車内に子どもを残して離れたことのある人は2割 置き去り死を人ごとにしないで マイカー向け安全装置が続々

加藤祥子 (2025年7月2日付 東京新聞朝刊)
 夏の暑さが本格化し、子どもを車内に置き去りにする事故の発生が懸念される季節がやってきた。3年前には通園バス内で園児が熱中症で亡くなり、翌2023年から送迎バスへの安全装置の設置が義務付けられた。悲しい事故を避けるため、自家用車向けの装置も登場している。
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加藤電機が開発した乗用車向けの置き去り防止装置。プラグをシガーソケットに差し、センサーをサンバイザーに挟むだけで設置できる=名古屋市天白区のセキュリティラウンジ名古屋で

エンジン停止後、動きを感知すると…

 「パーン、パーン」。突然、ミニバンからクラクションの大きな音が鳴り始めた。車内に人などが置き去りになっていることを伝えるサインだ。

 自動車盗難防止装置を手がける加藤電機(愛知県半田市)が4月に発売した自家用車用の置き去り防止装置。子どもやペットを車内に残したまま、運転者が車から離れるとクラクション音で知らせる。エンジン停止から一定の時間が過ぎ、センサーが車内の何らかの動きを感知すると置き去りと認識。クラクションを鳴らす仕組みだ。

 同社は従来、幼稚園などの通園バス向けの装置を開発してきたが、一般の人が取り付けることは難しい。自家用車用は、プラグをシガーソケットに差し、センサーをサンバイザーに挟むだけで設置できる。降車時にブザー音を鳴らし確認を促す方式も併用し、二重で置き去りを防ぐことができるようにした。価格は4万9500円。

 自家用車は送迎バスと違い、設置の義務はない。ただ、22年には大阪府岸和田市で保護者が保育所に預けたと思い込み、次女が車内に取り残されて死亡する事故が起きた。同社の広報担当の天木ナオコさん(55)は「忙しい日常生活の中で起きるうっかりを、機械の力を借りて防いでもらえれば」と話す。

子ども用の端末から親のスマホへ連絡

 スマートフォンと連動して置き去りを知らせる装置もある。電機メーカーの慶洋エンジニアリング(東京)は2024年に「こまもり」を開発。近距離で無線通信ができる端末「ビーコン」をスマホアプリと連動させる。車用と子ども用の2つのビーコンが保護者のスマホと15メートルほど離れると、警報音が鳴るようになっている。

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ビーコンとスマホのアプリを使って置き去りに気付ける装置(オートバックスセブン提供)

 アプリは父母や祖父母らがそれぞれで設定できる。価格は5980円。一緒に企画してきたオートバックスセブン(東京)の高橋拓也さん(53)によると、自分は大丈夫と思っている人も多く、認知度はまだ高くない。「事故は起きているので、自分ごととして考えてもらいたい」

機器に頼り、子どもを置き去りにしない工夫を

 「人間はエラーを起こす生き物」。近畿大の島崎敢准教授(安全心理学)はこう語る。同種のシステムを販売する商社の三洋貿易(東京)は2023年に、小学生以下の子どもを乗せて乗用車を運転する3377人へのアンケートを実施。子どもを残したまま車を離れた経験がある人は20.4%で、うち1.9%は残したという認識がなかった。

 島崎さんによると、人間には一連の動作を自動的に行う仕組みがあり、それがエラーの原因になる。例えば、電車通勤をする人が休みの日に、行き先とは逆の職場方面行きの電車に乗ってしまうことがある。車内への置き去りも同じで、一連の動作に子どもを降ろす行動が入っていないと、忘れてしまうことにつながる。また、やるべきことをしている間に、別のことに意識が向くと、行動の順序の一部を飛ばしてしまい、事故につながる。

 防ぐためには「気が付くチャンスを増やすこと」と島崎さん。事故の防止策を穴が開いたスイスチーズに見立て、すべての穴が重なった場合に事故が起きるという考え方を紹介。チーズの数が多ければ多いほどリスクが下がる。

 そのために機器の設置と同時に、子どもが座る位置の隣に毎回自分のかばんを置いたり、子どもを送り終えたら家族に連絡し、一つ一つの行動を確認したりすることなどを勧める。「みんなでアイデアを出し、情報共有することも大切。家族の中で話し合うだけでもいい」と呼びかける。

【アイデア募集】 東京すくすくでは、置き去り防止のアイデアを募集しています。「こうすれば」というアイデアや、日ごろ実践している工夫を、ぜひ記事下の「すくすくボイス」からご投稿ください。

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