養育費不払いは泣き寝入りせず相談を 離婚後の子育て支援、増えてます 立て替え・回収の保証サービスや自治体の補助も
約7割の母子世帯が受け取っていない
「離婚時に取り決めたのに養育費を支払ってもらえていない」「ここ2~3年、支払いが滞っている」。愛知県司法書士会が今年9月に開いた電話相談会には、養育費の不払いに悩む当事者から相談が寄せられた。
厚生労働省の2021年の調査によると、離婚時に養育費の取り決めをしている母子世帯は46.7%。だが「現在も養育費を受け取っている」という母子世帯は28.1%にとどまった。離婚した母子世帯の約7割が養育費を受け取っていないことになる。
「払ってもらえなくて困っているけれど、諦めている人が多いのが現状」と、名古屋市の司法書士伊藤彰英さん(46)は指摘する。
財産開示できず「逃げ得」が多かった
養育費の支払いを取り決めたのに応じないときには、相手の預貯金や不動産、給与を差し押さえ、支払わせる「強制執行」を裁判所に申し立てる手段がある。この場合、申し立てた側が相手の口座がある金融機関の支店名や勤務先を特定する必要がある。
ただ、「銀行の支店名までは分からない」「元夫が離婚後に転職してしまった」など、自力で財産を特定するのが難しいことが少なくない。この場合は、強制執行申し立ての次の段階の手続きとして、相手を裁判所に呼び出して財産目録を出させるなどの「財産開示手続き」をする。ただ、これまでは応じなくても罰則が軽かったため、「逃げ得という面が強かった」と伊藤さんは話す。強制執行を諦めざるをえないケースが多かったという。
2020年4月に法改正 刑事罰の対象に
こうした状況を解消するために、2020年4月に改正民事執行法が施行された。改正後は、財産開示手続きに応じないと、「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰が科されるようになった。
また、預貯金の口座や勤務先が分からない場合には、裁判所に申し立てれば、金融機関や市町村などから情報提供を受けられるようになった。伊藤さんは「強制執行はかなりしやすくなった」と話す。未払いで困っている人には、「泣き寝入りせずに、司法書士や弁護士など専門家に相談してほしい」と呼びかける。
強制執行の申し立てに必要なものは?
強制執行の申し立てには「債務名義」が必要だ。債務名義とは、養育費の支払いを取り決めた調停調書や、当事者2人が公証役場で作成した公正証書などのこと。伊藤さんは「養育費について話し合わずに離婚してしまう夫婦もいるが、取り決めは重要」と強調する。離婚後でも調停で養育費を取り決めることはできるが、支払期間は調停が成立してからになってしまう。
また、養育費の金額は一度合意すると、増やしたり、減らしたりするには調停が必要になるため、伊藤さんは「慎重に決めたほうがいい」と助言する。
民間会社の保証サービスで立て替え
養育費を巡っては、民間会社による「立て替え」や、自治体による手続き費用の補助も広がっている。
民間の保証サービスでは、養育費を受け取る側の親が一定の保証料を保証会社に支払う。養育費の不払いが発生した際には保証会社が立て替え、保証会社は不払いの相手から債権を回収する。
すでに不払いが発生している場合は利用できないが、将来の不払いに備えることができる。
手続き費用を補助する自治体が増加
この保証料を支援する自治体が増えている。例えば、名古屋市では保証会社と契約する際に最初にかかる保証料を5万円を上限に補助する。養育費保証会社「Casa(カーサ)」(東京)によると、全国で約150の自治体が同様の支援策を導入している。
日本シングルマザー支援協会代表理事の江成道子さん(55)は保証サービスについて「比較的少ない金銭負担で、養育費が確保できる点はメリット。子どもの教育費で困らないようにするためにも、こうしたサービスの利用は広がってほしい」と話す。
また、自治体によっては、養育費を取り決める公正証書を作成した場合の費用を補助する制度もある。条件を満たした公正証書があれば、養育費の不払いが発生した際に、強制執行の申し立てができる。
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