子どもを性被害から守るため、必要なことは?〈性教育10の悩みに答えます⑨〉
東京すくすくは、開設3周年を記念して、気になるテーマを楽しく学べるオンライン講座を企画しました。第1弾は「性教育」です。講座〈教えて!サッコ先生 性教育10の悩みに答えます〉で取り上げた質問を、記事でもテーマごとに紹介します。幼いころの性被害の傷が今も残るというお母さんからの質問です。
質問9. わが子を性被害から守るために、何が必要でしょうか?
幼少期に性的な被害を受けてきました。母になり、自分の幼い子どもたちが性被害に遭わないようにするために、身を守る方法を教えてほしいです。
女性から女性、子ども同士の性暴力も
すくすく 深刻な話題ですが、誰もが考えておかなくてはならないテーマです。質問を寄せてくださった女性は、4、5歳のころ、お姉さんから胸を触らされたり、わいせつなビデオを見せられたりといった被害を受けてきたそうです。お母さんに相談したのに対応してもらえなかったことが大きな傷となっているとのことでした。
サッコ先生 姉妹間の性被害だったので、お母さんももしかしたらそんなに深刻にとらえなかったのかもしれませんね。家庭内の性被害というと、お父さんから、義理のお父さんから、おじいちゃんから、おじさんからなど男性から女の子への被害が一般的に思い浮かぶかもしれませんが、女性から女性、子ども同士ということもあるし、男の子が被害に遭うこともしっかり想定しておく必要があると思います。
すくすく 先生は繰り返し「プライベートゾーン」のことを伝えていますね。
SOSのため「プライベートゾーン」を
サッコ先生 子どもたちに自分で身を守れるようになってもらいたいということで、プライベートゾーンはしっかり伝えたいですね。プライベートゾーンとは、くちびると胸と性器とお尻。くちびると水着で隠れるところだよ、と伝えています。
命に直結する大切なところで、知っている人でも知らない人でも、見せて、とか触らせてと言われてイヤだなと感じたときは言っていい、言わなきゃいけないよ、そしてその場から逃げよう、一人では解決できないことが多いから周りの大人にSOSを出してね、というようなことをなるべく早い段階で伝えるとよいと思います。お風呂の中で、ここはとっても大切なところだから、自分で洗えるようになろうね、という形で伝えられるかなと思います。
すくすく やっぱり、お風呂はチャンスですね。
2023年「生命の安全教育」が始まると
サッコ先生 学校現場でも前進があります。2023年から、全国の学校で「生命(いのち)の安全教育」が始まる予定で、すでに試行的に始まっています。プライベートゾーンや性的同意、デートDVなど、幼稚園・保育園や小学校、中学校、高校、大学と発達段階に応じた内容を集団で学ぶことになっており、小学校などでは担任の先生が道徳の時間で教えるようになると聞いています。これは一つとても大きな進歩です。
性暴力とはなんなのか、それをどうやって防ぐのか、そして教材の中には被害に遭ったあなたが悪いのではありません、悪いのは加害者、だから誰かに相談してね、というところまで入っていてセットで学びます。そうなると子どもたちが性に関するトラブルに遭ったとき、大人たちに相談してきてくれることも増えるはずです。
大人の私たちがキャッチする、受け止める心の準備をしておかないと、この相談者の方のようにせっかく相談しようと、伸ばしてくれた子どもの手をはねのけてしまうようなことになってしまいかねません。そうなるともう二度と誰にも相談しなくなってしまいます。
相談を受けたら? 大人も学んでおこう
サッコ先生 ですから、生命の安全教育が始まるのにあわせ、大人たちが子どもたちを性被害から守るために必要なことを学んでおきたいですね。相談を受けたら、あなたを信頼して相談してきてくれたんだよというところをベースに、批判などせずただ聞くこと。そして、相談を受けた側も一人で抱えきれないようなことも多いと思います。
その場合、どういう専門家につないだらいいのかを知っておくことも必要です。たとえば、児童相談所の虐待対応ダイヤル「189」や、性犯罪被害者専用相談電話「#8103」、緊急性があるケースを相談できるワンストップ支援センター「#8891」などを知っておいてほしいです。大人たちがそのようなことを知って、子どもを守ることで社会全体が変わっていくと思います。
高橋幸子(たかはし・さちこ)さん
「趣味・性教育、特技・性教育、仕事・性教育」の産婦人科医。愛称は「サッコ先生」。埼玉医科大で医師として思春期外来などで診察に当たるかたわら、全国各地の学校などで年間120回以上性教育の講座を行う。家庭でできる性教育も支援しようと、サイトの監修や本の出版もし、多角的に活動する。著書に『サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』(リトルモア)。
なるほど!
グッときた
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