子どもの貧困は学力にも栄養面にも影響する 阿部彩さん講演 社会全体で意識を高めるには?
志村彰太 (2023年6月7日付 東京新聞朝刊)
子どもの貧困の現状と背景、必要な対応などを解説する講演会が5日、横浜市中区であり、同分野の第一人者として知られる東京都立大の阿部彩教授が登壇した。貧困に陥ると学力や栄養面、社会参加など幅広い面で不利になるとして、社会全体で意識を高めることの重要性を説いた。
栄養格差 学校給食の完全実施が有効
阿部教授は、直近30年間で特に10代から20代前半の貧困率が上昇したと説明。子どもの貧困はひとり親世帯だけでなく「夫婦と未婚子のみ」の世帯でも割合が上昇しているとした。
東京都の2016年の調査を参照し、「困窮層」とその「周辺層」は、学校の授業について行けない割合が高く、野菜の摂取頻度は低いなどの実態を解説。栄養格差は、学校給食の完全実施が有効な対策になり得るとの見解を示した。
「親になることへのハードルが高すぎ」
親は過度な精神的ストレスにさらされているとし、阿部教授は「親になることへのハードルが高すぎる。楽しく子育てできる社会をつくる必要がある」と訴えた。一方、厳しい日本の財政状況も挙げ「多くの人が貧困や行政、政治に興味と知識を持つことが大切だ」と述べた。
講演会は、生活協同組合パルシステム神奈川が2018年に設立し、高校生向けの給付型奨学金事業を担う「神奈川ゆめ社会福祉財団」が公益財団法人になったことを記念して開いた。
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