子どもを性的虐待から守るために SOS発信力を伸ばす”CAP教育” 「怖い約束は守らなくていい」

浅野有紀 (2020年3月6日付 東京新聞朝刊の一部加筆)
 実態が見えにくい子どもの性的虐待被害。警察庁が2月に発表した昨年の児童相談所への通告は全国で260人(暫定値)にとどまったが、専門家は「現実は、はるかに多い」とみる。子どもを守るため、家庭でできることを伝える取り組みを取材した。
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CAPの内容を実演する大野さん(左)と増田さん=さいたま市で

父親の暴行 14歳「我慢すれば家族は幸せ」

 「嫌と言わないのをいいことに、受け入れてくれていると思った」。2月12日にさいたま地裁であった、当時14歳の娘と性交したなどとして児童福祉法違反などの罪に問われた男の裁判。男は、娘が小学校高学年の頃から体を触るようになり、性交していたと認めた。

 娘は「ママに言っちゃだめだよ」と口止めされていた。「私が我慢すれば家族が幸せになれる」。日頃から思い通りにいかないと物を投げつける父親が性交後は機嫌が良くなるからと、一人で恐怖に耐えていた。娘の方から体を触るよう父親に求めることもあったという。

言葉にならないSOS 自傷行為や不登校に

 埼玉県立小児医療センター精神科長の舟橋敬一医師によると、長期間、性暴力にさらされるうちに「自分でコントロールできる可能性が残されている」と思えることが大切なため、自ら性行為を促してしまう場合もある。誰にも言えずに苦悩を抱え込んだまま、腹痛や自傷行為、不登校などの不調を来すようになるという。

 言葉にならないSOSとして、
▽風呂に入りたがらない
▽衣服の着脱を嫌がる
▽年齢の割に性的な知識がある
▽学業成績が急に落ちる
―などが挙げられる。被害が深刻化する前に「幼い頃から『嫌』と言える教育が大切だ」と話す。

親に「約束を守らないとだめ」と言われ…

 子どものSOSを発する力を引き出す教育の一つに、米国発祥のプログラム「CAP(キャップ)」がある。CAPとはChild Assault Prevention(子どもへの暴力防止)の頭文字。全国に活動拠点があり、埼玉県内では比企郡、越谷、桶川、久喜市内の4団体が要望を受けて小学校や幼稚園などで講座を開いている。

 昨年末も、久喜市内で大人向けの講座が開かれた。くきCAPの増田知巳代表は「保護者はつい、『約束を守らないとだめ』『知らない人について行っちゃだめ』などと行動を規制しがち。実際に性被害に遭い『誰にも言わないで』と口止めされると、その約束を守ってしまう子もいます」と注意を促した。

 一律に規制するのではなく、「怖い気持ちになる約束は守らなくてもいい」と、子どもが選べるように伝えることがポイントだという。

「自分の身体を大切に」と伝えてほしい

 同時開催した子ども向けの教室では、自分の安心や自由が奪われたと感じた時は、「『嫌』と言う」「逃げる」「相談する」の中でできることを見つけようと、呼び掛けた。子どもたちは、親戚のおじさんにキスをされ「誰にも言わないでね」と約束させられたという想定のロールプレイで、身を守る行動をとる練習もした。

 CAPくれよん(桶川市・川島町)の大野清子代表によると、講座後に子どもから「お父さんからキスされた」と打ち明けられることもあるという。「暴力の穴に落ちてしまった時、抜け出したいと思える力を引き出すため、保護者は日頃から子どもたちに『自分の体を大切にしよう』と伝えてほしい」と話している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年3月6日

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  • 匿名 says:

    身勝手な大人の うすペラい感情だけに 振り回されてしまう 大切な小さな心…。
    涙が止まらない…。
    あなたを助けてあげたい…。。
    助けてかげたかった…。

    とにかく…刑罰を重くしてほしい‼
    そんな人間 死刑でも構わない‼

      

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