給食中のおしゃべり禁止「もぐもぐタイム」小学校で導入広がる 食べ残し減る…でも楽しい?

(2019年12月22日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
 
 「もぐもぐタイムがある娘の学校の給食が楽しくなさそう」。埼玉県内に住む女性(43)から、小学1年の長女を心配する声が本紙に寄せられた。「もぐもぐ」は黙って食べる時間。調べると、少なくない学校が導入しているよう。導入する小学校を訪ねてみた。 

給食時間に配膳する子どもたち=東京都板橋区の区立徳丸小学校で

保護者が見学してびっくり「会話が禁止!?」

 投稿者の女性は、小食の長女が給食をきちんと食べているか心配で今夏、給食の様子を見学した。最初の10分はもぐもぐタイム。児童が授業と同じく机を前に向けたまま、無言で食べる給食に衝撃を受けたという。「会話を禁止し、早食いを促すのが食育なのでしょうか」と心配する。

 もぐもぐタイムといえば、2018年冬の平昌(ピョンチャン)五輪で銅メダルに輝いたカーリング女子選手の試合中のおやつで有名だが、実は近年、学校給食では定番の取り組みのようだ。

千葉市は2015年ごろから推奨 咀嚼力UP

 千葉市では、栄養士や栄養教諭らでつくる市学校栄養士会が2015年ごろから、咀嚼(そしゃく)力を向上させ、消化を良くするとして、もぐもぐタイムを推奨している。

 千葉市立宮野木(みやのぎ)小は、それに先立つ2013年度から全校で導入している。約30分の食事時間の最初の5分間で、クラシック音楽のCDを流している。1年生の教室をのぞくと、子どもたちは向き合って静かに食べていた。同校の栄養士西沢裕子さん(51)が数年前に前任校で調査したところ、もぐもぐタイムを取り入れていた学級ほど食べ残しが少なかったという。

「栄養より楽しむこと」会話重視の学校も

 もぐもぐタイムは2005年にはすでに岡山県の教員らによる給食指導の手引書に登場。2008年に学校給食法で食育推進が規定されて以降、給食指導の手法として広がった。

 東京都教育委員会の担当者は「実践校の数は把握していないが、児童・生徒の健康づくりに功績があるとして、昨年度、もぐもぐタイムを含む食育などに取り組む小学校を表彰した」という。ただ、給食指導の方法は学校次第。対照的に「効率的な配膳で食事時間を確保し、ワイワイしゃべりながら食べている」というのは、東京都板橋区立徳丸小学校で2年生を受け持つ林真未教諭。過去に子育て支援活動をしていた経験から「偏食しても健康に問題なければいい。食事で大事なのは栄養ではなく楽しむこと」との持論にたどりついた。

専門家の見解は? 低学年には必要だが…

 専門家はどうみるか。

 お茶の水女子大基幹研究院の赤松利恵教授(栄養教育)は「低学年だとおしゃべりに夢中になり、中には食事中に教室を歩き回る子もいる」と話し、特に低学年では黙って食べる時間は必要という。ただ「食べないと○○させない、というやり方は逆効果」と指摘。学校でも家庭でも、子どもが苦手なものをおいしそうに食べる姿を見せ、「食べてみよう」というタイミングを広い心で待つことが大切だという。

 人前での食事に不安を感じる人たちなどの相談に乗る「日本会食恐怖症克服支援協会」代表理事の山口健太さんは「『静かに』『全部』食べないと、という緊張のあまり、かえって食が進まない子もいる」と話す。山口さんは、高校時代の部活動で身体作りのための食事を強要され、人前で食事ができなくなった経験から、同じ悩みを抱える人の相談に応じている。子どもの給食について気になることがあれば、「先生に給食のことを話した方がいい?」と子どもに聞いた上で、手紙などで、緊張すると食事がのどを通らない可能性や、わが子にしてほしくないことなどを手紙などで学校に伝えるよう勧めている。

 保護者の焦りや不安は子どもに波及する。「保護者が『給食全部食べた?』と聞くのをやめたら食べられるようになった子もいる」と山口さん。子どもの成長を信じて見守ることも大切だ。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年12月22日

コメント

  • 私は、コロナ禍の給食を経験しました。私の小学校では、給食の時間に「もぐもぐタイム」のようなものはなかったのですが、コロナ過での給食はずっと「もぐもぐタイム」。めちゃくちゃ悲しかったことを覚えています。
    中二です。 女性 10代 
  • 今まで楽しく食べていた給食がいきなり静かで退屈なものに変わってしまって最初はとても悲しかったです
     男性 10代