車内に子どもを残して離れたことのある人は2割 置き去り死を人ごとにしないで マイカー向け安全装置が続々

加藤電機が開発した乗用車向けの置き去り防止装置。プラグをシガーソケットに差し、センサーをサンバイザーに挟むだけで設置できる=名古屋市天白区のセキュリティラウンジ名古屋で
エンジン停止後、動きを感知すると…
「パーン、パーン」。突然、ミニバンからクラクションの大きな音が鳴り始めた。車内に人などが置き去りになっていることを伝えるサインだ。
自動車盗難防止装置を手がける加藤電機(愛知県半田市)が4月に発売した自家用車用の置き去り防止装置。子どもやペットを車内に残したまま、運転者が車から離れるとクラクション音で知らせる。エンジン停止から一定の時間が過ぎ、センサーが車内の何らかの動きを感知すると置き去りと認識。クラクションを鳴らす仕組みだ。
同社は従来、幼稚園などの通園バス向けの装置を開発してきたが、一般の人が取り付けることは難しい。自家用車用は、プラグをシガーソケットに差し、センサーをサンバイザーに挟むだけで設置できる。降車時にブザー音を鳴らし確認を促す方式も併用し、二重で置き去りを防ぐことができるようにした。価格は4万9500円。
自家用車は送迎バスと違い、設置の義務はない。ただ、22年には大阪府岸和田市で保護者が保育所に預けたと思い込み、次女が車内に取り残されて死亡する事故が起きた。同社の広報担当の天木ナオコさん(55)は「忙しい日常生活の中で起きるうっかりを、機械の力を借りて防いでもらえれば」と話す。
子ども用の端末から親のスマホへ連絡
スマートフォンと連動して置き去りを知らせる装置もある。電機メーカーの慶洋エンジニアリング(東京)は2024年に「こまもり」を開発。近距離で無線通信ができる端末「ビーコン」をスマホアプリと連動させる。車用と子ども用の2つのビーコンが保護者のスマホと15メートルほど離れると、警報音が鳴るようになっている。

ビーコンとスマホのアプリを使って置き去りに気付ける装置(オートバックスセブン提供)
アプリは父母や祖父母らがそれぞれで設定できる。価格は5980円。一緒に企画してきたオートバックスセブン(東京)の高橋拓也さん(53)によると、自分は大丈夫と思っている人も多く、認知度はまだ高くない。「事故は起きているので、自分ごととして考えてもらいたい」
機器に頼り、子どもを置き去りにしない工夫を
「人間はエラーを起こす生き物」。近畿大の島崎敢准教授(安全心理学)はこう語る。同種のシステムを販売する商社の三洋貿易(東京)は2023年に、小学生以下の子どもを乗せて乗用車を運転する3377人へのアンケートを実施。子どもを残したまま車を離れた経験がある人は20.4%で、うち1.9%は残したという認識がなかった。
島崎さんによると、人間には一連の動作を自動的に行う仕組みがあり、それがエラーの原因になる。例えば、電車通勤をする人が休みの日に、行き先とは逆の職場方面行きの電車に乗ってしまうことがある。車内への置き去りも同じで、一連の動作に子どもを降ろす行動が入っていないと、忘れてしまうことにつながる。また、やるべきことをしている間に、別のことに意識が向くと、行動の順序の一部を飛ばしてしまい、事故につながる。
防ぐためには「気が付くチャンスを増やすこと」と島崎さん。事故の防止策を穴が開いたスイスチーズに見立て、すべての穴が重なった場合に事故が起きるという考え方を紹介。チーズの数が多ければ多いほどリスクが下がる。
そのために機器の設置と同時に、子どもが座る位置の隣に毎回自分のかばんを置いたり、子どもを送り終えたら家族に連絡し、一つ一つの行動を確認したりすることなどを勧める。「みんなでアイデアを出し、情報共有することも大切。家族の中で話し合うだけでもいい」と呼びかける。
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