〈坂本美雨さんの子育て日記〉89・先を見通す力がついてきた娘

(2025年5月28日付 東京新聞朝刊)
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友人のスタジオにて、すてきなピアノを弾かせてもらってうれしそうだった娘

坂本美雨さんの子育て日記

「おなかをすかせておきたいから…」

 娘が、お菓子をつまむ手をとめて「おなかをすかせておきたいから、やめておこうかな」と言う。思わずええっ?!と二度見してしまう。唐揚げが楽しみだから、と。そう、この日は友人の料理家・執筆家の麻生要一郎さんのおうちでごはんを食べる予定で、娘が一緒に行く日は大好きな大きい唐揚げを大皿いっぱいに揚げてくれるのだ。

 おなかいっぱい食べたいから、お菓子をセーブする、というのは新しいフェーズだな、とびっくりしてしまう。「子どもは目安として9、10歳ごろから先を見通せる力がでてきます」と書いてあるのを見たことがあるが、この時期特有の脳の成長は、このように現れるのだなぁ。

 最近、娘がピアノを習い始め、毎朝15分練習するという約束をした。起きてから家を出るまでの時間配分を自分で考え、余った時間でテレビを見ることをモチベーションに、少し早く起きる、という計画性も少しずつ出てきた。私自身が毎日の練習をできたためしがないので(娘には要求しておきながら…)えらいなぁと思う。

 また、「今日お弁当のショウガ焼き、汁がちょっと漏れてたよ」と報告をくれながら「ちゃんと味をつけたいから汁少し入れてるんでしょ? そういう時はさ、お肉を前の晩から漬けたりするといいよ」とアドバイスをくれたりもして、面食らう。ははぁっその通りでございます…!となるしかない。

先を見通せるのに、行動に移せない私

 そういえば、これまでまめにアプリに届いていた担任の先生からの連絡が4年生になったら少なくなっている。「次の日に特別に持参するものなどは、基本的には親御さんに通達せず、子ども自身が準備をできるようにサポートしていきます」とのことで、親としてはまだドキドキするのだが。

 先を見通す力は、私はあるほうではないかと自負している。今日誰々に会うからあれを渡せるように、とか、この衣装は2カ月後のあのライブに合いそうだから借りておこう、など、先の見通しを求められる仕事でもある。しかし、なぜか全てギリギリ、忘れ物だらけの人生である。それは、先に必要なことがわかっているにもかかわらず、なかなか行動に移せないから。見通せているのに、やらない。…致命的である。

 お弁当のお肉を漬けておくことも前の晩にたしかに脳裏をよぎっていた…が、寝てしまった。このぐうたらさは、いったい何歳くらいに成長をするのだろうか。

坂本美雨(さかもと・みう)

 ミュージシャン。2015年生まれの長女を育てる。SNSでも娘との暮らしをつづる。

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  • カンレキ スギコ says:

    子育ては、ちょっと不幸でちょっと不自由なくらいが丁度いい、と尊敬する外山滋比古氏の著書をバイブルに、試行錯誤の毎日だったことを、懐かしく思いだしました。

    昨年まで、小学校の教諭として多くの子ども達に接してきましたが、毎日が楽しいと感じることが生きるということ、と伝えました。ほめられる嬉しさ、認められる安心、失敗しても大丈夫と許される居場所があること。

    ありのままの、シンプルな日常。今の時代、何かが崩れかかっているような危機感があります。カンレキ過ぎた私達、閉塞感の漂う社会の中で、オアシスになれたらと、思います。

    カンレキ スギコ 女性 60代

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