どれがブラック校則?「バズれば変わるきっかけに」 千葉県立高119校の校則データベースサイトを開設した理由とは

加藤豊大 (2023年1月8日付 東京新聞朝刊)

スクール・ルールズ・データベースの画面を前に「ブラック校則見直しにつなげたい」と語る植山良さん=千葉県流山市で(本人提供)

 下着の色指定や髪の黒染め強要といった、子どもらへの人権侵害の恐れがある「ブラック校則」。見直しを促そうと、千葉県流山市の植山良さん(39)が校則のデータベースサイトを立ち上げた。「多様性を認め合う時代におかしなルールが多過ぎる」と情報公開請求を活用して制作。全国の学校を対象とすることを目指し、まずは千葉県立の119高校分を公開した。

「地毛届」に幼少時の写真を添付!?

 「授業中はもちろん、職員室等に入室する際は防寒着の着用を認めない」「生まれつき自然の癖毛及び髪色のものは『地毛届』に幼少時の写真を添付して生徒指導部に届け出る」「校外の団体に加入したり行事に参加したりするときは願い出て許可をうける」。サイトで見られる千葉県立高校の校則の1例だ。

◇サイトに掲載された校則の例
行動規制 ・アルバイトは教育上好ましくないケースが多いので、原則として禁止する
・旅行等には、必ず保護者が同行すること
・校内では定められた時間以外は飲食をしない
頭髪、服装規制 ・頭髪については、一切手を加えてはならない
・スカートの下にジャージ、ハーフパンツ類は絶対に着用しないこと
・ベルトは一つ穴のものとする
・違反の制服やアクセサリーは卒業まで預かる

 「言い方は悪いが、根拠が分からない変な校則は面白がられてネットでバズる(話題になる)。学校が外部の目を意識し、内側から変わるきっかけをつくりたい」。植山さんは開設の狙いを語る。

 サイト名は「School Rules Database(スクールルールズデータベース)」。高校名ごとか「服装」「頭髪」「校外活動」といった分類ごとに、校則が参照できる。「ブラック校則」の分類はない。「どれがブラックなのか、見た人それぞれが考えてほしかった」からだ。

情報公開請求で121校の校則収集

 ITコンサルタント会社に勤めるかたわら、2022年1月から情報公開請求で、まずは地元の千葉県立高校全121校の校則を収集。文字起こしを手伝ってもらうアルバイトも雇い、2022年9月に完成させた。生徒の見た目や行動を制限する校則があった119校分を公開している。

 千葉県で生まれ育った自身が中学生時代、黒髪を強制されたり、行進などの集団行動を強いられたりと画一的なルールや教育に反発や疑問を抱いていた。大阪府で生まれつき髪の茶色い女子高校生が黒染めを強要され、2017年に府を相手に提訴したという、ブラック校則が広く注目を集めるきっかけとなった報道を大人になって見た時、その記憶がよみがえった。

 現在小学校1年生の長男は、5年後には中学校に入学する。「それまでにブラック校則をなくしたい。5年あればきっと変えられる」と開設を決意した。

英訳して人権意識の高い他国にも

 公開すると早速、千葉県松戸市の中学校のある教員から「生徒が進学先を決める参考にするため、生徒だよりで紹介してもいいか」との問い合わせが来た。掲載校の拡大へ、千葉以外の20都県の高校の校則も情報公開請求ですでに集めている。校則は改訂されることもあることから「常にアップデートしたい」と、定期的に情報公開請求で集め直し更新するつもりだ。

 植山さんは「内容を英訳して子どもの人権意識に敏感な他国にも発信していきたい」と語る。

下着の色や柄、髪型…見直し広がる

 ブラック校則を巡っては、文部科学省の有識者会議が2022年8月、時代の変化を踏まえた校則の見直しを求める教員用手引書「生徒指導提要」の改訂版をまとめた。これに先立ち、首都圏でも検証の動きが広がっている。

最終決定権は校長 及び腰になる場合も

 東京都教委は2021年度、都立高校全196校(全日制や定時制など計240課程)に校則の点検を指示。その結果、13課程であった下着の色指定は2022年度から全て廃止に。7課程であった黒髪への染色強制、24課程であった頭髪の「ツーブロック」禁止もそれぞれ全て削除された。

 埼玉県教委も2021年度、県立学校177校を調査した。全日制の65.7%で頭髪の「地毛証明書」の提出が求められ、6.7%で下着の色や柄の指定があることが発覚。内容見直しを求めたところ全校でいずれも廃止された。

 一方、ブラック校則が根強く残る要因について、大東文化大の山本宏樹准教授(教育社会学)は「最終決定権が校長にあり、見直しにより校内が荒れるといったトラブルを避けようと及び腰になるケースがある」と指摘。「生徒や教員、保護者、地域住民らが集まり意見を出し合い、納得した上でルールを決める仕組みが理想的だ」と語った。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年1月8日

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  • AAA says:

    校内暴力時代に作った緊急対策的な校則を、一度決めたからと言う意味不明な理由で継続していた怠慢の為に、近年において問題化されたのでしょう。

    当時は生徒に対してある程度の人権侵害を侵してでも、校内暴力を抑える事に公益性が有ったとは思います。

    また、現在において人権侵害を侵してでも抑えなければならない問題を抱えている学校はブラック校則を堂々と継続すれば良いと思います。

    校則がどの様なものであっても、生徒に反抗される教員は単純に相性か、コミュニケーション能力不足だと思います。

    AAA 男性
  • Kakitetsu says:

    普通に憲法、法律に違反している。文部科学省に突き出したら何らかの制裁は受けるだろう。
    あと違反の制服、アクセサリーは卒業まで没収するのは窃盗罪になる可能性がある。
    日本はどうなっていくのか気になる

    Kakitetsu
  • 匿名 says:

    人権教育をしながら生徒の人権を侵害してるんだからほんと笑っちゃうよね。説得力ゼロ

  • 昔の校内暴力の時代 says:

    校則緩めたらまたグチャグチャになりそう
    昔と違うのは変な平等思想が無駄に定着したので教師と生徒が対等
    ゆえに生徒は注意も聞かないどころか被害者ポジションをとって教師を糾弾し始めるだろう
    例えば西欧のきちんとした学校はハッキリ言って日本の校則どころじゃなく厳しい
    何でも自由にすれば改善すると思ってる日本人はおかしいよ
    ただ髪の毛は明るい色の地毛の女の子とかもいるので可哀想だからその場合は学校がお金出して髪染めてあげてな
    校則守らせるならそういう優しさは要る

    昔の校内暴力の時代
  • キガネムシ says:

    学校を正しく知りたい方々のために、役に立ちそうな情報を提供する。
    最近になって漸く「悪いのは学校だけではないのでは?」と考える人が増えてきた。そのような方々の中で発信力のある人も現れた。

    名古屋大学の内田良氏は結構ブレイクしているようにお見受けする。金髪や赤毛になったりするので、私は「?」であったが、氏は研究者としてキチンと論文を書き(私自身も数本拝読した)、その主張は、教員を辛くて辞めた暇人の胸を打つ内容である。人は見かけによらないのか。私は氏を信じてみたい。心配性の私は今後の変節を危惧しているが、現時点では教育界の現状を正しく理解するために我々を誘ってくれるだろう。

    キガネムシ 男性 50代
  • キガネムシ says:

    元教員として、なぜ学校がこれまで叩かれるだけであったのか考えてみた。

    ヒラ教員:疲れ切って正しい情報を発信する余裕が無い。or 学校というのはそういうものだ。
    管 理 職:正しい情報を発信すると自分の出世に差し支える(人事を握るのはお上だ)。
    政 治 屋:教育問題は票にならない。厄介なことに顔を突っ込むのは自殺行為だ。
    教育委員会:お上(文科省)には逆らえない。変な政策が下りてきても自分の首は飛ばない。
    文部科学省:我々に間違いは無い。ダメなのは上手くやれない現場だ。
    教育評論家:「学校が悪い」と発信すれば取り立ててもらえる。
    一般A:教育や学校がどうであろうが、自分は今幸せだからどうでもよい。
    一般B:学校って何でダメなのか。自分の子供も今人質だから心配だ。今度文句言ってみよう。
    一般C:えっ?そうだったの??
    等々

    私の推測に誤りがあれば指摘して欲しい。根拠のある反論を待つ。

    キガネムシ 男性 50代
  • キガネムシ says:

    先の私のコメントで、記者の方に「ダメ校則ができた当時の背景についても調べて欲しい」と書いたが、記事の主役である植山氏にも同じ内容を要望したい。恐らく学校の内部事情については「あまりご存じないのでは」と感じられるので。確かに学校を悪者にすれば、読者のうけは残念ながら良い。
    「現場が作りたくて作った校則ばかりではない」ということを、現場に居た人間の一人として書かせて頂くが、一方で「ダメだと判っていて廃止できない」のは私ども教員の責任であることも認めざるを得ない。

    キガネムシ 男性 50代
  • キガネムシ says:

    現場で教えた経験のない全ての人から見ると、「こんなダメ校則誰が決めて、何で続けているんだ?」という疑問が湧くのは当然のことであろう。昨年まで教壇に立たせてもらっていた私でさえ、同じ感想を持つ校則もあるからだ。

    世間一般の常識からして大きく外れている校則を廃止していく方向は大歓迎であるが、「ダメ校則が出来た背景」についても取材された記者の方には突っ込んで頂きたかった。校則に限らず一旦できたものを廃止するのには作るよりも遥かに多くのエネルギーを要する。ダメ校則もできた当時には必要であったから作られたのである。そのような歴史を全く顧みずに、ただ学校を叩く材料にはして欲しくない。

    例えば、身だしなみに関するダメ校則は概ね「校内暴力が吹き荒れていた時代の遺物」だと思う。茶髪・金髪で、教員に注意されると反対に「教育委員会に言いつけるか?」と食って掛かるような生徒の頭が並んだ状態で、粛々と授業が進行する教室を、皆さん想像できますか?それは漫画か「金八先生」の世界でしかない。学校を外から見ている全ての人には、そのような背景にも思いを馳せて、建設的な解決策を提言して頂きたい。無理かな?

    キガネムシ 男性 50代

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