夫に怒っても限界が… 産後クライシスの社会的な背景、どう変えていく?〈座談会・私たちの産後クライシス③〉

 「座談会・私たちの産後クライシス」では、座談会参加者の皆さんが感じた「産後クライシス」について、具体例を紹介しました。根強い性別役割分担の意識や、働き方、夫婦間のコミュニケーションの取り方など課題は多くあります。座談会では、個々の家庭で、社会全体で、変えていけそうなこと、変えていくべきことなども考えました。

夫に雷を落としても変わらない

編集チーム 前回、最後にアサミさんが話した「社会が悪い」というのはどんな意味ですか?

アサミさん 40代会社員。3歳の長男の出産を機に夫と3人で都内で暮らし始めた。「はからずも高齢出産。息子に振り回されながら過ごしています」

アサミ 男性が子どものころから受けてきた教育とか、社会の構造とかが、どうしても家のことをやれない、やらないようになっている。法律で定められている産休のように男性の育休を義務にするとか決めてくれないと、と思います。せっかく子どもが生まれていい時期に一緒にいられないのはもったいない。男の人が変われるチャンスって人生でそうそうないと思うんですけど、子どもが生まれたときくらい、もしかしたら変われるかもしれない。人生を豊かにできるチャンスなんだから。

 そのためにも、例えば「10歳未満の子がいる場合は夫婦とも5時には退社させなければいけない」と企業に課すとか、社会の仕組みが変わらないと。月1回、夫に雷を落としていても変わらない。

読者のコメント⑦社会的な背景

 育児がどこか人ごとの夫。仕事から帰れない夫。家庭だけでは解決できない社会的な背景も。産後クライシスの記事に寄せられたコメントを抜粋して紹介します。

◇毎日終電…働き方改革って何?
 出産後ずっとワンオペ育児。夫は毎日終電で、朝は比較的ゆっくりな出勤のため、帰ってきたらケータイでゲームか漫画読んでそのまま寝落ち。朝起こすまでほとんど起きない。少しでも早めに寝て、早めに起きて、自分のことは自分でしてほしい。土日もどちらかはだいたい仕事。働き方改革って何? 2人目を妊娠中だが、育休とってほしいと言っても「多分無理」。すごく不安。

男性が「問題なし」と思う理由
 男性って仕事から帰ってきて、目の前に元気な嫁と子供がいるから、その場面だけ見て「問題なし」と思うのでは。しんどいと言われないと気づかない。家事を手伝ってほしいことも察せない。仕事で疲れていると自己主張しているのを無意識に察してしまう女性はSOSも出しにくくなり…。「男性はこういうもの!」という事柄を書いた紙を産院でもらうと、あきらめてその後のしんどい生活を受け入れやすくなるかも…。それか「家に帰ったら奥さんを大切にして子育てを手伝わなければならないっ!」と仕事場で命令してほしい。命令する上司も家庭かえりみずの時代の人なんだろうけど…。上が変わらんと下は変わらん!国規模で変わってくれ!

外国人の夫は「やるのが当たり前」
 夫は外国人で、お国柄、子どもの扱いにも慣れてる。子育てはご近所や親戚、友達などみんなでやるのが当たり前の雰囲気。だから産後は私の方が夫から赤ちゃんとの関わり方を学んだ感じ。貧しい国の出身で、母国の家族を養うために日本に働きに来た人だけど、心は日本人の方がずっと貧しいなと思った。

◇日本人の「お母さん」という意識
 数々のコメントに心が痛くなりました。そうそう、そうなんだよ!って。この不公平感はたぶん、妻も夫も同じ大人なのに、妻だけ大人の対応が求められるということなんだろうな。なぜなら妻は「お母さん」だから。日本人に無意識的に刷り込まれてるこの意識を変えない限り、母親の負担はなくならない気がする。

育休OK出たのに白紙に
 元々同じ会社だったので、夫の職場の人間や労働環境がブラックなのは分かっていた。心拍確認後すぐ報告し、里帰りしない予定なので会社に頼んで、泊まり勤務無し・育休も取得可能という事で会社がOK出し書類も提出し受理してもらった。しかし産後やっぱり人が足りないからと育休は無し、退院すぐ泊まり勤務ばんばん入れられた。やっぱりかと落胆した。

思っていることを全部、言おう

編集チーム 個々の家庭だけでは限界がありますよね。私は息子2人を育てていますが、やっぱりこの子たちの育て方が大事だな、といつも思います。変な先入観を植え付けないようにするというか。夫婦でフラットな関係で子どもを育てていくっていうようなのが当たり前にしていかないと、いつまでたってもこれを繰り返すんじゃないかなと。そこは責任をすごく感じます。

 そして、専業主婦のママならではの大変さもあると思います。

マリコさん 30代主婦。3歳の長女と夫と都内で3人暮らし。長女は幼稚園に通わせる。「数年ごとに転勤が。働いているママたちをうらやましく感じることもあります」

マリコ 夫に「自分の態度を振り返ってみたら」と言われて離婚も考えましたが、一人で育てていけるのかと踏み切れずにいました。娘には「手に職を持ちなさい」と言いたいなと思っています。

 でも1年くらい前に、いろいろ考える中で、私も思っていることを全部言おう、と思うようになりました。言われて嫌だなと思ったらすぐに伝えるようにしていたら、だんだん夫も昔ほどは…。最近は少しずつ変わってきた気がします。

先輩風を吹かせたら自覚も出た

編集チーム 相手が何か言ってきたら、その場でこちらも思っていることを言って反論するんですか?

 

マリコ はい、その場で言うようにしています。前はあまり言わずにためてたのが、夫から見たらイライラして不満げに見えていたのかもしれない。だいぶ夫婦仲が回復してきたように思います。

 

ハルカさん 40代フリーのイラストレーター。都内で夫と、小学4年と幼稚園年中の2人の男の子と暮らす。「夫は最近ようやくパパらしくなってきたような…」

ハルカ うちは夫が忙しくてなかなか言うチャンスがなくて、流されて、あきらめてきました。でも、夫が31歳のときに生まれた上の子が10歳になって、周りで子どもが生まれた知り合いが増えて、先輩風を吹かせたいのか「嫁を気遣えよ」って。それで私にも「ちょっと休んだら」とか「ひとりの時間を取ったら」とか言うようになりましたね。

読者のコメント⑧夫がようやく…

 何もしなかった夫が変わった、というコメントも産後クライシスの記事に寄せられています。「あきらめないこと」も大事なようです。抜粋して紹介します。

「育休取らないなら」が効いた
 1人目の際、事情により両親に頼ることができず退院後すぐワンオペに。自分なりに頑張ったところ産後うつを発症。今でもトラウマだが、限界の自分を夫に見てもらえたことは良かったのかも。その後は何かと協力的に。ただ、夫に2人目がほしいと言われた時は、育休をとる気がないなら作らないと話した。正直期待は薄かったが、2人目の出産時に2カ月の育休をもらってくれて本当に助かった。大変な新生児期(上の子のフォローも)を夫婦ともに経験できたことが、何よりうれしかった。一時は1人で子供を育てる覚悟もしたくらい夫への愛は冷めていたが、今は感謝の気持ちで日々頑張ろうと思える。

箇条書きメモに「ごめんね」
 第2子をどうするか話し合っていた時、長女の出産後に体調や家事が大変だったことを箇条書きで書いたメモを読みながら話し合った。夫は「こんなにやることがあったんだね。ごめんね。なんでもするから一緒に頑張ろう!」と言ってくれた。生後7カ月ですが、お世話は夫一人ですべてできるので、外出もできて何とか乗り切れそう。

2人目出産時、夫が「任せとけ」
 昨日2人目出産。なのにその夜から長女が発熱。自営業の主人は今日は午前だけ仕事の予定だったが、1日休みにして、娘の通院と看病をしてくれている。今までは娘が体調を崩すと丸投げされていた感があり、つらくて泣いたこともあったけど、今回は「任せとけ!何とかする!」と言ってくれて助かっている。そういえば、娘が小さい時はどんなに泣いても起きなかった主人が、いつの間にか、娘の夜中のトイレで起きて連れてってくれるようになったのも成長だなぁ。妊娠中は自分のトイレが頻繁すぎて、娘のトイレにまでつき合いきれなかったからほんとに助かった。

1人目であきらめなくてよかった
 出産し退院して家についた途端、「ラーメン作って!」と言っていた夫。夜泣きでヘロヘロで赤ちゃんおんぶしながらやっとの思いで夕食作ったのに「つまみは?」と言われたことも。そんな夫も少しずつ成長し、今や3児の父となり、育休も取得し、家事や育児にも積極的になった。ひとり目であきらめなくてよかった。

離婚された同僚を見て改心
 第1子の時、自分はネットや育児書を見ながら必死で育児してるのに、夫は指示待ち。「何していいか分からないし、間違ってると怒られるから」と当事者意識がなかった。不安と孤独の毎日なのに、夫は仕事が忙しくて帰りは遅く、私は毎日泣いていた。部署異動してほしい、育休取ってほしいと訴えたけどはぐらかされた。仕事が大事といっても心身ボロボロの妻より大事なのか?とガッカリした。家庭より仕事を重視した結果、離婚された同僚を目の当たりにして、考えが変わったようで、2人目の時はかなり子育てに積極的になり、私の入院中も上の子と2人きりで過ごせるくらいになった。大きくなって一緒に遊ぶのが楽しくなったとのこと。

ハルカさん 最近ようやく父親としての自覚が芽生えたような気がします。ただ、家事をやっても、どうしても「作ってやった」「掃除してやった」みたいな感じが出ていて。こっちも、チャーハンだけ、炭水化物だけ、みたいなメニューが気になったりはしますね。

 仕事が忙しくてあまり家にいないと、子どもの成長ぶりがよく分かっていなくて、接し方がとんちんかんということにもなります。「それはもうできるよ」とか、しなくていいことをしちゃったりとか、それでさらにストレスがたまります。

 

編集チーム 不満や要望、いたわりとか、やっぱり言葉にすることは大事ですよね。家庭内でできることと、社会の仕組みや意識を変えていくこと、両輪で今進めていって、子どもたちが子どもを持つかもしれないころには、いろいろなことを変えていきたいですね。

コメント

  • ②夫が変わった体験について お互いに両親が仲人になり付き合い始め7ヶ月で結婚しました。付き合っている頃から情緒が不安定だなと感じつつも結婚したら変わるだろうと安易に考えスピード婚。婚約中に妊娠し、結
    やま 女性 20代 
  • こうやって女性が陰で集まって対策や話し合いという名の愚痴会議を開くのは昔も今も全く変わりませんね。 男性に変わってほしい、その為に必要で具体的な行動をしない限り、いつまで経ってもこの問題は解決しない
     --- ---