五輪の卓球台、脚の一部を作ったのは特別支援学校の生徒たち 駅に展示された木工作品がきっかけで…

鈴木みのり (2021年9月1日付 東京新聞朝刊)
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東京五輪・パラリンピックで使用された卓球台(三英提供)

 東京五輪・パラリンピックの卓球競技で使われている卓球台。これらは、知的障害がある子どもが通う千葉県立特別支援学校「流山高等学園」(流山市)の生徒たちが制作に携わった。2019年12月ごろから約2カ月間、流山市内の卓球台メーカー「三英」からの依頼を受けて脚部の一部を担当。当時の生徒は大舞台に関わった経験を、「一生に一度とないこと」と話す。

メーカー社長「この技術あるなら」と依頼

 加工を担当したのは、流山高等学園工業技術科で木工製品の製作を行う木工コースの当時2年の約10人。卓球台を支える4本の脚部を覆う高さ約10センチ、長さ約60センチの木製カバーを制作した。

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卓球台の脚部のカバーを制作する生徒ら=2020年2月、流山市の流山高等学園で(三英提供)

 同校が三英からカバー制作の依頼を受けたのは2019年12月ごろ。同校の正岡嗣啓(つぐひろ)教諭(62)によると、流山市内の駅に展示されていた生徒の木工作品を見た同社の社長が、「この技術があるならば」と作業を頼んだという。

 正岡教諭は「五輪の卓球台は完成度が高くなければいけないから無理」と思ったが、同社と相談し、作業内容を簡単にすることで引き受けた。当時の生徒の一人で現在は住宅設備会社の社員として工場勤務をする鈴木仁さん(18)=野田市=は、「話を聞いた時は呆気(あっけ)にとられたが、東京五輪に携われると思って気分が上がった」と振り返る。

2カ月で20台分「すごいことだと思う」

 週4回、授業時間を利用して4つの木片を接着剤でつなぎあわせ、1つの脚部を作る作業を繰り返した。少しでも気を抜くと、接着剤が木片に付く。鈴木さんは「手が震えました」。生徒らは約2カ月で20台を超える卓球台の脚部のカバーを完成させた。

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卓球台制作に携わった当時を振り返る鈴木仁さん(右)と正岡嗣啓教諭=流山高等学園で

 正岡教諭は「五輪で使われる卓球台を請け負ったということで正確に仕上げる責任感を培うことになったのでは」と話す。鈴木さんは「五輪やパラリンピックに出るのは、本当にすごい選手たちばかり。(制作に携わったのは)すごいことだと思います」と話した。

 パラリンピックの卓球競技は9月3日まで開催される。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年9月1日

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