「パンツの中を見せてと言われたら?」英国発の性教育 パンツザウルスと楽しく学ぶプライベートパーツの大切さ
「パンツの中はきみだけの大事なとこ」
「パンツの中は きみだけの大事な大事なとこなんだ もし見せてよって言われたら?」。認可外保育所「ミリオングローバルキッズ」の3、4歳児クラス。保育士たちと一緒に歌う子どもたちから、「ノー!」と元気な声が上がった。
企画したのは、産婦人科医の遠見才希子さん(36)。遠見さんによると、パンツザウルスは「英国児童虐待防止協会」が、子どもの性被害を防ぐための教材として2012年に開発。パンツをはいた恐竜のキャラクターに子どもたちが親しみながら学べる教材だ。
英国では幼稚園や小学校にポスター
他人に見せたり触らせたりしてはいけない「プライベートパーツ」(水着で隠れる部分と口)の大切さを分かりやすく伝える教材で、「PANTS(パンツ)」の「P」は「Privates are private」(パンツの中はきみだけのもの)、「S」は「Speak up someone can help」(声を上げて、必ず誰か助けてくれるから)など、頭文字に込められた意味を子どもたちが繰り返し唱えることで、自然と覚えられるよう工夫されている。英国内では多くの幼稚園や小学校にポスターが張ってあるという。
A=いつだってきみの体はきみのもの
N=「ノー」は「ノー」 イヤという権利がある
T=きみを不安にさせる秘密は誰かに話そう
S=声を上げて、必ず誰か助けてくれるから
(遠見さんによる日本語訳)
この日、園児たちは、男の子と女の子のイラストを見ながらどの部分がプライベートパーツなのかを指し示したり、保育士の手作りした人形劇を見たりもした。人形劇でパンツザウルスが知らない人に「体を見ていい? 触っていい?」「秘密だよ」と声を掛けられる場面になると、子どもたちは声を合わせて「ノー!」。最後はリズミカルな「パンツザウルスの歌」を体を動かしながら歌い、楽しんだ。園長の永井美紀子さん(56)は「パンツザウルスを歌うことで子どもたちに興味が出てきた。子どもを守るために積極的に取り入れていきたい」と話す。
いじっていたら、ポジティブな声掛けを
遠見さんは大学生のころから、中高生向けに全国で性教育をしてきた。2年前に性暴力被害者らの団体「Spring」が行った英国視察の報告会でパンツザウルスを知り、「こんなふうに明るくポップなアプローチがあってもいいんだ」と感激したという。ミリオングローバルキッズは日ごろから英語で保育しているため、保育士らと一緒に、英語も交えて子どもたちに伝えるプログラムを考えた。
遠見さんは、保護者に向けて「パンツザウルスは動画を見せるだけでも良く、性教育を始めやすい。親子の間でもプライベートパーツは『大事、大事だからね』と伝えて」と話した。幼い子が性器をいじるのを目撃し、親がびっくりしてしまうこともあるが、「プライベートパーツに好奇心を持つのは当たり前、との共通認識を大人が持つことは大事」と助言。「恥ずかしいからやめなさい」としかるのではなく、「大事、大事だから誰にも見せないよ」とポジティブな声掛けをすると良いという。保護者の六島まり子さん(36)は「子どもが性のことで疑問に感じ聞いてきたとき、恥ずかしがらずに話せるよう勉強したい」と話した。
「パンツザウルスを通じて、子どもたちには自分のことも、相手のことも自然に大切にできるようになってほしい」と遠見さん。今後、多くの園で取り入れられるよう日本語訳を作って広げていきたいという。
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