高木美智代衆院議員 ベビーカーで段差の多さに気づいたのが、政治家になるきっかけ〈ママパパ議連 本音で話しちゃう!〉

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 今回のコラムを担当する衆院議員の高木美智代です。

 このリレーコラムをつないでいる「超党派ママパパ議連」は2018年3月に設立されました。私が関わることになったきっかけは、野田聖子衆院議員から「一緒にやらない?」と声をかけられたことです。議連名について「『パパママ』議連という話があるけどどう思う?」と聞かれ、「『パパママ』じゃなくて、『ママパパ』よね」という話をしながら一緒に進めていくことになりました。

 私自身は娘が2人いますが、もう30代前半で、それぞれ結婚して子育てを一生懸命やりながら仕事も頑張っています。娘たちの子育てを見ていると、私のときの子育てと全然違うな、と感じます。今の若い方たちがどういうところで子育てに苦労していらっしゃるのか、例えば保育園落ちた、とかいろいろありましたよね。おそらく私の時とは全然違う課題をお持ちじゃないかと思ったので、子育ての先輩として議連に入ろうと思ったんです。私たちが直接ああだこうだと言うのではなくて、むしろ子育て世代の若手議員の方たちが何に困っていてどうしたいのか、そうした声からできあがる政策を一緒に後押ししていこうじゃないか、と聖子さんとも話しました。

 ちなみに、「パパママ」じゃなくて「ママパパ」だろうと思ったのは、もちろんパパの苦労も多いですけれど、統計に表れているとおり、日本の男性の家事時間は圧倒的に少ないですよね。どうしても家事の主体者は女性になりがちです。これを何とか変えていきたい、仕事との両立に悩んでいるママ達を支えていきたい、という思いからです。子どものよりどころは母親だと思いますけれども、それにしても母親にかかる負担が大きすぎるので、少しでも軽減する方向にもっていきたいと思っています。「パパも一緒に家事育児をやるのよ」という思いを込めて『ママパパ』議連ということになりました。

 私の子育てを振り返って、思い出深いもののひとつが、「公園総点検」です。

 上の子がまだ3歳で保育園に行き始めたころだったと思います。子どもたちを連れていく公園があまり綺麗ではない、と思うことが多々ありました。砂場が動物のふんで汚れていたり、遊具が壊れていたり。同世代のお母さんたちと話をしていて、「やっぱりこういう問題を考えないと駄目よね」ということになったんです。それで取り組んだのが「公園総点検」でした。

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まだ幼かった娘たちと

 当時はまだ国会議員ではありませんが、すでに公明党といろいろな関わりを持って仕事をしていて、大野由利子さんという先輩の衆院議員と懇談する機会があったんです。その時、私が「ベビーカーを押していると段差の多さがわかる。もう少し段差をなくせば、ベビーカーにとっても、車椅子の方たちにとっても、移動しやすい社会になるんじゃないか、生きやすい社会になるんじゃないか」ということをお話ししたんです。すると大野さんは「それが政治なのよ」と返してくれました。「『今年はこの段差を解消しましょう』『次はこういうふうに変えていきましょう』とやっていくのが、まさに政治なのよ」と。この言葉のインパクトがとても大きかったんです。子育てで忙しいけれども、やっぱりそういうことに無頓着ではいけない、と。なにか問題意識を持ったら、対策するにはどうしたらよいか、ということを考えるようになりました。

 お友達や公明党の支持者の若手の方たちからも「一緒にやろう」という声があがりまして、皆で「遊具が壊れている」とか「公園内に時計がほしい」といったチェックリストを作り、区議さんを公園に呼んで、実際に見てもらいながら要請をしました。すると、各議員が頑張ってくれて、見違えるように公園が変わったんです。この公園総点検は、住まいのある江東区から首都圏全体に広がりました。

 子どもは、連れて行けるところは全部連れて行きました。いろんな事を肌から吸収することが大切だと思っていたんです。例えばその頃、大先輩ですけれども、浜四津敏子さんが出馬されると決まって、若いお母さん世代の話が聞きたいというので懇談した際にも、子どもをおんぶして参加しました。子どもを連れて行って、ご迷惑をおかけしてしまうようなこともありましたが、誰かが必ず、「私がお子さんを見ててあげるから」と助けてくれました。そういう方たちに支えられて子ども達は大きくなりました。だからこそ「感謝のある子に育ってほしい」と願ってきましたね。会場を失礼するときには「ありがとうございました。お世話になりました」と姉妹2人でぺこんと頭をさげる。そういうことも小さいことから一緒にやってきました。

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 衆院議員選挙への出馬のお話を頂いたのは2002年の夏。上の子は高校生、下の子は中学生でした。その時は非常に悩みましたけれども、私自身いろんな方に支えていただいて、ここまで育てていただいたという思いがありましたから、そのご恩返しになるのであればということで、その場で「わかりました」と申し上げました。「ご主人と相談してもいいんですよ」と言われたんですけれども、うちの夫は私がそういう生き方をするというのをよくわかっている人なので、「夫は反対はしないと思います」と答えました。持ち帰っていろいろ考えるのも、これまた気持ち的に重たいものがありますからね。

 それで、夫に話したら、開口一番「家はどうするんだ」「ごはんは誰が作るんだ」と言われたのですが、「両方やります」とは言えませんから、黙っていたんですね。しばらく沈黙が続いて「わかった、僕がやればいいんだな、僕が覚えれば良いんだな」と言ってくれました。私からは「ありがとうございます。お世話になります」と伝えましたね。

 それでも私自身は、国会議員になってからもできる限り家事も頑張ろうとしました。一つ一つ勉強するのに半分徹夜みたいな日々がずっと続きましたが、夕方も家に帰れるかどうかわからないので、朝のうちに子ども達が支度をしている間に晩ご飯を作って、それを冷まして冷蔵庫にいれて、帰ったら皆それぞれに温めて食べれば良いという…一応そういうところまではやっていました。こういう生活を2カ月ほどしていたら、やはり体力的に、かなりしんどいなという状況になりまして、夫が「もういいから」「あとは僕がやるから」と言ってくれたんです。

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 それから夫が本格的に料理を担当してくれました。最初の1年くらいは怪しい料理が続いて、娘達から「何とかして」と言われたんですけど、「我慢して。きっと上手になるから」と言い続けていました。

 選挙に出る話は、娘達には選挙が近くなった段階で話をしました。それぞれびっくりしていましたが、私が「皆さんに本当にお世話になってここまで育てていただいたから」と説明すると、長女はすぐに「わかりました」と言ってくれました。次女も「わかったから」と。「お母さんが議員だからって批判されたり、嫌な思いをすることもきっとあるわよ」という話をしたら、中学生の次女が「わたしたちがお母さんを守るから」と言ってくれました。その後も紆余曲折はありましたし、こちらに余裕がなくてゆっくり話を聞いてあげられないこともありました。いつも「急いで急いで」と言ってしまって、「お母さんはいつも『急いで』しか言わない」と言われたこともありました。ここまで来られたのは、娘たちがいろいろ我慢しながらやってくれたことが大きいんだと思います。

 子育てってまず心を通わせることが大事ですよね。「お母さん、今日学校休みたいの」って言われたとき、私はどちらかというと「そんなことしたらお友達がこう思うよ」「先生が心配するわよ」とかそういう理屈を言いたくなるタイプなんですけど、ある時、先輩から、「まずはいったん受け止めて、『そう、休みたいの』って返すことが大事なのよ。その上で、一緒に考えていく姿勢が必要なんじゃない」とアドバイスを頂いたんです。「ああ、その通りだな」と思いました。

 それって政治も同じなんですよね。すぐできることと、できないことで言えば、すぐできることの方が少ないかもしれません。私もコロナ対策を含めていろいろな要請を頂くんですけれども、すぐにできないとしても、「ちょっとやってみますから、待っていてくださいね」と伝えます。 この「やってみますから」というのが、その方にとって安心感のある言葉なんだと思います。その上で難しかった場合は、「やってみましたけど実は今こんな状況で、無理なんですよ。でもこれからも粘り強くやりますからね」と伝える。こうした一人一人への向き合い方は、子育てから学びました。まさに子育ては親育てといいますけど、本当に娘達に感謝しています。あと大切なのは、約束を守ることですね。それも、私はなかなかできなくて。日程変更ばかりで、子ども達から「もういいわよ」とよく言われましたけど。

 さて、夫の料理の話ですが、今ではとても上手になりました。煮物などは、かないません。嫁いだ娘達も煮物などを楽しみに我が家によく帰ってきます。夫は娘たちが巣立った今も食事を作ってくれますし、私も時間があれば自分で作ります。夫にはお世話になっていることばかりですので、感謝しかありません。リタイアした同年代のご夫婦の話を聞くと、夫が家事をしないストレスを感じているケースが多いのですが、我が家は2人がリタイアした後も、いい共同生活が成り立つのではないかなと思っています。

 今は、長女も次女も子育て真っ最中です。2人とも大学を卒業して、一部上場企業に入社しましたが、それぞれ外資系企業に転職しました。転職の理由は異なりますが、やはり子育てに関しては日本企業の事業主の理解がまだ進んでいないという実感があります。身近な役職の方は理解してくれていても、思い切って配置転換するとか、グループ企業に出向させるとか、そういう対応はトップダウンじゃないとできませんよね。転職後の様子を見ていると、外資系企業はマネジメントがしっかりしているなという印象があります。

 「ダイバーシティ」という言葉が広がっています。こういったコロナ禍の環境の変化に対応していける柔軟性は、もちろん男性も優れていますけど、より女性の方が優れているわけです。これは早くからラガルド欧州中央銀行総裁をはじめ多くの方々が、「もっと女性の力を活用するべきだ」と提案してこられた。いずれにしてもそういう流れをもっと見える化しながら、若い方々が自分を生かせるような社会作りをもう一歩前に進める必要があるんだと思います。

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 都内では、マンション価格が相当高騰しました。住宅価格が共働きの所得で計算されているのではないかと思うほどです。一方で非正規の方は、やっと同一労働同一賃金という制度は整えましたけれども、収入などが不安定であるということが、今回のコロナで露呈している訳ですよね。 その意味で格差が広がりつつあるということを危惧しています。

 今後は、社会保障政策に住居確保支援を位置づける必要があると思います。衣食住ではなく、住食衣。住居を失えば就職もできなくなるので、コロナ対策では住居確保支援金制度を作りました。そうした低い所得の方たちへの住まいの支援。また、高齢者の生活は住居費が占める割合が高くなりますので、年金と少し蓄えがあれば何とかやっていけるような仕組みを作る必要があるのではないかと思います。こういったニーズの変化を踏まえると、子育て支援策も、もう一度、見直す段階に来ていると思います。 共働きの高所得の人が子どもをたくさん持てるかというと、やはりキャリアに関わってきますから、1人が精一杯だという声もよく理解できます。それぞれの希望をかなえることができる支援策が必要です。 例えば、産後ケアや家事育児サポートの拡充、不妊治療の保険適用や不育症支援、出産育児一時金の引き上げなど、そのためには財源が必要になるわけですけれども、安心して子どもを産み育てられる社会をめざして、本格的に取り組みたいと思っています。


 さて、前回コラムを担当された野田聖子さんから頂いた質問にお答えします。

 「いつも完璧な姿ばかり拝見していますが、何か苦手や弱みなどあるのでしょうか」

 いえいえ、私は苦手と弱みだらけです。運動が苦手なんです。子どもの頃から父方の大家族のなかで大事にされて育ってきまして、「廊下は走ってはいけません」とか、「お庭は散歩をするものです」とか、注意されていました。振り返れば、鉄棒の逆上がりも苦労しましたね。

 あとは孫が弱点になりました。もう可愛くて可愛くて。こんなに可愛いものなのかなぁと。娘も可愛いですけど、どちらかというと、母娘は親友みたいな関係ですよね。何でも話ができて一緒に買い物に行って、という。結婚して出産した後は、ますますそういう関係が強くなったような気がします。孫にはもう甘くて、孫から「こうして」って言われると、ついつい「はい」と言ってしまう。「もうこれ以上食べさせないでください」って言われても「いちご食べる?」って言ってしまうんです。

 いま娘たちと写真や動画を共有できるアプリを使っているんですけれども、夫はガラケーなので見られないんですね。夫も写真を見るのをとても楽しみにしていて、私が帰宅すると、「今日は新しい写真アップされてるの?」と聞きます。2人で一緒に孫たちの写真を見ながらゲラゲラ笑うことが、今の我が家の一番の潤滑油ですね。コロナ禍でなかなか会えない方もいらっしゃると思うので、これはおすすめです。孫の成長を共有しつつ、コメントを書いて思いも共感できます。これで疲れが吹き飛んでいます。

 最後に、次回コラムを担当される橋本聖子さんへの質問です。子育て女性議員の先駆者として、本当に多くのご苦労があられたと思います。現在、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長として活躍をされていて、まさに「スーパー橋本聖子」でいらっしゃいますが、仕事と子育ての両立のご苦労など、涙と笑いのエピソードをたくさん聞きたいですね。そして、何といっても、東京オリンピック・パラリンピックの開催のご尽力について、心からお疲れ様でしたと申し上げたいと思います。

高木美智代(たかぎ・みちよ)

 衆院比例区東京ブロック、当選6期、公明党政調会長代理。1952年9月生ま れ。創価大卒。経済産業大臣政務官、厚生労働副大臣などを歴任した。長女と次女は結婚し、夫と2人暮らし。

(構成・坂田奈央)

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  • 匿名 says:

    国会で登壇されてみるお姿しか拝見出来なかったので主婦としての日常の活動をご主人の協力大で国会議員を駆使しされていることに少なからず感動しています。支えあってこそ男女共同参画社会の模範たるお姿ではないでしょうか、お子様たちも家庭を持たれ有職者として立派に社会を担っておられる、共に教育を受けられた証の環境こそでもあるとー貧困家庭でも教育の施せる社会を、未来の子供たちの夢の実現できる政治に監視して行きます。高木みちよさんはキャリアウーマンではなかった、普通の女性であり共感のできる芯のあるステキな人、今後のご活躍を祈ります。

      

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