娘が吃音で高校を休みがち…どう声をかければいい? 当事者や専門家からアドバイス 「落ち着いて話して」ではなく…

加藤祥子 (2025年10月22日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
 高校2年の次女に発話障害の「吃音(きつおん)」があり、言語聴覚士に診てもらったり、自助グループに参加したりすることを促すが、思春期でもあり、やる気が出ない。本人が吃音と上手に付き合うには、という悩みが愛知県岡崎市の読者(52)から寄せられました。10月22日は「国際吃音啓発の日」。街頭活動もする自助団体のメンバーや専門家の声、読者の意見を紹介します。
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吃音の啓発活動をする名古屋言友会のメンバーら=名古屋市中村区で

 【お悩み】高校2年の次女には言語障害の「吃音(きつおん)」があります。小学校高学年の頃から、話す言葉を選んだり、会話するのを諦めたりしていました。高校に入学し、1年間は楽しく過ごせましたが、その時も聞く側に徹していたようです。進級で友達と離れ、今は多くの時間を1人で過ごしているようです。

 「吃音がなければ友達もたくさんつくっていろいろな話をしたかった」と今は何に対してもやる気が出ず、学校も休みがちに。娘は「先生には絶対言わないで」とも言っています。

 言語聴覚士に診てもらったり、自助グループに参加したりすることを本人に促しますが、思春期でもあり、消極的な考えになっています。本人が吃音と上手に付き合って、本当の自分を出すことができるようになるにはどうしたらいいでしょうか。

「分かってくれる人がいると安心できた」

 吃音は発話障害の一つ。例えば「お、お、おはよう」と言葉の一部を繰り返したり、「おーはよう」と不自然に伸ばしたりする。

 小学校の通級指導教室を担当する愛知県の女性(47)は「頑張りすぎて、休みたい時なのかも」と推測する。「吃音があってもなくても大切な存在だと伝えて。『何かあったら聞くよ』という姿勢は大切」

 長男(21)に吃音がある名古屋市の女性(51)は、最初は「落ち着いて話してごらん」と促していた。しかし、言語聴覚士から助言され、長男のペースに合わせて話を聞くように。「それがあなたの話し方。気にしないで話せばいいよ」と伝えてきた。「(家では)本来の自分を取り戻す手助けをしてあげて」

 当事者からの声も。愛知県岡崎市の高校3年の女性は周りに知られるのが嫌で、目立たないようにしていた。両親の勧めで、高校入学前に言語聴覚士と、自分が周りにしてもらいたいことなどを考えた。「分かってくれる人がいると安心できた。専門家に相談すると新しい道が開けるかも」

言語聴覚士「訓練だけでなく心理面を…」

 「子どもは不安と何とかしたいという2つの気持ちを行ったり来たりしている」と話すのは、言語聴覚士で、吃音がある人の支援に詳しい金沢大の小林宏明教授。保護者には「心配していることを継続的に伝えることが大事」とアドバイスする。

 支援で要となるのが言語聴覚士で、主に発声や発音の困難さを和らげる訓練をする。合う方法を粘り強く見つけるが「個人差が大きく、必ずしも(訓練の)効果が出るとは限らない」。

 このほか、本人や家族へ、日常生活を円滑に送るための環境調整や周囲との関わり方も助言する。例えば、学校の発表活動でスライド投影を許してもらう方法などを提案する。

 心理面へのサポートも欠かせない。本人の気持ちをくみ取り「吃音があっても大丈夫」と、自身の捉え方を変えていくことを促す。「発話をなおすことだけを考えると追い込まれてしまう。これらを組み合わせていけるといい」と提案する。

自助グループ「言友会」悩みを語り合える

 全国各地に当事者の自助グループ「言友(げんゆう)会」がある。名古屋市や愛知県内に住む当事者向けの「名古屋言友会」には、大学生~80代の約70人が所属。毎月2回の例会で就職活動の面接の乗り切り方や恋愛の悩みなどを語り合う。

 会長の上條祐也さん(34)は大学3年生で入会。当時、大学内のイベントを企画する団体に入っており、メンバーから「何を言っているのか分からない」と言われ悩み、就職活動も不安だった。言友会で社会人の先輩たちに出会い「この先どうにもならないと思っていたけれど、そんなことはないと思えた」。

 名古屋言友会は啓発活動のほか、毎年夏休みと春休みに、20代までの子と保護者に向けたイベントも開催。月1回、X(旧ツイッター)で音声配信も行う。このほか、保護者向けの会も各地にある。

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