の標的となる遺伝子の異常が判明したのは72.7%に上ったが、検査結果に基づく治療を受けたのは8%にとどまった。治療に必要な薬が不足しており、C-CATの河野隆志センター長は「国内で薬の研究、開発が必要だ」と話す。
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