神奈川県警の男性育休は目標の5割を超えたが… 女性幹部を増やすには? ただ1人の女性署長に聞く

西川侑里、篠ケ瀬祐司 (2025年5月23日付 東京新聞朝刊)
 神奈川県警の男性職員の育休取得率は2024年度、前年度の50.7%を上回る見込みで、2年続けて目標の50%を超える公算となった。女性活躍推進を後押しする結果だが、警察官総定数の10%超を占める女性で幹部まで昇進するのはなお少ない。現職としては県内唯一の女性署長で、3月に藤沢署に着任した有馬美奈子警視(58)に課題を聞いた。(西川侑里、篠ケ瀬祐司)
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女性活躍や男性育休について話す有馬美奈子署長=神奈川県警藤沢署で

女性幹部は新たな視点を示せる

-県警は警部以上の女性警察官を総定数の3%まで増やす目標を掲げているが、昨年4月現在で1.7%にとどまっている。

決して満足の行く数字ではない。(警部までの)警部補、巡査部長から増やしていかないといけない。

-女性幹部が増える意義は。

男性が多い職場で、新たな視点、気づきを示せると思う。階級が上がれば発言力が増し、組織に「女性はこういう気持ちで仕事をしている」と訴えていける。自分の経験から、育児をしている人たちには「あなたが頑張っていることを、みんなが分かっている」と伝えることもできる。

-女性幹部を増やすにはどうしたらいいか。

さらなる意識改革が必要だ。『女性だから、子どもがいるからこの仕事』ではなく、個人を見ることが必要だ。女性も男性も、仕事も家庭のことも両方やればいい。

-県警の男性の育休取得率が2022年度の19.8%から、急増している。

「育休を取ろう」と言うだけではなくて、(取得時に代わりの)人員を補塡(ほてん)することで、男性警察官も育休を取っていいんだと意識改革が進んだ。最近は「保育園の送り迎えをするからこの期間にとりたい」など目的も明確だ。女性も休むことへの申し訳なさが薄れる。

-育休中の昇任試験が受験可能となった。

休職期間がマイナス扱いされないのがいい。これまでは育休期間中に周囲が昇任するケースもあった。

-前任は県警本部組織犯罪分析課長。刑事部門では初の女性理事官として特殊詐欺や匿名・流動型犯罪グループ対策に取り組んだ。女性活躍の先例でもある。

私自身、仕事と家のことのバランスを取れず、その時その時でやってきた。そんな私を見て、自分でもできる、自分もやりたいと思ってもらえればうれしい。

-ストーカー被害防止に向け、女性の視点から取り組むことは。

女性だからということはない。改めることは改めながら、救える命を救うため、できることをすべてやっていく。

-藤沢署長として取り組みたいことは。

江の島などブランド力のある観光地がある。訪れた人が良い記憶を残せるよう置き引き防止などしっかり犯罪を抑止したい。特殊詐欺は治安上の脅威だ。あらゆる手口が存在することや、軽い気持ちでの闇バイト応募が重大な罪につながることを、機会があれば直接、市民に話をしたい。

元記事:東京新聞デジタル 2025年5月23日

育休中でも昇任試験を受けられる

 神奈川県警は2025年度から、育児休業中に各階級の昇任試験を受けられるよう制度を改めた。女性活躍推進の一環で男性の取得も増えている現状を踏まえ、受験しやすい環境を整える狙いがある。(西川侑里)

これまでは「1日だけ復業」も

 昇任試験は年1回で、階級ごとに時期が異なる。育休は子ども1人につき、出生日から3歳になるまでに女性2回、男性4回(うち2回は妻の産後休暇中のみ)の取得が可能となっている。

 これまでは育休中に実施される試験を受けるため、当日だけ復業する職員もいた。その場合、実質的には継続した1回の取得にもかかわらず、受験前後で計2回とカウントされてしまうという弊害があった。県警は今回の変更で、より柔軟に制度を利用できるようになるとみている。

 本年度にこの制度を利用した育休取得者は、警部補試験で16人(男性14人、女性2人)、巡査部長試験で50人(男性27人、女性23人)の計66人に上る。

 警務課企画室で女性活躍施策などを担当する小山亜矢警部(51)は「本人が望むキャリアが阻害される要因を少しでも取り除くことにつながれば」と話している。

元記事:東京新聞デジタル 2025年5月23日

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