教員の残業代訴訟、請求棄却も裁判長が指摘「もはや教育現場の実情に合っていない」 さいたま地裁判決
1971年制定の給特法 4項目以外認めず
1971年制定の給特法は、公立学校の教員には校外実習と学校行事、職員会議、災害対応の「超勤4項目」以外の時間外労働は命じられないと規定。基本給に一律4%を上乗せする代わりに、時間外勤務手当は支給しないとしている。
教諭は、2017年9月~2018年7月に月平均60時間の時間外労働をし、大半は超勤四項目以外だったと主張。労基法上の労働に当たるとし、残業代を求めて2018年9月に提訴した。
判決は、教諭の時間外労働を認定したが、給特法により、労基法に基づく残業代の請求権は認められないと指摘。残業時間は社会通念上の限度を超えるほどではなく、国賠法に基づく損害賠償請求の対象にもならないと判断した。
「問題提起には意義。勤務環境の改善を」
一方、校長らが労基法違反の状態を認識しながら長時間勤務を続けさせたりした場合は、国賠法に基づく損害賠償責任を負うとの見解を示し、「原告の問題提起には意義がある。勤務時間の管理システムの整備や給特法を含めた給与体系の見直しなどを早急に進め、教育現場の勤務環境の改善を切に望む」と付言した。
判決後、東京都内での記者会見で、弁護団は損害賠償が認められる可能性を明確に示したとして「画期的な判決」と評価。教諭は「無賃残業の状態を国が認めてはいけない」と控訴する意向を示した。
埼玉県教育局は「主張が認められたと考えている」とコメント。文部科学省の担当者は「訴訟の当事者ではないのでコメントは差し控える」とした上で「教員の業務が、給特法制定当時は想定しなかった高度化や細分化が進んだ実態は直視する必要がある」とした。
原告の男性教諭は失望「1日3時間の無賃労働が当たり前なのはおかしい」
弁護団「評価できる点もある」 登校指導などは労働時間に認定
近年の教員の業務について、男性教諭はタブレット端末の導入や英語の必修化、さらに新型コロナウイルス対応などで「増えるばかりで減ることは考えられない」と説明。司法に期待していただけに「明日からの希望が見えてきません」と失望を口にした。
一方、さいたま地裁前では判決後、教員や大学生ら支援者が「教員に人間らしい働き方を」と書かれた紙を広げるなどして状況の改善を訴えた。男性教諭は「多くの人が教員の無賃残業を知るきっかけになった」と述べ、支援に感謝した。
また、原告弁護団は、判決には評価できる点もあると指摘。公立学校の教員が残業代を求めたこれまでの裁判では、教員の時間外勤務は本人が自主的に行っているとみなされてきたという。今回の判決は、男性教諭が行っていた朝の登校指導などは労働時間に当たると認めており、「今後に生かせる裁判だ」とした。(寺本康弘)
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長年、中学校の教育現場で英語を教えてきましたが、教科指導は業務のほんの一部に過ぎず、教育課程外である部活動の顧問を当たり前のように強いられ、法定の休日でさえ特殊勤務の名のもとに指導・引率等の業務?に従事させられ、家庭生活は大いに犠牲を強いられ続けてきた。部活動指導に熱心な教師ほど現場ではもてはやされ、好成績を残すことに心血を注ぐ教師もいる。部活動は日本独特のシステムであり、色々な面で教育的価値の高いものであることは理解できるが、ややもすると教師の本分である教科指導などは二の次になり、教材研究の時間などは保証されていないのである。兎に角、ありとあらゆることを教育現場が任されすぎ、現場の教員が身動きが取れないような状況が何十年と延々と続いてきたのである。今の大学生たちは、日本の教育現場の実情をよく理解しており、自分の将来を託す仕事として教師は見合わないことを実感しているのである。