不審者が多い世の中、地域の子どもにどう接すれば? 専門家が解説「防犯のジレンマ」 体調悪そうな子に声をかけたら警戒されて… - 東京すくすく | 子どもとの日々を支える ― 東京新聞

不審者が多い世の中、地域の子どもにどう接すれば? 専門家が解説「防犯のジレンマ」 体調悪そうな子に声をかけたら警戒されて…

石川由佳理 (2024年12月4日付 中日新聞朝刊に一部加筆)
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子どもに声をかけたら「不審者かも」と言われて…(写真はイメージです)

 「散歩中に体調が悪そうな子どもを見かけたので、心配で声を掛けたら『不審者かもしれない』と言われ驚きました。しっかり教育されていると感じましたが、地域の子どもたちとどのように接すればよいのでしょうか」というお悩みが、愛知県豊田市の読者(60)から寄せられました。

 体調不良の子どもを見かけた時はどうすればよいのか、防犯の専門家のアドバイスや読者の意見を紹介します。

「不審者かもしれない」と言われて

【お悩み】先日の夕方、夫と犬の散歩に出かけたら、小学校低学年くらいの子ども7、8人が立ち止まっていました。どうしたのかと尋ねると、1人の1年生が体調が悪いようです。通報するほどの緊急性があるようには見えませんでした。

 まだ小さい上級生が1年生の持ち物を持って歩き始めたので、「持ってあげるよ」と声をかけましたが、返事をしません。別の子から「不審者かもしれないから」と言われ驚きました。

 そうは言っても気になるので、少しの間ついていきました。家の場所を聞いても「不審者かもしれないから教えない」と。しばらくして上級生が自分の保護者を呼び、車で来たようですが、1年生は「知らない人の車には乗らない」と拒否したそうです。

 しっかり教育されていると感じましたが、地域の子どもたちとどう関わったらいいのでしょうか。必要だと感じたら消防や学校に連絡しますが、その時の気温は少し低く、重いランドセルを背負って疲れたくらいに受け止めていました。心掛けることがあったら知りたいです。

専門家から3つのアドバイス 

 「不審者扱いされたとしても、そういう時代だと考えてめげないでほしい」。防犯教室の講師を務める市民防犯インストラクターの武田信彦さん(47)=東京=は、読者の悩みに対して「よく聞く話で、日本における子どもの防犯のジレンマが表れている」と話す。
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市民防犯インストラクターの武田信彦さん

体に触れず、距離を保って観察

 子どもが巻き込まれる犯罪は「子どもだけになる瞬間」に多く発生するため、「地域住民による見守りや助け合いが欠かせない」と武田さんは力を込める。だが、学校などで開かれる防犯教室の多くは、「悪い人」や「知らない人」に気を付けるよう教え、人との交流を遮断させてしまうものが多いという。「地域の見守りや助け合いの文化を根底から壊してしまう」と危ぶむ。

 通学路で体調不良などの子を見つけた場合、次のように対応するよう助言する。

  1. 子どもの体に触れず1メートル以上の距離を保って観察する
  2. 重篤な症状でない場合は学校に連絡。危険度が高い場合はためらわずに警察に通報する
  3. 教職員や警察官が来るまで無理に声はかけず、距離を保ったまま見守る

 地域の子とは、無理にコミュニケーションを取る必要はなく、作業中などに子どもが歩いていたら意識を向けたり、自転車のかごにパトロールプレートを付けたりすることなどを勧める。地域内に大人の姿があることが犯罪防止効果を高めるためだ。

保護者は子どもにどう指導する?

 逆に、保護者は子どもにどう指導したらいいのか。「人との接し方を教えるのがスタート」と武田さん。あいさつしてはいけないというのはやりすぎで、子どもを孤立させ、逆に危険な状況にしてしまう可能性があるという。「あいさつはしっかりするんだよ。でも触られない距離を保つんだよと伝えて」

 相手に違和感を覚えたら「できません」と断り、近くにいる助けてくれそうな人のところまで逃げるように教える。「自分を助けてもらうという意識も防犯教育に欠かせない」

グラフ 全国の「こども110番の家」の数

「こども110番の家」は減少中

 地域内で子どもが逃げ込める場所も減っている。警察庁によると、全国の警察や自治体、教育委員会などが「こども110番の家」といった名称で設置する緊急避難先の数は、2008年度は約209万8000カ所だったが、2023年度末には約144万4000カ所になった。年々減少しており、この15年で3割も減った。

 武田さんは「一戸建てが減ったこともあるが、駆け込まれることがないからやめようと考える人もいる。子どもを守る気持ちがあるという意思表示として続けてほしい」と話す。

読者の声「学校へ問い合わせて」

 愛知県春日井市の女性(35)は、保護者の立場から「学校へ問い合わせて」と伝える。「小さなことでも大きな事故につながる可能性も。先生が気にして見に来てくれることで、今後も下校時に気にかけてくれるようになる」という。また、「発見した大人が動いてくれることは本当に良いことだと思う」としつつも、「知らない人から話しかけられたら、無視するように教育されているのが今の世の中。それだけ不審者が本当に多い」と理解を求める。

 石川県野々市市の女性(50)は、「こども110番の家」などの子どもが身の危険を感じた時に助けを求めて駆け込める場所を伝えることを提案する。「声をかけても頼ってもらえそうにない時に、近くにそういった場所がある場合は、『困ったらあのお店の人に声をかけるんだよ』などと伝えるだけで十分かと思う」

 数年前から自宅前で登校の見守りをしている名古屋市緑区の女性(68)は、地域の子どもとの関わり方について「子どもから声をかけてくれるまで気長に待つ姿勢が大事」と助言する。「通学路沿いのプランターに水やりをしながら、向こうからあいさつをしてくれる子に返すのを続けていると、学校がない日でも声をかけてくれるように。信頼関係がないと子どももすぐに話せない」と指摘する。

 金沢市の女性(59)は最近の子どもたちの態度に戸惑いを感じているという。「孫娘の友達が家に遊びに来ても、誰もあいさつをしない。気づくと家にいてびっくりすることも。話しかけても『はい』『いいえ』くらいで会話にならず、大人を敵視しているように感じる。自分を守るためにはこのくらいしないと駄目なのか。こんなに極端な教育は、子どものためにならないのでは」と疑問を呈する。

 愛知県内の読者(44)は「そんな扱いを受けたら、傷つきとても悲しい気持ちになる。公園で名前や年齢を聞いただけで、不審者情報として一斉に通知が流れる社会で、人間不信になりそう」と嘆く。

元記事:中日新聞 CHUNICHI Web 2024年12月4日

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