岸田首相の「育休中リスキリング」発言に批判噴出 「育児を軽く見ている」「それより労働環境の整備を」

柚木まり、曽田晋太郎 (2023年1月31日付 東京新聞朝刊)
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衆院予算委で答弁する岸田首相=30日午前、国会で(朝倉豊撮影)

 岸田文雄首相が育児休業中の人らのリスキリング(学び直し)を支援する考えを表明したことに、批判が相次いでいる。首相は「異次元の少子化対策」を掲げるが、SNSを中心に「育児の大変さを分かっていない」などと怒りの声が上がる。首相は30日の衆院予算委員会で「決して育休、産後を甘く見るということではない」などと釈明に追われた。

自民からも「誤った育休の認識」

 「育児中などさまざまな状況でも、主体的に学び直しに取り組む方々をしっかりと後押ししていく」。首相は27日の参院代表質問で、自民党の大家敏志氏が産休・育休中のリスキリング支援を提案したのに対し、賛意を示した。

図解 「育休中にリスキリング」を巡る自民議員と首相のやりとり

 これに対し、SNS上では「なぜ産休という大変な時に学び直しまでしなきゃならないのか。それより産休明けできちんと同じポジション・賃金に戻れる労働環境整備を」(ジャーナリストの長野智子氏)などの批判があふれた。

 首相の認識を問題視する声は与野党に広がる。30日の予算委で自民党の鈴木貴子氏は、育休を取得した男性の3分の1は育休中の家事・育児が2時間以下だとする調査(日本財団×「変えよう、ママリと」調べ)を紹介し「誤った育休の認識を持つ人たちこそ学び直しが必要」と苦言。立憲民主党の山井和則氏も「育児を軽く見ている。現実とずれた発想」と指摘した。

女性の雇用問題は構造的なのに

 首相は「私も3人の子の親だ。子育てが大きな負担だと目の当たりにしたし、経験もした」と弁解した上で「本人が学び直しを希望した場合には、後押しできる環境は大事だ。指摘は謙虚に受け止め、丁寧に、誤解のないように発信していきたい」と述べた。

 名古屋大の武田宏子教授(政治社会学)は首相の答弁について「構造的な女性の雇用問題は個人の努力では解決できないのに、労働力として生産性を高めることが重視されるばかりで、子どもと生活を共にするという視点が欠けている。国は子どもを持つと決めた人がその生活を楽しめるよう支援すべきだ」と語った。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年1月30日

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