2022年10月から新たな「年収の壁」 106万円を超えると手取りが減る層が拡大します 見極めのポイントは労働時間
新たに45万人が厚生年金に加入
社会保険料を新たに負担するのは、厚生年金への加入を義務付けられる人たちだ。9月までは勤務先の従業員数「501人以上」などが条件だったが、今月から「101人以上」に拡大。国によると、約45万人が対象になったという。
特に注意が必要なのは、配偶者が会社員で、扶養から外れないように額面年収130万円未満で働いていた主婦(夫)らだ。厚生年金に加入すると、年金や医療などの社会保険料を支払う。額面106万円(月収8万8000円)が保険料の支払い義務が生じる境目となり、超えると手取りが急落する。「106万円の壁」と呼ばれる現象だ。
試算で手取りが14万円も減少…
肝心の社会保険料の金額がいくらになるかは、年収のほか、40歳から支払い義務が生じる介護保険料の有無などによって異なる。家計コンサルタントの八ツ井慶子さんの試算によると、例えば、従業員400人の企業で1日4時間、週5日パートで働き、額面年収115万円を稼ぐ東京の40代主婦の場合、9月までは保険料を支払う必要がなく、手取りは112万円だった。今月以降は「106万円の壁」を超えているために保険料を支払う必要があり、手取りは約14万円減って98万円となる。
急減を防ぐには、労働時間の見直しが必要だ。月の労働時間を7時間減らし額面105万円に抑えれば、手取りは104万円。以前の水準には届かないが、下げ幅は縮まる。一方、これまでの手取り額を維持するには、月の労働時間を14時間増やし、額面で135万円を稼ぐ必要がある。働く日を週1日増やす計算だ。
2024年10月にさらに対象拡大
八ツ井さんは「収入の伸びが鈍化するだけの税金の壁と違って、社会保険料の壁は手取りが大きく減る可能性があり注意が必要。これを機に、さらに稼げるようキャリアアップを目指してもいい」と話した。
社会保険料負担者の拡大の背景には、年金財政などの悪化がある。2024年10月には従業員数の要件をさらに51人以上に引き下げることが決まっており、さらに20万人の新規加入が見込まれている。
年収の壁とは
超えると世帯の手取りに影響を及ぼす額面年収の水準で、パートで働く主婦(夫)らが対象。所得税がかかり始める境目の「103万円の壁」や、一定の条件を満たせば社会保険に加入しなければいけない「106万円の壁」、配偶者の扶養を外れる「130万円の壁」などがある。106万円と130万円の「社会保険の壁」は、働きすぎて超えてしまうと逆に手取りが大幅に減ってしまうケースがある。
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