里親の私が泣いていると「守ってあげるよ」 家族に迎えて6年、里子は優しい男の子に育った 里親制度の喜びと課題
生後6カ月で里親に「彼がいて当たり前の家族になった」
医師の長主(ながす)直子さん(56)と、ミュージシャンで米国人のケビン・コートニーさん(49)の夫婦が里子を迎えたのは6年前。「このまま2人でも良いけれど、子どもがいても楽しい家庭になれる」と里親登録したところ、生後6カ月の赤ちゃんを迎えることが決まった。
最初の1、2カ月は熱を出すことが多かったが、それ以外はあまり手がかからず、保育所に預けて仕事も続けた。長主さんが飼い犬の死にショックを受けて泣いていると「守ってあげるよ」と声をかけてくれる優しい男の子に育ち、「彼がいて当たり前の家族になった」と喜ぶ。
真実告知はいつ?「自立のチャンスを提供するのが役目」
自分たちが里親で、実親が別にいるとの「真実告知」はするつもりだが、どのタイミングにするか夫婦で話し合っているという。「自立に向けてチャンスを提供するのが私たちの役目。大人になったら『昔こうだったよ』とたくさん話してあげたい」と話す。
里親をサポートする鎌倉児童ホーム家庭養育支援センターの宮崎千鶴子さんは、里親の中には虐待経験や障害のある子どもの養育に苦労するケースもあるという。「実子でも苦労はある。さまざまな事情を抱えていても、それを個性として受け止めてもらえたら。私たちが里親を全力で支援する」と話す。
実親の反対、虐待被害のトラウマ…里親委託率が伸び悩み
国は、実親と暮らせない子どもの預け先のうち里親家庭や複数の子を養育するファミリーホームの割合(里親委託率)を、3歳未満は2024年度までに75%以上に引き上げることを目標に掲げている。
しかし、神奈川県や児童相談所を設置している県内4市のうち年齢別の委託率を公表している県と川崎、相模原両市の3歳未満の里親委託率は2019年度時点で12〜44%にとどまる。県の担当者は「里親に預けると子どもが戻らないと思って反対する親や、虐待などのトラウマを抱え預けるのが難しい子が少なくない」と言う。
里親制度の周知も課題。里親の体験談などが聞ける恒例イベント「里親大会」は本年度、新型コロナウイルスのため中止になった。宮崎さんは「里親にならなくても、地域にいろんな家庭があると知ってほしい。それだけで子どもたちへの応援になる」と話す。問い合わせは、県の委託を受けて里親を支援している「里親センターひこばえ」=電話046(205)6092=へ。
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