育児休業のその後を考える 父親と子どもがデイキャンプに挑戦して感じた絆

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ポトフとホットドッグに舌鼓を打つ

 育児休業を取得した父親とその子どもたちがデイキャンプに挑戦するイベントが1月25日、羽村市の堰下レクリエーション広場で開かれました。東京すくすく(東京新聞)と羽村市、東京都(こどもスマイルムーブメント)が協働して企画。アウトドアライフアドバイザーの寒川一(さんがわ・はじめ)さんと北欧ソト料理家の寒川せつこさん夫妻が参加者5組11人の父子とともに火おこしやポトフ作りなどに挑戦しました。
 今回参加した父親たちはみな育児休業の経験のある方たちです。育児休業取得を経てその後の生活に変化はあったのか、そこから見えた課題などについて意見交換しました。

キャンプのエッセンスを詰めこんだデイキャンプ体験

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参加者に説明する寒川一さん(右奥)とせつこさん(その左)

 イベント当日の羽村市の天気予報は晴れ時々曇り、北東の風が風速3メートル、最高気温13度でした。

 寒川さんは「今日はこの地域にあるもので火をたき、お昼ご飯をつくり、テント張りをします。短い時間ですが、重要なものを選んで行います」と話しました。

 参加者はまず、手軽に購入できる「エマージェンシーブランケット」の使い方を習いました。

 寒川さんは「持っている人は多いけど、広げたことがない人が多い。今日はこれを広げて頭からかぶったり、体全体を覆ったりしましょう」と声かけ。子どもたちからは早速「暖かい!」との声があがりました。

 エマージェンシーブランケットは羽織るだけではなく、避難所の床に敷くなどさまざまな用途に使えます。

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エマージェンシーブランケットを羽織りながら寒川さん(右)の話を聞く

 寒川さんは「ぜひ家のあちこちに置いて、活用してみてください」とアドバイスしました。

 続いて挑戦したのはまき割り。火をおこしやすくするため、まきは割り箸ぐらいの細さにする必要があります。寒川さんは、ハンマーで安全にまきを割れるキンドリングクラッカーという道具を持参してくれ、参加者は順番に体験しました。

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まきわりをする参加者ら

火おこしは大変、コツを学んで挑戦

 続いてメインイベントの火おこしです。寒川さんは、杉の皮の内側から繊維質をはぎ取り、手でもんで毛玉のように、ふわっとさせました。乾燥した杉の葉とともにたき付けにするためです。

 「これを杉の葉の真ん中に置きましょう」と寒川さん。

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メタルマッチを持つ寒川さん。切り株の上にあるのは杉の葉と杉の皮を丸めたたき付け

 また寒川さんから、火おこしの際の留意点やこつの説明がありました。

  1. 必ず風上を背にする。自分が風防になるように
  2. 燃料は風下に置かないようにする
  3. 火おこしする前に周りをきれいにし、消火用の水を手の届くところに用意する

 ここまで準備できたら着火するものを選びます。この日はマッチ、着火ライター、メタルマッチが用意されていました。

 メタルマッチは、金属製で棒と板に分かれており、板を棒に一気にこすり下ろすと摩擦で火花が出ます。これを杉の皮などに移します。名前の通り、金属製のマッチです。

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メタルマッチに挑戦する参加者

 5組の親子はメタルマッチで火おこしに挑戦。父親と一緒にチャレンジする子、怖がって父親に任せる子などさまざまですが、火がつくとみんな大興奮。頼りになる父親の姿に、喜ぶ子どもの表情が見て取れました。起こした火でポトフに使うお湯を沸かし、いざポトフ作りへ。

 ポトフ作りの指導は、せつこさん。子どもたちは、羽村市産のネギとカブ、ニンジン、ブロッコリーを鍋に手でちぎって入れました。災害時などにはナイフがない場合もあるので、形にこだわらずにちぎって入れても良いという体験に納得。子どもたちが大活躍のポトフ作りでした。

 ポトフが煮えるまでの間に、キャンプの醍醐味、テント張りに取り組みます。

テント張りも風向きチェックが重要

 寒川さんは、①地面が平らで石などがないこと②風上に出入り口をもうけないことなどに注意するよう、呼びかけました。作業は風上から行います。1人でもできるものの、2人いるとやりやすいとアドバイス。父子の協働にぴったりの作業となりました。

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テント張りに挑戦

 テント張りを終えるころ、ポトフはちょうど食べごろに。みんなでソーセージを焼いて、パンにはさみホットドッグも準備万端。いよいよランチタイムです。ポトフは大人気で、おかわりする子が続出しました。

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たき火でソーセージを焼くのも特別な体験

 ランチの後、子どもたちは寒川さんの指導のもと、ロープワークを習いました。楽しそうに学んだ後、「パパに教えたい!」という声も。そして少し疲れた後は、せつこさんが作るホットアップルジュースを飲んで一息。寒さもあり、子どもたちに大人気。「おかわりください!」の声が多く聞こえました。

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ロープワークに挑戦

育児休業を取得したパパたちの本音トーク

 子どもたちがロープワークや広場で遊んでいる間、父親のみなさんは、コーヒーを飲みながら育児休業取得経験のある東京すくすくの谷岡聖史記者とその経験について語り合いました。初対面で仕事も居住地もバラバラながら、育児休業という共通する経験をもとに共感して話が進みました。

 妻の産後うつをきっかけに育児休業を取ろうと思った人や1人目のときは取れなかったものの、職場の業務効率化に腐心して2人目の産後に取得した人。自分が取得したことで、後輩たちが取るようになってくれたことが嬉しいと話す人。もっと職場の人達が育児休業を前向きに取りやすくなるよう、人繰りを考えているという経営者も。さまざまな経験や思いが共有され、その一つ一つにみなさんがうなずく様子が印象的でした。

 また妻との関係や働きかたを見直すことで、自分自身の人生を見直すきっかけになった、と育児だけでなく考え方そのものにも影響があった人も。育児に全面的に向き合うことで、赤ちゃんが成長する一瞬の変化に気づけて良かったというエピソードに一同納得の表情でした。

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おいしいコーヒーを飲みながら、育児休業の体験を共有しました

 イベントに参加した子どもたちからは「初めて体験することが多くて楽しかった」「(この経験を生かして)家族でキャンプに行ってみたい」などの声が届きました。父親たちからも「育児で忙しい中、デイキャンプでゆっくり時間を過ごせて良かった」「子どもと久しぶりに二人でのんびりと楽しく過ごせてよかった」との感想が寄せられました。

東京都 こどもスマイルムーブメント事業

官民一体で推進する東京都の事業で、社会のさまざまな主体と連携し「子供の笑顔があふれる社会」「安心して子供を産み育てられる社会」を目指す。今回のイベントは、男性の育児休業取得率が上昇するものの育児休業を終えた「その後」も育児や家事への関わり方に変化があるのかに着目した東京すくすくが東京都こどもスマイルムーブメントの取り組みに応募し、実施したもの。
2024年11月に羽村市のヒノトントンZOO(羽村市動物公園)で父子3組によるワークショップを行い、そこで子どもたちから出た意見をもとに今回のデイキャンプ体験を企画した。

東京都 こどもスマイルムーブメントについては、都のHPで詳しく案内しています。

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