<記者の視点>親として直面した公立小中の教員不足 ブラックな労働環境、もう限界では

(2019年11月18日付 東京新聞朝刊)
 関東の1都6県で本年度当初、配置すべき教員が少なくとも500人は足りていなかった実態を10月20日に報じた(先生が足りない 関東の1都6県の公立小中で年度当初500人 育休や病休の代理が見つからず)。産育休や病休の教員に代わる非正規教員が足りないというのが直接的な原因だが、根本には教員の働き方がブラックだという問題がある。年度途中に急な休職などで欠員が生じているケースもあり、事態はより深刻とみられる。
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小林由比記者

新卒の先生が6月に「自信なくなってしまった」

 私は6月、都内の公立小に通う次男(9つ)の担任が、心身のバランスを崩して辞めてしまう事態に直面した。20代の新卒の先生だった。新学期の保護者会で、どうか教員としての一歩を順調に踏み出してほしい、と親のような気持ちであいさつを聞いていた。

 それだけに、1学期のうちに先生が学校に来られなくなるというのはショックだった。校長によると、毎晩遅くまで授業準備をして、直前まで運動会の準備にも熱心に取り組んでいたそうだが、「子どもたちの前に立つ自信がなくなってしまった」と話し、最終的に辞職したという。後任の着任まで数週間は、副校長が担任に入った。

重い負担…校長も苦悩 「削れない学習が多い」

 臨時保護者会では、担任が急にいなくなることで、授業や子どもたちの気持ちへの影響を心配する声が次々と上がった。若手の先生を学校が支えられていないのではないかという疑問や、運動会など行事の負担が大きすぎるのではないかという声も。先生たちが日々の授業にゆとりを持って取り組めるようにしてほしい、子どもと話したり遊んだりする時間を大事にしてほしい、という意見も多く出た。さらに業務効率化を進めたいと話した校長は「ただ、削ることができない学習内容もとても多い」と説明。現場の限界がにじんでいた。

 取材で実態を語ってくれた先生たちも、まずは今の業務の過密状態を改めるべきだと口をそろえた。学力テストや体力テスト、英語や道徳の教科化、プログラミング教育の導入…。「子どものため」という掛け声の下、学校に求められる仕事は増え続け、今や容量オーバーは明らかだ。

公立校の教育の質=社会の土台 もはや崩壊寸前

 公立学校の教職員の働き方改革の一環として、政府は年単位の変形労働時間制の導入を検討している。繁忙期に勤務時間が増えても時間外労働と見なさず、その分の休みを夏休みなどに付け替える案。でも教員などからは「見かけ上の労働時間が減るだけだ」などと批判が上がっている。

 教員の働き方を適正にすることが急務なのは、先生自身が健康や心の余裕を保つことが、教育の質に直結するからだ。誰でも通える公立学校の教育の質を担保することは、この社会の土台をつくっていくことではないか。すでに教室に穴があいていることを重く受け止め、国は膨らみすぎた教員の仕事を減らした上で、人員増についても真剣に考えるべき時だ。小手先の「改革」ではもう、公教育の崩壊は止められないレベルまで来ているように思う。

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  • 匿名 says:

    人を育てる職業に就きたいと純粋に考える人もいるのに、そんな考えだけではまともに働けない状況が本当に残念で勿体無い。
    教育費を削って教員を搾取し、子どもを適切に教育しないという国の方針は、すでに結果が現れていると思う。
    日本は今、世界の中でどのような位置付けがされているのか?関心を持つ人がどれだけいるのか?尊敬されるような文化や価値がどれほど残っているのか?
    喧しく愛国を叫ぶだけでは生き残れないのは明らか。

  • Mai says:

    スイスで子育てをしています。主人が公立高校の教師です。教員不足はここでも大きな問題です。

    スイスでは教員の給料は高く、金融関係に並んで安定職のイメージが強いのですが、おそらくどこの国でも同じく、激務なので人気のない職業でもあります。燃え尽き症候群になる方もとても多いです。心身共に健康をたもつためのバランス感覚をとても要求される仕事だと思いますが、日本では一人の先生が一クラスを受け持つ中で、自分も客観するのは至難の技だと思います。小学校の先生など、ご自分の家庭とどのように両立されているのでしょうか、頭が下がります。

    激務を解消する方法でしょうか、こちらでは、一クラス(20〜22人)を二人の先生が分担して受け持つのがほぼ普通になって来ています。これに加えて、授業について来れない生徒にサポートが必要と判断された場合には、定年した元教員がアシスタントとして加わったりするようになってきました。また、地域で差はありますが、オンラインのサポート(先生が教科ごとに内容をアップデートしたモノ→教科書の出版社が用意したオンライン学習材料をアップする:教員が自分で問題を制作しないで済む)もコロナのロックダウン以来定着しました。

    親としては現場の生の授業が一番楽しいものであってほしいと願いますが、その実現には、その社会がどれだけ教育=社会の未来という視点を持っているかに左右されると思います。

    Mai 女性 40代
  • 匿名 says:

    公立中学校教職2年目の息子を持つ母親です

    2年目にして、担任、部活顧問、科目主任、生徒会担当をしています

    せめて部活は外部顧問にできないのでしょうか
    部活は時間外労働です
    しかも賃金の出ないボランティアでしかありません
    休みも労力も削られ、事故が起これば責任問題で叩かれる

    過労死しないか心配です

    新卒で一緒に赴任した先生の一人は、一年も持たず心身ともに不調をきたし退職しています

    子供のためと言う精神論で、教職のブラックさを許容しないでください

    息子の平均睡眠時間は4時間です

      
  • 匿名 says:

    カナダに留学した高校生が、先生が授業中にバナナ食べてたし、日本よりずっと気楽そう!と驚いていました。
    先生がたくさんの生徒をみるので教育はいつまで経ってもトップダウンの軍隊式で、子どもを管理するために変な校則もそのまま。一部のよくできる子を除けば大学に入っても考える力は全然ついていません。先が恐ろしくなります。早く改善してほしい。

      
  • 匿名 says:

     勤続28年の中学教員です。毎日毎日毎日毎日忙しいです。忙しくない日はありません。忙しくない人もいません。トイレに行く暇もありません。
     私たちには休憩時間がありません。昼休みは急いで教室へ行き昼食指導しながら食べ物を口に入れます。子供たちの遊び道具の貸し出し、図書室の見守り、生徒指導、校舎の見回り。職員室に座っている人はいません。
     私の市ではもうすぐ弁当が給食に代わる予定です。狭い教室で給食の配膳と指導という仕事がまたプラスされます。配膳員を雇い、食堂を作ってくれれば教員が関わる必要は無いのに、国も市もその仕事を無料で使える教員に丸投げです。「食育」という都合の良い言葉で私たちに押し付けます。
     限界です。本当に限界です。どうしたら私たちの言葉は届くのでしょうか。

      

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