見る距離が近視予防のカギ〈窪田良のメディカル・トーク〉

(2025年9月30日付 東京新聞朝刊)
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イラスト・川端乙大

紙の本もスマホも負担は同じ

 「子どもに動画やゲームを見せる『スマホ育児』は目を悪くする」という言葉を耳にしますが、実際には紙の本でもスマホでも、近くを長時間見続ける点で負担は同じと考えられています。

 関係があるとする研究もある一方、多くは電子デバイスが特に目に悪いという結論には至っていません。つまり現時点で「スマホが確実に子どもの目を悪くする」という決定的な証拠はないのです。どのくらいの距離で、どのくらいの時間見続けているかが、より問題だと考えられています。

日々の積み重ねが視力を守る

 今年5月、米国で開かれた学会では香港から、部屋の広さと近視の関係について報告があり、断定はできませんが、部屋が広いほど近視になりにくい傾向が示されました。物を見る距離を確保できる環境が、近視予防に大事ということになります。また別の研究では明暗の差が大きいハイコントラストの物を近くで見るのが、より目に悪いという報告も出ています。白い紙に黒い字は最もハイコントラストで、自然界にはあまり存在しないからではないかと考えられています。

 私自身、近視治療用「クボタグラス」の開発者としても距離の重要性を痛感しています。読書もスマホも適切な距離を保ち、時々遠くを見て目を休める。そして屋外で遠くを見る時間を増やす。この積み重ねが、子供の視力を守る力になると確信しています。

窪田良(くぼた・りょう)

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 1966年生まれ、兵庫県出身。眼科医、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO。慶応大医学部を卒業。虎の門病院勤務を経て、米シアトルのワシントン大助教授や慶応大医学部客員教授として活躍。現在は眼科現在は眼科領域で創薬と医療技術の研究開発に取り組む。著書に「近視は病気です」(東洋経済新報社)。本コラムでは、子どもの目が置かれた状況や近視予防対策などの話題を幅広く伝えます。

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