子どもをたたいてしまう、怒鳴ってしまうなら…「とりあえず電話して」 匿名でOK? どう話せば? 相談員に聞きました

 「子どもをたたいてしまいそうなとき、誰でもいいから、ただ話を聞いてほしい-」。東京すくすくの記事のコメント欄は、子育て中の母親からのSOSであふれています。「話を聞いてほしいだけで相談窓口に電話をしていいの?」「何て言って切り出したらいいのか分からない」。寄せられる声からは、そんな戸惑いも見えます。全国の保護者から子育ての電話相談を受けている「子どもの虐待防止センター」(東京都世田谷区)のアドバイザーで臨床心理士の高田真規子さんに、どういうふうに相談したらよいのかを聞きました。

「ただ話を聞いてほしい」SOSのコメント続々

「気軽に電話をかけることができて、ただ話を聞いてくれる機関があったらうれしいです。追い込まれているのは大抵1人のときだし、知り合いにはたたいてしまったことなどなかなか打ち明けづらいので…」

「子どもへの暴言は、息子と2人きりのときに出てしまいます。こんなこと誰にも相談できません。匿名で、誰にも言えない愚痴や悩みを吐き出せる場があるといいと思います」

 -東京すくすくには、こういった声がたくさん届きます。子どもをたたいてしまいそうなときや、誰でもいいから話を聴いてほしいときに、電話をしてもいいのですか?

 はい。たたいてしまいそうになったら、電話をくださいね。1人で抱えていると、頭も気持ちもごちゃごちゃな状態になり、先が見えなくてつらくなってしまいます。誰かと言葉を交わしながら、自分の抱えている悩みを聴いてもらいましょう。

 聴いてもらうと、ごちゃごちゃになっていた頭の中や気持ちが整理され、気持ちに隙間が空き、ゆとりが回復してほっとします。私たちは、そのお手伝いをします。相談員に話すことで、自分の思いを聴いてもらい、自分自身も気持ちのゆとりを回復していきましょう。

<子どもの虐待防止センターの電話相談>
03(6909)0999(平日午前10時~午後5時、土曜午前10時~午後3時)

混乱した状態でいい。話をするだけでも違います

 -「相談の仕方が分からない」「どういうふうに切り出していいか分からない」という声もあります。

 考えがまとまらないまま電話をかけてくる方も多いです。それでいいんですよ。相談員は相談者の言葉を拾いながら「こういうことなの?」と尋ねます。そうしながら今の気持ちを受け止め、確認していくことが、相談を受ける側の一つの役割だと考えています。つらい思いがあふれてかけてきて、相談員の息づかいや相づちを聞くことで安心して、何も言わずに切る。そういう方もいるんですよ。

 「自分の気持ちや悩みを整理してから相談しなきゃ」と考えなくてもいいんです。自分が何を話したいのか、何をつらいと感じているのか、どうしたいのか、相談員とのやりとりで見えてくることもあります。

 相談員は「こういうことかな? 違う? もし違ったら教えて」と相談者とやりとりしながら、気持ちにフィットする言葉を探していきます。主人公は相談者です。一緒に言いたいこと、抱えている気持ちを見つけるお手伝いをします。途中でだまる方もいますし、怒鳴る方もいます。相談員はそれらを全部受け止めながら、相談者の息づかいを感じて、言葉を紡いでいきます。

思いを言葉にすること自体に意味があります

 -実際にはどんなアドバイスをするのでしょうか?

 どのような機関にどのような形で相談をするとよいかなど、相談の内容に応じて具体的なアドバイスをすることもあります。

 でも、気持ちや考えをただ聴いてもらうことで整理ができて、相談者が「スッキリしました」「気分が軽くなりました」「たいしたことじゃないと思えました」と言って日常に帰ることも多い。それはとても大事なことだと思っています。自分の思いを言葉にすること自体に意味があります。

行政に相談するための「練習」にもなります

 身近な人に話すと「こんなこともできないんだ」と評価されたり批判されたりしそうだからと、相談をためらう人も多いと思います。センターへの相談は、名乗る必要はありませんこちらも、どこの誰かは聞きません。批判されるかもしれないと思うと、相談しにくくなりますよね。ここの電話相談は評価するところではなく、話を聴く・気持ちを聴くところなので、安心してかけてきてくださいね。

 行政などの窓口に相談に行く際も、電話相談でいったん練習しておくと楽に伝えることができます。「こういう形で相談すると、分かってもらいやすいんじゃないかな」とアドバイスすることもあります。実際に行って窓口で対応する職員の表情を読んで、相談者がためらったり遠慮したりしてしまうこともあるので、「窓口で話しにくくなってしまったら、もう1回連絡をちょうだいね。どうしたら分かってもらえるか、もう一度一緒に考えましょう」と伝えています。相談者が自らの力で動けるようなお手伝いもします。

相談員もいろいろ。相性のよい人を見つけて

 -「相談したけれど、自分の役には立たなかった」「自分の子育てを否定されて、さらに追い詰められた」と感じたことのある人もいるようです。

 中にはそういう方もいると思います。「今日の相談員はダメね」と言って電話を切る方もいます。対面の相談は担当者が固定されることが多いですが、こちらの電話相談は匿名で相談できます。相談員も匿名で受けます。今のその気持ちを受け止めるので、電話の都度、相談員は違います。

 センターの相談員にもいろいろな人がいます。約50人の相談員は、子育て支援の相談員やケースワーカー、児童相談所の児童福祉司や児童心理司経験者、保育士や教員経験者など職業もさまざまです。皆、専門性を前面に出すのではなく、「隣のおばさん」のように話を聴いています。何人か相談してみると、自分と相性のよい人が見つかるかもしれません。「合わない」と思っても、ぜひもう一度、電話をかけてみてくださいね。

子どもの虐待防止センターの電話相談

 子どもの虐待防止センターは1991年、子どもとの関わりに悩む親たちを支えようと、子どもの虐待防止に携わる医師や保健師、弁護士などの専門職と市民が開設。これまで受けた全国の保護者からの相談は10万件を超えた。相談は、03(6909)0999へ。平日午前10時~午後5時、土曜午前10時~午後3時(日曜・祝日休)。

コメント

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