新宿の「そらとだいちの図書館」 閉校した中学校の校庭がみんなの広場に 畑で農業体験も
クイズや本の持ち寄りで多世代が交流
「この野菜は何かな」。絵本を拡大して作ったお手製のクイズ本を矢沢正春さん(68)が指さすと、かぶりつきで見ていた子どもたちから「レンコン!」などと元気な声が響いた。
5月中旬、月に数回、週末に開く広場の開放日。矢沢さんは近所に住むボランティアで、広場で栽培する野菜や草むらにいる昆虫などを扱ったクイズを子どもたちと楽しむ。「ここに来る子はみんな自分の孫だと思ってます」と矢沢さん。クイズ大好きの6歳と3歳の男児を連れてきた母親(41)は「交流できる場所がなかったのでここに来るとうれしい」と笑顔を見せた。
その隣は、お気に入りの1冊を持ち寄ってみんなの本棚をつくる「ライブラリーボックス」のコーナー。車座になり、安部公房の「第四間氷期」を紹介した石賀暢子(まさこ)さん(58)は「自分の知らないジャンルの本や分野に興味が持てる」。このほかシロツメクサで王冠を作ったり、スナップエンドウの収穫、堆肥のコンポスト作りなどもあった。
土を掘り起こし畑に 野菜やハーブも
校舎には2013年、新宿区立中央図書館が移転。だが、約900平方メートルの校庭は雑草に覆われた空き地だった。図書館は2021年に有効活用のボランティアを募集し、渡辺さんら約20人が応募。ワークショップを重ね、高齢者や子育て世代などさまざまな人が気軽にくつろげる交流広場を始めることになった。
同年4月にショベルカーで土を掘り起こし、手作業で石拾いをして、夏野菜の畑を作った。現在はカボチャやジャガイモ、レタスなど約10種類の野菜を育てる。ハーブの栽培も始め、今夏にはハーブティーを飲みながら青空の下で本を読んだり、ミニコンサートも計画中だ。
昨年は27回開催、延べ1000人が参加
新築マンションがいくつも立つ地域だが、近隣の都営戸山ハイツは高齢化が進み「都心の限界集落」ともいわれる。早稲田大などの学生街、国際色豊かな大久保地区も近い。そんな地域の貴重な空間に集まったボランティアは現在、約60人。外国籍の人、大学生や小学生、子育て中の母親や高齢者、アーティスト、お笑い芸人、農園経営者など多彩で、それぞれの特技や関心事で活動に貢献している。
昆虫の観察会や大学生の農業体験、シニアによる絵本の読み聞かせなども実施。昨年は27回開き、延べ1000人以上が参加した。「他の公園は禁止事項ばかりだが、ここでは草花や虫を捕るのも自由。ルールはとことん話し合って決める」と渡辺さん。合言葉は「みんなの居場所と出番がある」。40年余の歴史を刻んだ校庭は、地域の人たちをつなぐ社会の学びやに姿を変えて成長を続ける。
広場開催日はそらとだいちの図書館のホームページで案内している。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい