歌手・俳優 森崎ウィンさん おばあちゃんは涙を見せずに「日本で頑張りなさい」と…

(2022年7月17日付 東京新聞朝刊)

ミャンマーの祖母との思い出を語る森崎ウィンさん(五十嵐文人撮影)

家族のこと話そう

ミャンマー語で「明るい」 祖母が命名

 10歳まで、ミャンマーのヤンゴンで母方のおばあちゃんと2人暮らしでした。「ウィン」はミャンマー語で「明るい」という意味で、おばあちゃんが付けてくれました。

 両親とも日本など海外で働いていて、母はぼくを産んですぐ日本に戻りました。当時、ぼくがミャンマーで比較的豊かな暮らしができたのは、両親が日本で頑張って働き、仕送りをしてくれたからです。ただ両親が家に戻ってくるのは、年に1回あるかないか。普段は電話で話して、たまに日本からおもちゃを送ってくれる存在でした。

英語教室を開き、慕われる「大先生」

 おばあちゃんは若いころ米国や日本で暮らしたことがあり、当時珍しかった英語教室を自宅で開いていました。地元では結構有名で、多くの大人が通っていました。社交的で、みんなから慕われているおばあちゃんは、ぼくの自慢。ぼくも生徒の皆さんに「あの大先生の孫だ」と、かわいがられて育ちました。

 普段は優しいおばあちゃんですが、ぼくが宿題をしない時など怒ると怖かったです。英語教室では、時にマドンナなどを歌いながら楽しく教えていて、ぼくが英語を話せるようになったのも、こうした環境のおかげだと思います。

 10歳の時、日本で弟を妊娠した母が出産のため一時帰国。ミャンマーの治安のことも考えてか、母は「日本で一緒に暮らそう」と言いました。

少し変わった家族かもしれないけれど

 最初、ぼくは「イヤだ。おばあちゃんと一緒にいたい」と言ったと思います。親しい人たちと別れ、知らない国に行く不安も大きかった。おばあちゃんは「日本はすごくいいところだし、楽しいよ。向こうで頑張りなさい」と言い、ぼくの前では一切涙は見せませんでした。

 後で聞くと、ぼくがいなくなって心にぽっかりと穴があいたようになり、立ち直るまで相当時間がかかったそうです。3カ月ぐらい仏教の修行のようなことをして、心を静めたそうです。

 東京で両親、弟との生活が始まりました。母は信念が強くて、まっすぐな性格。父は聞き上手で優しいです。最初、ぼくは日本語が分からず、小学校でいじめられたこともありましたが、徐々に友達もできて芸能界の道へ。おばあちゃんも、ぼくを自慢の孫ということで喜んでくれています。

 数年前、少し体調を崩したおばあちゃんのため、母だけミャンマーに帰国しました。政情不安などもあり、よく2人に電話しています。少し変わった家族かもしれません。でも、この家族に生まれた意味はあると思うし、この家族だからこそ今のぼくがいる、と強く感じています。

森崎ウィン(もりさき・うぃん)

 1990年、ミャンマー生まれ。「森崎」は芸名。中学2年でスカウトされ、芸能活動を開始。2018年公開のスティーブン・スピルバーグ監督の映画「レディ・プレイヤー1」でハリウッドデビュー。20年、映画「蜜蜂と遠雷」で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞。8月下旬~9月下旬、東京、大阪で開催されるブロードウェーミュージカル「ピピン」に主演。

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  • バダウ says:

    ウィンさん主演のミュージカルピピンが今休演中ですが、必ず再開できるようにお祈りしています。今できる準備をとギターも練習されているとのこと。さすがウィンさんです。

    ウィンさんのご家族のことを知り、家族の絆がミャンマーは強いですが、ウィンさんのご家族が愛情をたっぷり注がれたことが、誰にも優しく細かい気遣いができて、目標に向かって真っ直ぐ努力するウィンさんを育んだのですね。

    劇中でも中尾ミエさん、前田美波里さん演じるお婆さまとのシーンがありますが、毎回ハラハラ心配したりミャンマーのおばあちゃんと重なって泣きそうになるとウィンさんがコメントされていますね。本当に強い絆で心が動かされました。

    小学校ではいじめられていることを親には言えなかったそうですが、それでも仲間に入れてと言い続けたウィンさん。きっとご家族の存在がパワーの元になって頑張れたのでしょうね。負けず嫌いも海外暮らしを経験したパワフルなご家族からもらったのでしょう。

    外国ルーツの子供達が日本にも外国にもアイデンティティが確立できず、教育の場から離れてしまう中、ウィンさんが大学に進学されたことはすごいです。ウィンさんのご家族の支えとウィンさんの友達を作って日本で夢を追いたいという気持ちが、ここまでのご活躍につながったのだと思います。

    しかし、誰もがウィンさんやウィンさんのご家族のようにはできないことも現実です。外国ルーツの子供達がしっかりアセスメントを受けられず、小学校で特別支援学級に在籍したり、高校に進学しても日本語教育も職業訓練も大学進学も支援がない状態はなんとかならないかと思います。

    ウィンさんが、諦めないで頑張れば本当にやりたいことができるという姿を見せて、外国ルーツや今いじめを受けている子供たちのロールモデルになってくださることを願っています。

    最後にウィンさんの故郷、ミャンマーに平和が戻り、おばあ様やご家族と再開されることをお祈りしています。そしてアジアツアー、ワールドツアー、世界進出の夢が実現できますように。

    バダウ 女性 無回答
  • 匿名 says:

    応援しています。

  • 匿名 says:

    以前、ドコモのCMで拝見して素敵な俳優さんだなと気になっていましたが、しばらくお姿を拝見していませんでした(私があまりテレビを見ないからなのですが)。
    先日、子どもと見ていた仮面ライダーの主題歌を歌っているのが森崎さんと知り、とても嬉しくなりました。
    これからも応援しています。

     女性 30代
  • 匿名 says:

    素敵なおばあさまですね。

  • 匿名 says:

    これからもテレビ等で拝見できるのを、楽しみにしています。

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