「水筒」と子育ての切っても切れない関係 長い道のりは続く〈瀧波ユカリ しあわせ最前線〉14
親のセリフ第1位は「水筒出して!」
子育てに不可欠なものと言えば、あなたは何を思い浮かべるだろう。愛情か。お金か。ベビーカー、それとも絵本? 私はこう言う。水筒だ。
母乳育児の場合、赤ん坊にとってのファースト水筒は母親自身だ。私も1年ほど人間水筒を務めた。ミルクを用いる場合は哺乳瓶。いずれも付きっきりの過酷な作業である。ほどなく赤ん坊自身で握れるマグに代わり、その後やっと、スタンダードな水筒の登場だ。小さかったわが子が、可愛(かわい)い水筒を携えて登園していく。長い道のりだった。ここで感慨にふける親は多いだろう。しかしこの先が、意外と長いのだ。
小学校入学後も、水筒の携帯は続く。低学年のうちは大変だ。教科書の詰まったランドセルを背負い、満タンの水筒を持つと相当重い。夏は水筒をサイズアップして、ますます重くなる。

イラスト・瀧波ユカリ
また、小学生の水筒の斜めがけは非推奨だ。転んだ時に水筒が体に食い込み、内臓を損傷する危険があるためだ。なのでサブバッグに入れて持たせるが、元気に斜めがけで帰ってきて頭を抱えたりする。かように登下校と水筒は、実に相性が悪い。
さらに、子どもはよく帰宅後に水筒を放置する。親が子によく言うセリフ第1位は「水筒出して!」ではなかろうか。そればかりでなく、学校に忘れてくる。持って行くのを忘れる。なくす。子どもは、水筒を通じて親をイラつかせるプロである。
登下校中は禁止、休み時間だけOK?
水筒にまつわる学校特有のルールも気になる。登下校中に飲むのは禁止とか、飲めるのは休み時間だけとか、夏場以外の水筒持参は許可制とか。熱中症リスクの高い昨今、そんなことやってる場合じゃない。水分補給の自由は保障されるべきだ。
昨夏、「水が飲めない子どもが増えている」という趣旨の記事が話題になった。水道水を苦手とする子どもが少なくないとのこと。しかし「ぜいたくを言わず学校の水道水を飲め」とは言えないさまざまな事情がある。コロナ禍に水筒が推奨されて、多くの子どもたちが学校の水道水に不慣れなことや、夏場の水道水はお湯みたいにぬるくてまずいことなど。冷水機を設置している学校もあるが、一部だろう。
ちなみにアメリカ在住の知人の子どもが通う公立小学校では、授業中でも水筒の水を飲むのは全くもって自由、そして全てのフロアに飲料水サーバーが設置してあるとのこと。日本でもそれが当たり前になってほしい。そして子どもたちよ、どうか帰宅後に水筒を出し、できれば洗ってくれたまえ。親も水筒から解放されたいのだ!
【前回はこちら】「エロ広告」ここからは男性の声が必要
【これまでの連載一覧はこちら】〈瀧波ユカリ しあわせ最前線〉

瀧波ユカリさん(木口慎子撮影)
瀧波ユカリ(たきなみ・ゆかり)
漫画家、エッセイスト。1980年、北海道生まれ。漫画の代表作に「私たちは無痛恋愛がしたい~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~」「モトカレマニア」「臨死!! 江古田ちゃん」など。母親の余命宣告からみとりまでを描いた「ありがとうって言えたなら」も話題に。本連載「しあわせ最前線」では、自身の子育て体験や家事分担など家族との日々で感じたことをイラストとエッセーでつづります。夫と中学生の娘と3人暮らし。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい
我が家は幼稚園児の娘とウチら夫婦3人それぞれ水筒があり季節によりクールとホットで使ってます。 利用頻度が高いので洗浄には気をつけてますがイラストにあるような事もあり、あるあるだよなぁーと思い楽しく記事を拝見してました。