医療的ケア児と歩む㊦ 訪問医師、看護師 養成を

(2018年2月10日付 東京新聞朝刊)
 医療的ケア児と家族の生活に、専門的な支援は欠かせない。人工呼吸器を使い、胃ろうからの栄養注入、たんの吸引などのケアが必要な福満華子(かこ)さん(14)=東京都中野区=のもとには、医師が月2回、訪問診療に来る。看護師も別に週3回訪れる。

通院は大変・・・訪問医師や看護師の養成を

 「華子さん、調子はどうですか」。昼前、子ども在宅クリニックあおぞら診療所墨田の岡野恵里香医師(42)が訪れ、胸に聴診器を当てた。ベッドでは、体に手を当てながら全身の緊張状態を診る。「首の気管孔が赤くなっていて」。母親の福満美穂子さん(45)が相談すると、岡野医師が様子を見て軟こうを処方した。

写真は診療に訪れた岡野恵里香医師(右)と華子さん(手前)の様子について話す母の福満美穂子さん=東京都中野区で

診療に訪れた岡野恵里香医師(右)と華子さん(手前)の様子について話す母の福満美穂子さん=東京都中野区で

 胃ろうの器具交換などにも対応する。「わざわざ病院に行かずに済むことがありがたい」と福満さん。月1、2回は大学病院へ通院するが、ヘルパーを頼み、福祉タクシーで連れていくのは楽ではない。岡野医師は「ケアをするお母さんが疲れていないかも見る。家族に寄り添い、支えるのも仕事だと思っています」。

ケアや介護を地域ぐるみでできる社会に

 医療的ケア児に対応できる医師はまだ少ない。中野区医師会の前会長で、福満さん親子を知る山田正興医師(64)は、地域での在宅医療の難しさを指摘する。

 産婦人科医として、かつては病院の新生児集中治療室(NICU)で管理されていたような障害の重い子が、地域に戻ってきていると感じる。複雑で難しい病気の子も多く、成長や環境の変化で体調や症状も変わりやすい。訪問診療にあたる医師は最新の医療機器の扱いやケア、行政の福祉サービス、教育機関の現状にも精通していないと務まらないという。

 「小児を診ることができる医師と看護師の養成が急務。地域の医療と福祉、教育が連携して支える態勢を整えなければ」。子どもの主治医の大学病院などの医師との意思疎通も重要だ。

いるだけで周りにパワーを与える娘

 福満さんは、将来もこの地域で華子さんと一緒に暮らしていきたいと願う。

 「一生懸命に生きようとする娘は、きれいごとではなく、いるだけで周りにパワーをくれる存在。だからこそ、声を上げていきたい」。何十年に及ぶケアや介護を、家族だけで抱え込まずに済む社会になるように。

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