【選択的夫婦別姓がわかるQ&A③】別姓だと戸籍はどうなる? 制度が崩壊しませんか?

選択的夫婦別姓がわかるQ&A

【疑問6】選択的夫婦別姓制度が導入されたら、戸籍はどうなるのでしょう。

 <答え> 法務省の法改正案によれば、同姓か別姓かにかかわらず、夫婦ともの間の子は、同一の戸籍に入ることになります。

 選択的夫婦別姓制度が導入された場合の戸籍の記載方法について、法務省ホームページでは次のように説明されています。

平成8年1月の法務大臣の諸問機関である民事行政審議会の答申では、別氏夫婦、同氏夫婦いずれについても同一の戸籍に在籍するものとされています。

 つまり、選択的夫婦別姓制度が導入されても、現在と同様、夫婦とその間の子は一つの戸籍に記載されることになります。現在の戸籍と異なるのは、現在の戸籍では夫・妻・子それぞれにつき、下の名前だけが記載されているのに対し、別姓夫婦の戸籍では夫・妻・子のフルネーム(氏名)が記載されるようになるという点だけです。

想定される別姓夫婦の戸籍記載例

 

【疑問7】選択的夫婦別姓制度が導入されると、戸籍制度が崩壊しませんか。

 <答え> 選択的夫婦別姓制度は、戸籍制度の存在を前提としていますので、戸籍制度は崩壊しません。

 戸籍制度は、日本国民の生まれてから死ぬまでの間の親族的身分関係を公に登録し、公証する制度です。現在、結婚すると、夫婦の戸籍が作られ、その間に生まれた子もその戸籍に入ることになっています。選択的夫婦別姓制度が導入されても、そのことに変わりはありません。

 2021年4月の衆議院法務委員会では、「選択的夫婦別姓と戸籍制度の両立が可能かどうか」との質問に対し、法務省の担当者が「戸籍は、日本国民の親族的身分関係を登録、公証する唯一の公簿でございまして、仮に夫婦別氏制度が導入された場合であっても、その意義が失われるものではございません」と回答しました。

 同月、上川陽子法務大臣(当時)も「仮に、選択的夫婦別氏制度が導入された場合でありましても、その機能、また重要性、これは変わるものではございません」と答弁しています。

 むしろ、現在の制度は、別姓での法律婚を希望する人を事実婚に追いやり、事実婚だと夫婦親子が1つの戸籍に編製されないため、当事者からみれば身分関係を公的に登録・証明できず、国や自治体からみれば、戸籍によって誰と誰が夫婦や親子であるかを把握する機能を著しく低下させています。

 選択的夫婦別姓制度が導入されれば、別姓夫婦も法律婚をすることが可能となり、同一戸籍に続柄を記載して登録されますので、「戸籍上の家族」と「実際の家族」を一致させることができます。

 ◆次の疑問は「旧姓を通称使用すれば問題ないのでは?」→記事はこちら

選択的夫婦別姓がわかるQ&A

【子育て世代の疑問に答えます】

 9月の自民党総裁選で争点の一つになった「選択的夫婦別姓」。夫婦が、同じ姓を名乗る(夫婦同姓)か、それぞれ結婚前の姓を名乗り続ける(夫婦別姓)かを選べる制度です。夫婦同姓を法律で義務づけているのは世界でも日本だけで、晩婚化やグローバル化、IT化など時代の変化に伴い、さまざまな不都合が生じています。そして、その不都合を感じているのは、ほとんどが女性。男性の議員や経営者、裁判官らに訴えても理解を得にくい問題でもあります。

 最近よく耳にするようになったけれど、詳しい内容が分からず、「今までと違うのは、なんとなく不安」という人もいるでしょう。衆院選を前に、子育て世代にも身近な疑問を、別姓訴訟弁護団にかかわる弁護士、榊原富士子さんと寺原真希子さんの著書「夫婦同姓・別姓を選べる社会へ」(恒春閣)を基に解き明かします。

家族の絆がなくなる? 周りは分かりづらい?

子どもの姓はどうなる? かわいそうではない?

③別姓だと戸籍はどうなる? 制度が崩壊しませんか?(このページ)

旧姓を通称使用すれば問題ないのでは?

選択的夫婦別姓とは

 夫婦が、同じ姓を名乗る(夫婦同姓)か、それぞれ結婚前の姓を名乗り続ける(夫婦別姓)かを選べる制度。1996年、法相の諮問機関「法制審議会」が導入を盛り込んだ民法改正法案要綱を答申したが、自民党保守派から「家族の絆が壊れる」といった反対意見が強く、国会に上程されないまま30年近くの年月が流れた。以前は別姓を認めていなかった国も男女平等などの観点から制度を是正する中、日本は別姓を選べない唯一の国として取り残されている。2023年に婚姻した夫婦のうち94.5%が夫の姓を選択した。

 別姓を認めない日本に対し、国連女性差別撤廃委員会は再三の改善勧告をしている。日本は、旧姓を通称使用する独自の政策を推進しているが、グローバル経済の中、二つの名前を使い分けるローカルルールとして混乱のもとにもなっている。多様性や公平性なども含めて課題に対応する「DEI」の観点から、経団連は24年6月、選択的夫婦別姓の早期実現を政府に求める提言を発表した。

著者の紹介

写真 寺原真希子さんと榊原富士子さん

◇寺原真希子(左) 東京大法学部卒業後、司法試験に合格。長島・大野・常松法律事務所など東京都内の事務所で勤務後、米ニューヨーク大ロースクールに留学しニューヨーク州弁護士資格を取得。帰国後、旧メリルリンチ日本証券での企業内弁護士を経て現在、東京表参道法律会計事務所の共同代表。2011年に選択的夫婦別姓訴訟弁護団に加わり、22年から弁護団長。

◇榊原富士子(右) 京都大法学部卒業後、1981年から弁護士。婚外子相続分差別訴訟、子どもの住民票や戸籍の続柄差別違憲訴訟などを担当。離婚と子どもに関するケースを多く扱う。2009~14年、早稲田大大学院法務研究科教授。2011~22年、選択的夫婦別姓訴訟弁護団長を務めた。

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