精神疾患で休職した公立教職員が過去最多 識者「人員補充と適正な配置が必要」 2021年度の文科省調査 

榎本哲也 (2022年12月27日付 東京新聞朝刊)

 2021年度にうつ病など精神疾患を理由に休職した公立小中高・特別支援学校の教職員は2020年度より694人多い5897人で、過去最多だったことが、文部科学省の調査でわかった。全教職員に占める比率も0.64%で、過去最多だった。

20代の割合が最も高く 最多は小学校

 調査は、都道府県と政令市の教育委員会を対象に実施。精神疾患の休職者はこの15年ほど5000人前後で高止まりしていた。

 2021年度は年代別で、20代が1164人、30代1617人、40代1478人、50代以上1638人。20代の教職員全体に占める割合は0.78%と、最も高かった。男女別では女性3491人、男性2406人だった。学校種別で見ると小学校2937人、中学1415人、高校742人、特別支援学校772人など。また、2022年4月1日時点で復職したのは2473人で、2283人が休職を続け、1141人は退職していた。

 文科省は26日、教員のメンタルヘルス対策のモデル事業を新年度予算案に計上したと発表した。今後、全国都道府県・政令市から5つを募り、自治体と専門家、学校管理職などで関係者会議を設置。休職に至ったケースの原因を分析し、相談員の配置など対策を実施、効果の検証を行う。同省初等中等教育局の担当者は「しっかりした教育を行うには教員の心身の健康が重要。特効薬はないが、できる対策を進めたい」と話している。

年齢層が二極化 若手は相談相手なく

 「社会を覆う不安、新型コロナウイルス感染症の流行下での動き、深刻な教員不足。これらが背景にあるのでは」

 精神疾患で休職する教員が過去最多となった今回の調査結果をこうみるのは、公立学校共済組合近畿中央病院(兵庫県伊丹市)メンタルヘルスケアセンターの副センター長の井上麻紀・主任心理療法士。同センターは、うつ病などで休職した教員の復職支援プログラムを実施している。

 「長引くコロナ禍が人々の不安を増幅させ、差別、偏見が強まり、学校でも、いじめが増えている。一方で、中止していた学校行事を復活させようとする動きが出ている」と井上さんは分析する。その上で「(団塊世代の大量退職などによる)教員年齢層の二極化で、20代の若い先生は、相談しやすい経験のある先輩教員が身近にいない。いろいろなことが重なって心の負荷が増え、疲弊している先生は多い」と言う。

 文科省は、対策として(1)メンタルヘルス対策(2)勤務時間管理など働き方改革(3)ハラスメント防止(4)保護者などからの過剰要求に対応する法務相談体制の整備-を挙げている。

 「教師の心が折れるとき」などの著書がある井上さんは「それよりもまず取り組むべきなのは人員の補充と適正な配置。『人を増やさずにメンタルヘルス対策を』は無理」と断言する。「教員でなくてもできる仕事を担う支援スタッフを適正に配置して、『教員の仕事はここまで』という線引きを文科省がすべきです」と訴える。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年12月27日

コメント

  • メンタルの不調の最大の原因は、校長によるパワハラです。校長以外なら、相談することもできますが、どうしようもないと思います。 忙しくても、保護者からのクレーム等あっても、職員室内で安心できる場所があれ
    たかこ 無回答 60代 
  • 文科省も教員の増員(に伴う予算の確保)が問題解決の有力な手段であることに気が付いているのに、事態が進まないのは何故だろう?やはり文科省が立場が下で財務省と喧嘩できないことが理由であろう。政権党には党員
    キガネムシ 男性 50代