〈坂本美雨さんの子育て日記〉12・全て覚えておきたい
6万枚の写真
今、私のスマートフォンには6万枚近い娘の写真と3000本超の動画が入っている。大量のデータを保存できるクラウドサービスを契約し、万が一スマホが壊れても、その写真などをなくさないように安全策を講じ、さらにデータだけでは寂しいので、お気に入りを紙プリントしている。なぜそんな枚数になるかというと、同じシーンでも5~10枚は撮って、違う表情を全部取っておいてしまうから。全部消せないという親御さんはきっと多いだろう。
娘は最近、いっちょまえに「キメ顔」もするようになったけれど、なにげない瞬間の、途中の表情がすごくいとおしい。彼女がどんな人間なのか、すでに独特な性格がとても出ている。彼女なりの、世の中の見方や、表現の仕方、正しいこと、恥ずかしいと思うことなど。
例えば、覚えたての言葉を使うとき。彼女の中で確信がもてるまで、小声で言ったり、口だけその言葉の形にしてはにかんだり。そしてふいに別のタイミングで大声で発してみる。言葉の正確さ、発音や使い方を何度も確かめ、自信がついてから言いたいという気持ちがあるらしい。私のマネジャーの名前「あめみやさん」を呼べるようになるまで「あみゃ…」エヘヘ…と、分かっているけどまだ言わないの、というはにかみ顔の何ともかわいかったこと!
親子のノリツッコミ
また、彼女なりの「一発芸」(帽子のあごひもをお鼻にかけて、「引っかかってますよ!」というもの)をやるときの「やるよやるよ」という空気感。鼻の穴が少し膨らんで、期待に満ちた顔。それに親がツッコんだときの爆発的な笑顔。ノリツッコミのタイミングが合ったときのおもしろさは、幼児も同じなのだなぁ。鼻の穴が膨らむのは、私側の血が代々受け継がれている気がする(笑)。
大きくなって、どんな子どもだったのかという話題になったとき、「人見知りでね」とか「ワガママだったね~」という大きなくくりではなくて、こういう些細(ささい)なことを覚えておいてあげたい。写真などなくても記憶の中に保存しておきたいけれど、残念ながら私は大事なことをどんどん忘れてしまう。忘れることがとてもこわい。だから撮る。カメラを向けることと、その瞬間の子に向き合って自分の目に焼き付けることのバランスに日々気をつけながら、やっぱり今日も何十枚と撮ってしまうのだろう。(ミュージシャン)
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい