相次ぐ保育士の虐待事件、不適切な行為を防ぐには? 専門家2人に聞きました
国は保育士の配置基準の改善を NPO法人「児童虐待防止全国ネットワーク」理事・高祖常子さん
子どもの「嫌だ」…どう声を掛けるか
ほとんどの保育士はコロナ禍で消毒などの仕事が増えたりしてストレスを抱えていても、丁寧に子どもたちと接しているはずだ。子どもの成長、発達、人権を学んだはずの保育士がカッターナイフを突きつける、宙づりにするなどしたというのは信じられない。
保育士は「しつけのつもりだった」と釈明していたようだが、しつけと暴力は違う。しつけは、子どもが周囲と対話するなど自分で考えて行動できるように支援することであり、上から威圧する行為ではない。
保育の現場では「外遊びから帰りたくない」「給食を食べたくない」など、子どもたちのさまざまな「嫌だ」に直面し、保育士からはどう子どもに声を掛けるか悩むと相談を受ける。先輩保育士は「みんなで列車ごっこしながら帰ろう-はどう?」など、気分を変えやすい声掛けを助言してほしい。研修などで情報交換しながら不適切な保育を減らす風土づくりが大切だ。
配置基準のせいで「統制する保育」に
不適切な保育を保護者が見破るのは困難。親と離れたくない甘えから園に行く時に泣いて嫌がることもあるだろうから。ただ、園の雰囲気を知るために入園前の見学は必ずしてほしい。入園後も気になる点は職員に相談するなど、自分の子どもを気に掛けて。
国には保育士の配置基準の改善を求めたい。1人で多くの園児を見ていると、統制を取るような保育になりがちだ。地域によっては定員割れの園もある。保育単価の支給基準も見直し、一人一人を尊重した保育を始める契機になればいい。
高祖常子(こうそ・ときこ)
3人の子どもを育て、育児雑誌などに子育てアドバイザーとして記事を執筆。保育士、幼稚園教諭の資格を持つ。
第三者のチームが見守るべき NPO法人「埼玉子どもを虐待から守る会」理事 小宮純一さん
氷山の一角…告発を守る体制が不十分
保育園や認定こども園で職員による虐待の報道が相次いでいる。これは「専門職による虐待」に分類でき、明るみに出るのは氷山の一角。多くは隠蔽(いんぺい)されて出てこないと考える。
保育園などで同僚が不適切な保育を発見したとしても、それを告発した職員を守るような体制は十分ではない。行政が認可保育園の普段の様子を常に監視するのも難しいだろう。
各自治体は、保育園がどのような保育をしているかを客観的に判断する弁護士や医師、ソーシャルワーカーらを含む第三者のチームを設けるべきだ。平時は園の業務を見守り、不適切な保育があった時は全園児や保護者への聞き取りなどを担ってほしい。
職務規定を厳しくしても、解決しない
1997年の児童福祉法の改正で、保育所の入所制度は市町村が入所先を決める「措置制度」から、利用者が入所先を選ぶ「選択制」に変わった。市町村が全て責任を持っていた時代から比べると、公の責任は薄まっている気がする。
一連の報道で問題になった保育士が、なぜ子どもをこのような理不尽な目に遭わせたのか。養成の課程で、児童福祉法を含め、子どもの権利について深く学んでほしいし、園にも、そういった研修を開く余裕があればいいのだが。
裾野市の虐待では、問題の発覚から、介入、子どもや保護者のケア、問題の保育士への対処までの市の対応も遅いと感じた。行政側の子どもの権利への意識も摩耗している。保育士の職務規定を厳しくして解決する問題ではないと思う。
小宮純一(こみや・じゅんいち)
新聞記者時代から虐待など子どもの問題を追う。ジャーナリストとして、児童相談所などをテーマに活動。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい
給与あげれば改善するのかなあ。そもそも人もいないようだし。あんまり単純な解決策はない気がするのだけどどうかな。
もうそんな実態があるのだったら保育園なんてとても自分の子供など預けられたもんじゃないとむしろ思うのが普通だと思うのだがそれでも預けたいのか。もし方法があるとすれば保育士の環境や待遇を改善する、そのために給料を倍額でも増加させる、人員を大量に増やす、でもそんなお金どうやって…あるよ。保育園に子供を預けたいという親たちがもっとそのための費用を負担してやらないといけないと思うね。だって、子供を預けて共稼ぎで働きに行くのなら高収入になるでしょ。そういう人たちが寄付金でも集めて公共機関に持ち込んでいけばいい。人手が足りないといったって失業者はいくらでもいる。未経験者には研修も必要となるから費用もかかるかもしれないが、もっとほうぼうからこの業界に金を出してやらないとまた不幸な事件は起こる。ちなみに当方も失業者だからやってほしいというならやりに行くよ。一応中学と高校の教員免許はあるよ。大学でも福祉に関する科目は履修しているし。
保育士です。
しつけは保育士の役割ではないと思います。しつけは親がするべきことです。
保育士は、集団生活の中で生きていく術、社会性の基礎を培う場所だと思って保育してます。
私は普通の保育士ですから、しつけなんて大それたことは、できません。
保育士の虐待行為は、園の日々の運営の現象面が出ただけです。この園の運営方法の現象を防ぐ方法を皆さんが探し求めているのです。
真の原因は、何かを考えなければ解決にはならない。
解決プロセスは、各保育園が子どもたちが生きて行くゆえで何が最も大切と考えて、それをどの様に育て成長させて行くかのあるべき姿を全職員と保護者に園が提示して理解を得る事が出来ていない経営者及び園長幹部の責任者と受け止める事が解決の第一歩です。
そうしないと、少しも改善されない今迄の組織に戻り象徴的な現在の保育園(=虐待する保育園)になります。
躾と称して虐待が起こるケースが多いですが、躾そのものはいいことだと思います。躾と虐待の定義を明確にしないとめちゃくちゃになります。野放しでは子どもは育たないし、保育士も大変になると思います。また躾なのに虐待と言われる可能性もあると思います。そして躾はまず親がやることだという基本的なことも社会全体で再確認したほうがいいと思います。保育士の人数を増やしても躾ができていない子が多ければ何人いても足りません。経営が成り立ちません。ある程度は家庭で基盤を作って子ども一人ひとりの個性や違いはあっても保育園で集団生活に馴染めるぐらいになっているのがいいと思います。保育を監視して虐待が減ったとしても子どもの育ちにはプラスにはなりません。大人がそれぞれの立場で自分のできることを頑張り、また人を非難するのではなく優しく援助する前向きな社会の中で育つのが子どもにプラスになると思います。