政府のコロナ対策が直面する「高齢者の命か、子どもの人生か」 学校生活の制約はいつまで?
新規感染者が多い10代 入院の多い70代
東京都の年代別の新規感染者(1週間平均)は2月下旬から6週連続で10歳未満が最多で、常に2割前後を占めた。ワクチン接種率の低さ、既に感染して抗体を持つ割合の少なさが要因とされる。ただし、入院者に占める10歳未満の割合は約2%にとどまった。
対照的だったのが高齢者だ。感染者のうち60歳以上の割合は10%程度だったが、入院者では70%以上を占めた。そうした傾向は4月に入り変化。10歳未満の割合は4月5日までの1週間で、20代、30代、40代に続く全体の4番目にまで下がった。
厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」座長、脇田隆字・国立感染症研究所長は、20代の飲食店での感染増加に加えて、「学校が春休みになり、10歳未満の接触(機会)が減るという要因はあったと思う」と分析した。新学期となり、10歳未満の再増加も懸念される。
子どもの運動能力が低下 肥満は増えた
第6波では、過去最多の感染者と高齢者の重症化で病床使用率が上昇し、各地でまん延防止等重点措置が適用された。文部科学省は2月、学校での感染対策について、「感染リスクの高い教育活動は、感染レベルにとらわれず、基本的に実施を控える」と通達。合唱や管楽器の演奏、調理実習のほか大きな発声や激しい呼気を伴う部活動や他校との練習試合も対象とした。
新型コロナ禍で長引く行動制限は、子どもたちの体に影響を与えた。スポーツ庁が昨年12月に発表した小中学生の体力、運動能力調査では、上体起こしや反復横跳び、持久走などの点数が軒並み低下。背景に運動時間の減少、テレビやスマートフォン、ゲームなど「スクリーンタイム」の増加、肥満の増加があり、スポーツ庁は「新型コロナの影響でさらに拍車がかかった」との見解をまとめた。
「最後は国が決定するという時期に来た」
「極端な話、高齢者や基礎疾患がある人の命と子どもたちの人生とどっちが大事かという議論をしている。本来はどちらも大事でつらい話」。そう話すのは、政府の新型コロナ対策分科会メンバー、大竹文雄・大阪大教授(行動経済学)。
感染抑制と社会経済活動の両立を模索する議論が続くが、大竹氏は「両立できない。一個の最適解があるわけではない」と断言。その上で「新型コロナの流行初期は、行動制限で社会経済を止めるしか対策がなかった。医療体制の整備、ワクチン接種、治療薬開発が進んだ今、分科会は、政府がのめそうな提言ではなく、さまざまな選択肢の効果と影響を示すべきだ」と分科会改革を促す。
分科会の尾身茂会長は8日の会合後の記者会見で、「(社会経済の専門家から)異なる意見が出てきて健康的と思う。無理やりコンセンサスを得るのではなく、選択肢を出して最後は国が決定するという時期に来たのだろう」と改革の必要性を認めた。
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