【大学無償化】手続きはお早めに 子ども3人以上の多子世帯が対象 学生本人が申請を
申し込みは学生本人 返事がなく焦る親
「申請が間に合わなくなりそうで焦りました」。3人姉妹の長女(20)が国立大3年に在籍する東京都江東区の会社員、香奈さん(47)=仮名=は話す。
長女は関東地方の大学近くで1人暮らし。多子世帯向けの支援を受けるため、大学に問い合わせたところ、4月下旬が締め切りと分かった。「申し込むのは親ではなく、あくまで学生本人なんですね」。長女にLINE(ライン)で早く窓口に行くよう促したが、春休みはバイトや旅行、サークルと忙しかったのか、なかなかはっきりした返事がなかった。
香奈さんの長女が利用するのは、進学先の学費の減免と日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金による「高等教育の修学支援新制度」。2025年度から、3人以上子どもがいる多子世帯は所得制限が撤廃され、学費の減免では「授業料・入学金」が満額支援となった。国公立は実質、授業料が無償化され、私立大は年間70万円、専門学校は59万円減免される。給付型奨学金についても国公立、私立、自宅生、自宅外生によって収入に応じた支援を年間最大91万円受けることができる。
4月に入り、香奈さんの長女がようやく窓口で申請書類を受け取った。大学を通じてJASSOのIDをもらい、申込書類に記入。現金が振り込まれる学生本人の口座書類も必要だった。大学に書類を提出した後、JASSOによる選考結果通知を受け取り、あらためて大学を通じて書類を提出する。
「多子世帯関連で以前申請したことのある都の手続きは子ども3人分の健康保険証のコピーを出すだけだったので、今回も簡単な手続きだろうと油断していました」と香奈さん。「娘の着手が遅くてヒヤヒヤしたが、何とか間に合ってよかった」と胸をなで下ろす。別の会社員女性も「手続きがとても大変だった。間に合うかギリギリ」と慌てたという。
申請が遅れても、さかのぼって支援
文部科学省によると、JASSOの締め切りはおおむね4月末だが、5月以降も申請を受け付けられる体制となっている。申請が遅れても4月にさかのぼって支援されるが、支給開始時期が遅れてしまう。担当者は「学校や大学には積極的に制度の案内をするよう周知しているが、対象者が自ら手続きをしなければ支援を受けられない。なるべく早めに申請してほしい」と呼びかけている。
給付型奨学金は学業への意欲も支給の判定基準となる。1年生は高校の評定平均値が5段階で3.5以上など一定条件の成績があるか、目標を持って勉強する意欲を示すリポートなどを出すことで支給を受けられる。
毎年成績と家計基準をもとに審査があり、2年生以降も一定の成績や出席率が必要。公費で支援を受ける上で真面目に学業に向き合う姿勢が求められている。文科省の担当者は「基本的には通常通り授業に出て必要な単位をしっかり取り、留年などしなければ、おおむね(支給停止に)ひっかかることはない」と話している。
高等教育の修学支援新制度
住民税非課税世帯および準じる世帯(モデル世帯の年収は380万円程度)の進学意欲のある学生を対象に、「授業料・入学金」の減免と原則返還の必要がない「給付型奨学金」を支給する制度。2020年度に始まり、世帯の所得金額に応じて満額支給、3分の2支給、3分の1支給の3つの区分がある。24年度から、扶養する子どもが3人以上いる多子世帯と私立大学などの理工農系学部の学生について、授業料・入学金の減免(4分の1)と給付型奨学金が支給される4つ目の区分ができた。世帯年収の上限は600万円程度に引き上げられた。
私立の理工農系などの学生へは、私立文系の平均授業料との差額に着目した額が支給され、給付型奨学金の支援はない。多子世帯については2025年度から、授業料・入学金は所得制限は設けず満額支援となり、給付型奨学金については引き続き収入に応じた支援を受けることができる。
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