子どもの五月病とは? 新生活のストレスが心身の不調に 4つの兆候と親が取るべき対応は

植木創太 (2022年5月13日付 東京新聞朝刊)
 ゴールデンウイーク(GW)明けは、4月からの新生活に慣れようと頑張ってきた子どもたちが心身の不調を訴えたり、登園や登校を渋ったりしやすい時期。いわゆる「五月病」を深刻化させないためには、周囲が早めに気付いて対応することが大切だ。子どもの心理や注意したい兆候について、親子の悩みに詳しい専門家や精神科医に聞いた。

イライラ、暗い表情、疲労感、生活習慣

 「親は五月病のような症状を『怠けている』と考えがちだが、それは逆。真面目な子ほど連休を機に緊張の糸が切れやすい」。6000組近い親子の相談を受けてきた一般社団法人「子育てコーチング協会」(東京)の代表理事、和久田美佳さん(51)=水戸市=は、教員経験を踏まえて指摘する。

 新年度が始まって1カ月余り。クラスや担任が替わるといった環境の変化を受けとめ、前向きに取り組んでいるように見える子どもたちだが、実はストレスをため込んでいる。この時期の行き渋りは不登校につながる例が少なくなく、和久田さんは「小さな変化を見逃さず、ケアすることが大事」と訴える。

 具体的には、

  • 環境が変わる前と比べ、イライラしている
  • 表情が暗い
  • 疲労感が強い
  • 生活習慣が乱れている

―の4つが気になるようなら「要注意」だ。例えば「好きだった遊びやテレビ番組への興味をなくす、言葉が荒くなったなどは最初のサイン」だ。習い事を思い切って休ませるなどゆったり過ごさせるといい。

おうむ返しや相づち 否定せずに傾聴を

 コミュニケーションでは肯定も否定もせず、気持ちを吐き出させることが大事だ。おうむ返しや相づち、加えて「それは○○な気持ちになるね」と共感するなど、子どものありのままの気持ちを受け止め、自分に自信を持つよう促したい。

 行き渋りが出始めたら、十分に本人の話を聞き、どうしたら安心して登園や登校ができるかを話し合うことが重要。その上で、教員や保育士らに現状を伝え、「いつでも早退できるよう迎えの準備をしておく」など保護者側ができることを共有するといい。最も避けたいのは、保護者が余裕を失い、子どもにさらなる負荷をかけることだ。

 発熱や腹痛、動けないなど心身の不調がより深刻な場合は、小児科や心療内科などに相談したい。ただ、和久田さんは「ほとんどは否定されずに話を聞いてもらうだけで気持ちが軽くなる」と傾聴を呼び掛ける。

大人の五月病は精神症状が中心 子どもは発熱や腹痛など身体に出やすい

 愛知県一宮市で開業する精神科医の小出将則さん(60)によると、五月病は病名ではなく、新年度が始まってしばらくたってから現れる心身の不調の総称。緊張でいっぱいの4月を乗り切り、大型連休で気持ちが一気に緩むことで自律神経のバランスが崩れ、倦怠(けんたい)感や眠気などの症状が出る。

 うつ病の診断基準を満たす場合もあるが、多くはストレスに直面して不安が生じたり、行動に落ち着きがなくなったりして生活に支障が出る「適応障害」に当てはまる。要因となるストレスが消えれば、およそ半年以内に症状は治まる。

 新入社員など大人の五月病は集中力の低下などの精神症状が前面に現れるが、幼い子どもは自分の精神状態を説明する力が弱く、発熱や腹痛など身体の症状となって出やすい。「呼吸器が弱い子はぜんそく症状というように、弱い部分に症状が現れる」と小出さん。特にマスクや3密回避などの感染対策に気を使うコロナ下では、ただでさえ自律神経のバランスが乱れやすいため、より子どもの変化に敏感になるよう求める。