選択的別姓の導入待ちきれず… ハワイで「海外別姓リーガル婚」を選んだ60代夫婦のワケとは
「法律婚の成立」認める判決がきっかけ
夫妻は26歳の時から「別姓待ち」の事実婚を続けている。海外婚を考える契機となったのは2021年、米国で別姓のまま結婚した映画監督想田和弘さんと映画プロデューサー柏木規与子さん夫妻が国に婚姻関係の確認を求めた訴訟で、東京地裁が出した判決だった。
東京地裁は「海外の婚姻を日本の戸籍に反映してほしい」という原告の訴えを退けたものの、判決には「海外でその国の婚姻の方式に従い挙行した婚姻は、(婚姻意思があることなど)日本の民法上の実質的要件を満たす限り有効」との記述があった。
つまり、海外で法律婚をすることによって、「日本の戸籍には反映されず事実婚状態に見えるが、法律婚は成立している」と認められるということ。木村さんは「あくまで法改正実現までの『つなぎ』だが、私たちのようなカップルに法律婚の道が開かれた」と感じた。
ハワイならスムーズ ノウハウ紹介予定
日本以外なら世界のどの国でも別姓での法律婚は可能。ただ、一定期間その国内に留まるなど条件がある国もあり、滞在期間に制限がなく、手続きも簡便なハワイでの結婚を選んだ。同性婚も同様の手続きという。
「相続や医療行為に際しての家族同意など諸問題が視野に入り、法的な家族になることは喫緊の課題。一刻も早く法律婚の証拠を残しておきたかったので、やってよかった」と木村さん。手間や費用の問題もあるが、現時点での有効な解決策の一つとして今後、「海外別姓リーガル婚」のノウハウをウェブ上で紹介する予定だ。
選択的夫婦別姓とは
夫婦が、同じ姓を名乗る(夫婦同姓)か、それぞれ結婚前の姓を名乗り続ける(夫婦別姓)かを選べる制度。1996年、法相の諮問機関「法制審議会」が導入を盛り込んだ民法改正法案要綱を答申したが、自民党保守派から「家族の絆が壊れる」といった反対意見が強く、国会に上程されないまま30年近くの年月が流れた。以前は別姓を認めていなかった国も男女平等などの観点から制度を是正する中、日本は別姓を選べない唯一の国として取り残されている。2023年に婚姻した夫婦のうち94.5%が夫の姓を選択した。
別姓を認めない日本に対し、国連女性差別撤廃委員会は再三の改善勧告をしている。日本は、旧姓を通称使用する独自の政策を推進しているが、グローバル経済の中、二つの名前を使い分けるローカルルールとして混乱のもとにもなっている。多様性や公平性なども含めて課題に対応する「DEI」の観点から、経団連は2024年6月、選択的夫婦別姓の早期実現を政府に求める提言を発表した。
【子育て世代の疑問に答えます】
9月の自民党総裁選で争点の一つになった「選択的夫婦別姓」。夫婦が、同じ姓を名乗る(夫婦同姓)か、それぞれ結婚前の姓を名乗り続ける(夫婦別姓)かを選べる制度です。夫婦同姓を法律で義務づけているのは世界でも日本だけで、晩婚化やグローバル化、IT化など時代の変化に伴い、さまざまな不都合が生じています。そして、その不都合を感じているのは、ほとんどが女性。男性の議員や経営者、裁判官らに訴えても理解を得にくい問題でもあります。
最近よく耳にするようになったけれど、詳しい内容が分からず、「今までと違うのは、なんとなく不安」という人もいるでしょう。衆院選を前に、子育て世代にも身近な疑問を、別姓訴訟弁護団にかかわる弁護士、榊原富士子さんと寺原真希子さんの著書「夫婦同姓・別姓を選べる社会へ」(恒春閣)を基に解き明かします。
なるほど!
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