子どもの水分補給、どんな時に何を飲む? 基本は食事から スポーツドリンクOKの学校が増えたが、摂取には注意点も

イラスト・永須華枝
食事が問題なければ、水やお茶で十分
「子どもは大人に比べ体の中の水分の割合が大きい。大人は体重の60%だが、子どもは70%。子どもの体からは常に水分が蒸発しているので、この割合を維持するためには、こまめな水分補給が欠かせない」
済生会横浜市東部病院の患者支援センター長で、熱中症対策に詳しい谷口英喜さん(59)はこう説明する。「維持できないと脱水症になり、体調不良の原因になる。脱水状態になると体温コントロールがうまくできなくなるので、暑い季節は熱中症につながる」

「水分補給の基本は食事から取ること」と話す済生会横浜市東部病院の患者支援センター長・谷口英喜さん=横浜市鶴見区で
熱中症対策の観点からスポドリの持ち込みを許可する学校も多く、2020年に日本コカ・コーラ社(東京)が全国の幼稚園や小中学校、高校など計1623校を対象に行った調査では、82.7%が許可していた。41.7%は「すべてのシーンで」、41.0%は夏季や運動時など「特定のシーンで」許可。持ち込みを許可し始めた時期は、熱中症による救急搬送や死亡数が大幅に増加した2018年ごろからとの回答が目立った。
ただ、谷口さんは「水分補給の基本は食事から。足りない部分を飲料で取るイメージを持ってほしい」という。食事が問題なくできていれば、「暑い季節でも日常の水分補給は水やお茶で十分」。特に朝食は重要で、おなかを動かすことで自律神経が活発になり、体温調節も良好になる。
目安は「下着を替えたくなるくらいの汗」
スポドリを飲む目安は、「下着を替えたくなるくらいの汗をかく、強度のある運動をしている時」。谷口さんは「塩分が失われた状態で水やお茶を大量に飲むと、体内の塩分が薄まり『水中毒(低ナトリウム血症)』になる。集中力の低下や意識障害、力が入らなくなるといった状態に陥る可能性がある」と解説する。

部活動でスポーツをしたり、走り回って遊んだりして汗をかいている時は、塩分と糖分が含まれ、エネルギー補給もできるスポドリが有効だ。とはいえ、1リットルあたり砂糖100~120グラム(ブドウ糖50~60グラム)が含まれるので、取り過ぎには注意したい。谷口さんは「高血糖になると、食欲もなくなるので本末転倒。ひどくなると、意識障害や激しい口の渇きが起きる『ペットボトル症候群』の症状が出る」といい、水やお茶との併用を勧める。
元気に動け、ゴクゴクと飲めているうちはスポドリでよいが、「熱中症が疑われ、ぐったりして水分を取るのもやっとという場合は、即効性のある経口補水液を応急処置として飲ませて」と話す。経口補水液の成分は、水1リットルに対し、塩3グラム、砂糖40グラム(ブドウ糖20グラム)。経口補水液は、スポドリに比べ塩分は約3倍、糖分は約3分の1で、胃から小腸へ移動し体内に吸収されるまでの時間が、スポドリが10~20分かかるところ、5~6分と短い。

谷口さんはスポーツ時の飲料として「家庭からスポドリと水やお茶を持参して併用し、部やチームで経口補水液を準備するとよい」とアドバイス。見守る大人に対しては「飲み物の種類は状況に応じて指定した上で、飲むタイミングや量は規定せず、授業中でも運動中でも『いつ飲んでもいいよ』と自由に摂取できる環境を整えて」と求める。
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